不安定な三角関係、甘みと塩味のバランスが最高！「好きな子のいもうと」【今読みたい!! 最新百合ラノベクロスレビュー②】

『好きな子のいもうと』（著者：犬甘あんず／イラスト：塩こうじ）

今、百合ラノベが熱い...!! 「百合ラノベ座談会」に参加していただいた、VTuberの湯町りこさん、ラノベブロガーの夏鎖さん、新人編集のことぶきさんに、今読みたい!! 大注目の最新百合ラノベ作品をレビューでご紹介してもらいました。思いの詰まったおすすめポイントを読んで、これは...！と思ったら試し読みしてみてくださいね。

湯町りこのレビュー

　物語は、素直で無垢な主人公結叶が、友だちの渚にフラれたところから始まります。世界が終わったと思っちゃうくらい苦しくて、友達じゃなくなることだって怖い。そんなフラれても忘れられない恋心を抱えた結叶を癒すのは、渚と瓜二つな渚のいもうと海望。叶わなかったデートやキスを、渚を演じる海望と繰り返していく中で、結叶は海望にも惹かれている自分に気付きます。

　歪な感情を抱えたまま、甘く展開していく百合小説が好きです。
　
甘いものとしょっぱいものを交互に食べると永遠に食べ続けられてしまうみたいに『好きな子のいもうと』は甘みと塩味のバランスが最高。

　海望とのふれあいで、満たされなかった欲を満たしていく描写は強烈に甘いけれど、海望に縋るしかない結叶の切実さが表れていて、同時に痛々しくも感じます。何気ない会話や初々しいデートの描写でもそうで、穏やかな甘さが広がる中には常に「あねの代わり」という背徳感が潜んでいます。その相乗効果で、ページを進める手を止められず読み耽ってしまいました。

　ふれあいを続けていったその先でも、海望の闇が垣間見れたり、渚からもほの暗いものを感じたりと素晴らしい甘さと塩味を堪能できるのですが、……その美味しさはもう、ご自身の目で確かめてみてください。

　痛みとともに甘くなる三角関係百合『好きな子のいもうと』。
　犬甘あんずが先生が書く一筋縄じゃいかない百合ノベルは、きっと新しい扉を開かせてくれますよ。

夏鎖のレビュー

　失恋から始まる不安定な三角関係。忘れられない姉への想いを妹に代わりにぶつける。どこか背徳感を感じる三人の関係性が魅力の百合作品です。雨宮結叶はかねてより大好きだった初恋の人・花房凪に告白するもフラれてしまいます。そんな傷心気味の結叶に渚の妹である海望が急接近。「お姉ちゃんへの想いを忘れさせてあげる」とスキンシップをしたり渚の格好をしてデートをしたりイチャイチャしたり……そんな中でも渚の代わりではなく海望として向き合っていく結叶の姿は印象的で、海望と仲良くなっていく結叶を穏やかな気持ちで見ていられない渚のジェラシーに悶えさせられました。それぞれの思いが真っ直ぐに交錯しないのが切ないオススメの百合作品です。

ことぶきのレビュー

　好きな人に振られたから、そっくりな妹に好きな人を重ねて恋愛しようという、なんという業の深さ。だがそこがいい！　そして妹も目的のためならば他を顧みない強かさで主人公にアプローチ。と思いきや振ったはずの姉もなんだか含みのある表情を見せてくる。
　そして、まさかの三角関係百合！？！？！？　
　一巻の今回は妹がメインのお話。歳下攻めの歳上受けが展開！
　私はこの組み合わせが超大好きなので刺さりました。お姉さんとしてしっかりしなきゃ！　と思いながら歳下にリードされて悶々としちゃうのは可愛すぎますよね。本作はそれをたくさん供給してくれるので感謝が止まりません。
　個人的に印象深かったのは香りの描写。キスで身を寄せ合う中、漂ってくる香りは普段とは異なっていて……あなたは一体どっち？

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