否定されたときにどう乗り越えていくのか──「マジック・メイカー」主演声優・潘めぐみインタビュー【TVアニメ放送決定記念企画第３弾】

2024年10月8日公開

魔法のない世界で魔法開発に情熱を燃やす少年を描いたファンタジー小説「マジック・メイカー　－異世界魔法の作り方－」。2025年にアニメ化が決定した本作の魅力を深掘りする特集の第３弾となる今回は、主人公・シオン役を演じる声優・潘めぐみにインタビューを敢行！

転生前からの想いを成就させるべく、純真無垢に魔法開発を進めるシオンを潘めぐみはどう演じたのか？　すでに収録を終えたという「マジック・メイカー」に対する想いと役作りの仕方、そしてライトノベルの読書体験をうかがった。
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──潘さんのライトノベル原体験はいつ頃でしたか？

たぶん、まわりの同年代の子たちよりも早熟だと思うんですけど、私が４歳〜小学生くらいのとき、ライトノベル原作のTVアニメがゴールデンタイムに放送されていたこともあって、自然とライトノベルにふれていたんですよね。当時はまだ漢字が難しくて分からなかったところも多かったんですけど（笑）。いろんな作品を読みましたが、なかでも「スレイヤーズ」や「セイバーマリオネット」シリーズ、「アキハバラ電脳組」などが大好きでした。

──多数のライトノベル原作アニメに出演されていますが、印象深かった作品はなんですか？

一つに選びきれるものではないですが、それでもあえて言うなら、やはり仕事に関わる前から大好きだった『とある魔術の禁書目録』に出演できたのはとても嬉しかったですね。出演することになって読んだなかだと、主演を務めさせていただいた「ゲーマーズ！」が印象深いです。すれ違いにすれ違いを重ねていく展開が純粋に面白かったですし、ラブコメの主人公を女性声優が演じるという、なかなか得られない経験をさせていただいた貴重な作品です。

──オーディションや収録などの前に役作りとしてライトノベルを読まれることも多いかと思いますが、そもそも潘さんはどういった読み方をされているのですか？

演じるキャラクターに感情移入をして読むことが多いですね。でも、ずっとそのキャラクターの視点だけではなくて、徐々に周囲のキャラクターにも目を向けていくようになって。そうすると、そのキャラクターの全貌が掴めてくると言いますか……。なので、いつも決まってこれ！　といった読み方はしていませんね。作品ごとに違います。今回の「マジック・メイカー」もシオンが中心ではあるのですが、時折マリーやお父さんに感情移入するときもありました。

──なるほど、そうやって読まれていたんですね。そのうえで、「マジック・メイカー」の原作小説を読まれた際の印象はいかがでしたか？

魔法が使えたらなぁ、って誰しも一度は憧れることじゃないですか。現世では使えないことは知っているけれど、転生して異世界に行ったのであれば魔法が使えると期待してしまうのは当然で。でも、その世界には魔法が存在していなかった……となったとき、自分が創始者になろうと考えたシオンは勇気のある子だと感じました。異世界に限らず、現世でも何かの創始者になるべく行動を始めることってかなり根気がいるはずですからね。

──前世から魔法という存在に憧れを抱いてたとはいえ、その開発に情熱を注ごうとするのは並大抵の根気だけではできませんからね。そんなシオンというキャラクターについては、どのようにとらえられましたか？

シオンは前世の記憶があるからこそ物分かりが良すぎるけれど、魔法開発にひた走る無邪気さもあるので、少し子どもっぽい一面もある少年です。一度は親から魔法の研究なんてやめるんだと言われますけど、それでも諦めない頑固さがあるところも魅力的だなと思いました。親に止められたらそのまま断念してしまってもおかしくないところを、前世からの情熱そのままに諦めずに邁進していく……。その純真無垢さがたまらないキャラクターです。

──先ほどマリーにも感情移入をするシーンがあったとうかがいました。彼女はどのようなキャラクターだと感じましたか？

これは収録現場での加隈（亜衣）さんの印象も相まって、天真爛漫で可愛らしいお姉ちゃんという印象が強いです。マリーはシオンよりも年齢は上ですけど、精神年齢で考えると幼いんですよ。幼なじみのローズも同様に、あの世界で生きているからこそどこか達観していると言いますか……。でも、シオンに対する想いがセリフの一つ一つから溢れ出ていて、とてもキュートで。シオンにとって、大好きなお姉さんですね。

──ローズについてはいかがでしたか？

マリーよりもお姉さんのような雰囲気が漂う物静かな女の子です。ローズとシオンの会話は、どこか大人二人で話しているかのような、家族間とはまた異なる温度感で話すんですよ。だから、シオンとしてはより落ち着いて話ができる相手だなと（笑）。そういえば、まだローズを演じる声優さんは明かせませんけど、収録現場では彼女のイメージカラーの服を着るのが流行っていたんです。確か、古賀（一臣）監督が最初に彼女のライブのジャージを羽織っていたのかな？　そこから私や加隈さん、レギュラー陣の皆さんも同じ色の服を着るようになっていって、ゲストの方を困惑させた思い出があります（笑）。

──そんなことがあったんですね（笑）。そういえば、以前古賀監督から、「マジック・メイカー」は潘さんが座長を務めているからこそ、とても安定感のある現場だったと伺いました。

いやいや、私だけの力じゃないですよ！　キャストの皆さん本当に素敵な方々ばかりでしたし、私たちの力を信じて音響監督さんがディレクションしてくださっていたからこそだったと思います。その結果として、子供から大人まで幅広い層に観ていただける作品になったように感じています。

──貴重なお話を伺った「マジック・メイカー」の放送・配信がいよいよ来年開始しますが、潘さんが最も推したい注目ポイントをお教えください！

主人公であるシオンが、とても純粋で絶対に諦めない心を持ち、人に対しても、魔法の研究に対しても真摯なところです。そんなシオンのひた向きさに周りの人も突き動かされていく様子がとても心地よく感じます！　生み出していくものが魔法なので、どこか私たちの世界からしたら、フィクションの物語なのかもしれませんが、周りの人から、自分の好きなものやモットーとしている信条を否定されたときにどう感じて、認めてもらって、乗り越えていくのかという出来事は現実でも起こり得るはず。決してチートや無双だけじゃない、異世界の、等身大の少年の可能性を見守っていただければ嬉しいです。また、この作品に登場する人々は皆心が温かくて、素敵なドラマを紡いでいきます。そんな物語を美麗な映像で盛り上げてくださるので、一度観たら絶対に続きが気になるはずです。

──最後に……もし魔法が使えるとしたらどんな魔法を使いたいですか？

「治癒」ですね（笑）。今年は特に天候のせいか、体調の管理に苛まれることが多くて……。喉を治すとか関節痛を治すとか。治癒魔法なら自分以外の誰かの為にも使えますし。そんな、みんながいい方向に向いていける、幸せになれるような魔法を使ってみたいです。

取材・文：太田祥暉

潘めぐみプロフィール

東京都出身。アトミックモンキー所属。2011年、「HUNTER×HUNTER」の主人公、ゴン＝フリークス役にて声優デビュー。主な出演作に「リトルウィッチアカデミア」（アッコ役）、「ハピネスチャージプリキュア！」（白雪ひめ／キュアプリンセス役）、「ゲーマーズ！」（雨野景太役）、「【推しの子】」（有馬かな役）、「しかのこのこのここしたんたん」（鹿乃子のこ役）など。

アニメ情報（2025年TV放送開始予定）

イントロダクション

リスティア国の片田舎の領地を治める下級貴族、オーンスタイン家。そこには、二人の姉弟がいた。
姉のマリーは、父から剣術の稽古を受けるのが大好きな活発な女の子。
弟のシオンは、部屋に籠もって本を読むのが大好きな内気な男の子。
性格は正反対の二人だが、優しい両親に見守られながら、仲睦まじく暮らしていた。

そんなある日、シオンは『まほう』というものがこの世界に存在するか、父に尋ねる。
しかし、貴族としてそれなりの教養がある父でも、『まほう』という言葉自体を知らなかった。
ましてや、シオンが言う「火とか水とか風とか光とか、何もないところからいろんなものを出したりする」現象など、この世には存在するはずもなく……。

その日から、シオンは目に見えて落ち込んでしまう。
シオンを励ましたいと、幼馴染みで農家の娘のローズに話すマリー。
すると、湖で不思議な現象を目の当たりにして――

この異世界、魔法がない!?
そんな世界に転生した主人公の少年シオンが紡いでいく、
ロマン求める魔法開発ファンタジースタート。