プロローグ
それは、作り話みたいな恋だった。
誰かに話したところで、誰にも信じてはもらえない。
自分自身の記憶すら疑い、白塗りに覆い潰された感情により大切な人すら傷つけて、遠ざけてしまうことを選んだのは、生きていてほしいと願ったから。
偏屈な後輩が
だから、自分の感情と恋心を放棄して、意図的に
二人の距離が他人より遠くなっても、どこかにお前がいてくれるだけで、よかったから。
それだけで、よかったから。
これから始まる一ヵ月間の不自然な恋は確かに存在していて、作り話として馬鹿にされても仕方のない〝不鮮明で曖昧な放課後〟が、あった。
四年後の二月二十九日。
お前のいない世界に取り残された二十二歳の俺は──
未完成で時間が止まった星空の絵と、使い古されたヘッドホンと、四年前のスケッチブックが
この気持ちも、三月一日になれば不鮮明になってしまうのかもしれないけど。
借りパクとは言われたくないから、お前に借りたCDくらいは返させてくれ。