序章 とある騎士の最期
それは、遠い遠い昔の物語──
広漠とした平原に転がる幾万もの死体。墓標のように突き立つ無数の剣と
そんな、いつか、どこかの戦場の真ん中に。
互いに寄りかかるように重なり合う、騎士と王の姿があった。
「それでいい、アルスル……我が主君」
「……し、シド
騎士の胸部を、王が握る剣が深く貫いている。
だが、騎士は満足そうに、自分の命を奪った王を見つめ──王は泣きながら、自分が命を奪ってしまった騎士を見つめている。
「ふっ……俺のことは……気にするな」
騎士は、端から血が伝う口で、に、と屈託なく笑った。
「俺はお前の騎士。お前は俺の王だ。ならば、これは当然のことだ。当然の結末だ」
そして、その騎士は、落日に赤く焼け
「後悔はない。散々やらかしてきた俺の死に様としては……上出来さ」
すると、騎士の
その身体を必死に抱き留め、王は泣き叫んだ。
「シド! シド卿! ああ、なんという……なんということだ……ッ!」
騎士の身体から刻一刻と
まるでそれを
「僕を置いて
そんな迷子のように
「大丈夫だ。俺の剣と魂はいつだって、お前と共にある。なぜなら……俺は……お前の騎士だからな」
「……ッ!」
「たとえ、死が、俺達の主従と友情を引き裂こうとも……俺は、未来
騎士の言葉は、最後まで
だらり……王の頭を撫でる騎士の手が、力を失って下がる。
「……シド卿……?」
気付けば、王の腕の中で、騎士はすでに事切れていた。
安らかな、そして、満足げな死に顔を残して──
「……ああ、シド卿……シド……、シド…………ッ!」
その時、王の脳裏を
どうしてこうなってしまったのか。他に道はなかったのか。
「ぅ、ぁ、ぁああああああああああああああああああああああああ──ッ!」
王の
今から時代を遡ること、約一千年前。
そんな古き良き時代に、シドという名の騎士がいたという。
正しき聖王アルスル
だが、その本性は残虐非道にして冷酷無比。騎士道の
人呼んで──《野蛮人》シド卿。
だが、そんな傲慢極まりない、邪悪な騎士の最期は──
──そして、時は流れる。時代は巡る。
古き良き伝説時代は、終わりを告げて。
時の流れのままに英雄達は消えていき、その華々しい冒険
やがて、彼らは物語の中だけの存在と化していって。
そして──