第一章 お店を手に入れた!

Prologue プロローグ

「…………」

 目の前の光景に、私は言葉を失っていた。

 ちた木製のさく

 草がしげっている庭。

 今にもくずれてきそうなかべくもったガラス窓。

 国有数のエリートであることを示す『錬金術アルケミー』の看板は、今にも屋根から落ちそうにかたむいている。

「ここが、私の新天地……?」

 いくもの困難な試験をくぐりけ、ついにつかんだれんきんじゆつの国家資格。

 しようすすめられるままてんを手に入れ、期待に胸をふくらませて、王都から遠路はるばるやって来た。

 その行程、およそ一ヶ月。

 にもかかわらず──。

「……これは、あんまりだよ~」

 いや、さすがに少しおかしいとは思ったのだ。

 いくら辺境の田舎いなか町とはいえ、この家のお値段はわずか一万レア。

 王都で部屋を借りれば、小さなワンルームでも二ヶ月分の家賃になるか、ならないか。

 そんなお値段。

 国から補助金も出ているので、実際の価格はもうちょっと高いはずだけど、それをまえたとしてもなお安い。

〝自分だけのお店〟。

 そんなてきなフレーズに、られてしまった部分が無いとは言えない。

 言えないけど、それでも本当はこんな所に来る予定はなかったんだよ?

 都会のお店でやとってもらい、そこでしばらくの間しゆぎようして、お金をめる。

 それを元手に、適当な地方都市で、小さくてもふんいお店を開くはずだったのだ。

 お金持ちになってぜいたくをしたいとは思わない。

 ただそれなりにかせげて、これまでお世話になった人たちに恩返しができればそれで十分だった。

 それなのになぜ私が、こんな辺境の町──いや、辺境の小さな村で、わずかな荷物のみを手に、たたずむことになったのか。


 それは今からひとつきほど前にさかのぼる……。

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