二章 ブラディ街道での再会②
「どうしたの!? ジョナス」
「アン! 彼は、君が
ジョナスは興奮しているらしく、アンの両手を、両手で包むようにして
「わたしはレジントンに寄り道してたから……。って、そうじゃなくて。なんでジョナスが、こんなところにいるの?」
「君を追ってきた。君一人旅をさせるのは、危険だ。だから両親を説得して、馬車を準備して、追ってきた。僕は君と
「なんで!?」
「なんでって。理由は一つしかないよ。僕の気持ち、知ってるだろう」
その言葉に、ぽかんとした。
「え?」
「僕は、君が好きだ。君と一緒に行きたい」
「えっと……ジョナス。……すごく
アンは握られていた両手を、そっと引き
「けど、多分ジョナスは、自分の気持ちについて、とんでもない
アンはごく
自分で言うのもなんだが、女の子としての
実際半年間ジョナスとアンは身近にいたのだが、友達よりもよそよそしい関係のままだった。
そんな
理由は、母親を
ジョナスはアンに同情するあまり、同情と
「同情じゃない。僕はアンが好きだよ。ねぇ、アンはルイストンの砂糖
「待ってよ。たった今
「盗賊は、まあ。ちょっと油断したけれどね。僕も男だから
「大丈夫の
「大丈夫。大丈夫。剣も持ってるし」
「ねぇ、人の話、聞いてる?」
「それに父さんも母さんも、僕がアンと一緒に、ルイストンへ行くこと
「アンダーさんたちが納得? そんなはずないわ。とにかく、引き返して」
「もう引き返せない。引き返すのも進むのと同じくらい、危ないはずだよ」
熱心なジョナスの様子が、熱に
これは本格的に、同情を恋情と勘違いしているに
勘違いの
「だめよ。絶対、引き返すの」
「アン。冷たいこと言わないでよ、ね」
ジョナスは笑うと、再びアンの手を握った。
驚いて手を引こうとしたが、その手をしっかりととらえられる。
「僕は君のために来た。君は、僕が
見つめられると、
「嫌いなわけじゃないのよ。けど、けどね。なんというかぁ、そんな問題じゃなくて……」
シャルは二人のやりとりに口を出す気はなさそうで、ずっと馬車の荷台に寄りかかり空を見あげていた。しかしふいに
「かかし。早くこの場所を離れろ。血の
アンとジョナスは、空を見あげた。黒い鳥の
「
アンは
「わかったわ。すぐに出発する。ジョナスは、お願い。ここから引き返して」
「いや。僕は行く」
「ねぇ、ジョナス。あなたが死んだらご両親が泣くし、村の女の子たちだっていっぱい泣くわ。あなたがいなくなったら、店は
心を
「君がだめだと言っても、僕は行くよ。両親は、関係ない。店も、今の僕には関係ない。僕は今、君への気持ちだけが大切だ」
ジョナスには温かい家がある。両親がいて、将来は跡を継ぐべき店もある。両手に大切なものをたくさん
それなのに。自分の持っているものの大切さを、理解しようとしない。
そのジョナスの
「とにかく、ジョナスは危険な
アンは背を向けると、さっと御者台に乗った。
シャルはすでに御者台に座っていた。困り顔で馬に
「追ってくる男がいるのか。子供にしては、やるな」
「子供じゃない! わたしは十五歳。成人よ! それにジョナスは、そんな相手じゃないの。ただわたしに、同情してるだけ。そんな同情心で、危険を冒そうとするなんて」
と言いながらも、アンは背後を気にしていた。
ジョナスは自分の馬車に乗ると、ゆっくりと歩を進めて、アンたちの後ろをついてくる。村に帰るつもりはないらしい。
そもそもここまで
「どうすればいいのよ、わたしは……」
アンは
「後ろの馬車。とりあえずなにかあったら、助けに行ってくれる?」
ジョナスは、嫌いでない。逆にあの優しい笑顔や態度は好ましい。それに恋情と勘違いしてしまうほど他人に同情する彼を、いい人だと思う。
見放せるわけはなかった。
「俺になにかをさせたいなら、羽をたてにして命じろ」
「さっきも、命令しろ命令しろって、うるさく言ってたわよね。なんでよ」
「命じられたこと以外、やるつもりはない」
要するに彼は、「この命令に従わなければ、おまえの命を取る」と、
「ちょっと馬を見ていて」とか、「そこの毛布を取って」なんていう軽々しい命令には、断固として従わないつもりだ。
アンとて、毛布を取ってもらうためだけに、「殺すぞっ!」と脅すのは
「わたしは昨日の夜に、シャルを使役しようって
その言葉を聞いて、シャルはまじまじとアンを見つめる。
「本当に、
「シャル、あなた、さっきからどさくさにまぎれて、かかしって言ってるよね。……もういいけどさ。……かかしで」
ジョナスの身になにかあれば、どうすればいいのか。それを考えると頭が痛くなりそうだったので、シャルのかかし発言に