【百合好きによる、百合ラノベ座談会！】百合ラノベの歴史から、最新おすすめ作品まで深堀りします!!

この頃、女の子同士の関係性を描いた「百合」をテーマにしたライトノベルが急増中！　そこで「キミラノ」では、百合作品が大好きなライターや編集者、ブロガー、VTuberによる座談会を実施。そもそも、百合ライトノベルはどんな流れを辿ってきたのか、そして最新地点は？　四人で百合ライトノベルを深掘りしていく！

座談会メンバープロフィール

太田祥暉（おおた・さき）
アニメやライトノベルをメインに取材・執筆するライター。百合に目覚めたきっかけは、『ゆるゆり』と『ちょっとかわいいアイアンメイデン』。大好きな百合作品は『やがて君になる』。アニメ『ささやくように恋を唄う』ではオフィシャルライターを務めている。

夏鎖（なつさ）
ライトノベル感想ブログ「本達は荒野に眠る」の管理人。百合に目覚めたきっかけは、『新米姉妹のふたりごはん』と『吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん』。
【第６回 ラノベフレンズ】の質問にも答えていただきました。こちらもチェック！

湯町りこ（ゆまち・りこ）
百合好きバーチャル書店員として、空想図書店リリィブックスで勤務中のVTuber。百合に目覚めたきっかけは、小学生時代に読んだ『魔法先生ネギま！』。大好きな百合作品は『マリア様がみてる』。

ことぶき
角川スニーカー文庫の新人編集者。百合に目覚めたきっかけは、『女同士とかあり得ないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』と『放課後』。

好きな『百合』どんなの傾向か教えて！

太田　さて、今回は百合作品が大好きな方々に集まっていただき、百合ライトノベルについて語っていければと思っております。と、ひとえに百合といっても、色々なタイプがあるわけで……。最近のヒット作だけ見ても、ドロドロとした『ささやくように恋を唄う』のような作品からライトな『しかのこのこのここしたんたん』まで幅広く展開されています。まずは皆さんがお好きな百合はどういった系統なのかをお教えいただけますか？

湯町　百合って、関係性がとても描かれている作品群だと思うんですよ！　私は、キャラクターたちの関係性が密に描かれた作品が大好きで。『みんな蛍を殺したかった』みたいな、百合と打ち出されていない作品にも女の子同士の関係性を見出しては、いいなぁ……と思いながら読んでいます。

ことぶき　百合が好きな理由は単純なんですけど、女の子同士がいちゃいちゃしている様子を読むと、もう幸せになれるじゃないですか！　例えば『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ！（※ムリじゃなかった!?）』を読むときは、王塚さんとれな子と紫陽花さんの様子に「ありがとう……」となっています。

夏鎖　僕はことぶきさんとは対照的なんですけど、ギスギスしている関係性の方が大好きです（笑）。例えば、入間人間さんの『私の初恋相手がキスしてた』。女子高生がダメな大人に絆されてどんどん沼っていく様子が大好物でした。

太田　なるほど。僕個人としては、ハッピーでピースフルな百合も大好きですが、ドロドロした百合も大好きで。例えば最近だと『リコリス・リコイル』の千束とたきなの様子も大好きですけど、『私の百合はお仕事です！』の鬱屈とした関係性のお話も最高だなと感じています（笑）。

『マリみて』から百合ライトノベルの歴史について語ろう！

太田　そんな四人でここからは、百合ライトノベルってどんな流れを辿ってきたの？　というテーマで語っていければと思うのですが……。源流を辿れば『花物語』のような少女小説に辿り着きますが、今の百合ライトノベルの流れを語る上での始祖は『マリア様がみてる』ではなかろうかと。

湯町　私が大好きな作品ですね。『マリみて』はスール百合の元祖なんですよ。今刊行されている百合作品にはスール制（※『マリア様がみてる』における上級生が下級生のお世話をするシステム）をテーマにした作品が少なからずありますけど、その土台となったのは『マリみて』だと思うんですよね。とにかく主人公二人の関係性がぎゅぎゅっと詰まっている作品だな、という印象です。

夏鎖　『マリみて』はライトノベルとしても流行りましたけど、まだ百合が一ジャンルとして認められた感はなかったですよね。実際、ゼロ年代のライトノベルでパッと出てくるほどヒットした百合作品はないと言いますか。

太田　刊行されていなくはないんですけど、そこまで……という感じですよね。ライトノベル外に目をやると、『青い花』や『シムーン』があり、「コミック百合姫」も創刊されてはいるんですが、まだメガヒットには至っていない。

夏鎖　2010年代に入ると、電撃文庫から『アイドライジング！』が登場します。めちゃくちゃ百合かと言われると違うんですけど、アイドルの女の子たちが戦う様子から百合の波動を感じましたね。

ことぶき　その後、ようやく『安達としまむら』が刊行されて。個人的には何といっても第6巻のしまむらへの想いが爆発してしまった安達が見開き2ページもの間、ずっと語り続けるシーンが大好きで……。

湯町　あれはよかったですよね……！　第1巻くらいは安達のことをクールキャラだと思っていたんですけど、巻数をますごとにどんどん重さが露わになっていって……。

太田　それまでシニカルな青春物語を描いてきた入間人間先生だからこそ描けた百合作品という印象がありましたよね。その後、異世界転生ものに百合の要素を足した『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』も刊行されていきます。

夏鎖　あの時期のGA文庫、GAノベルは百合作品が何作か刊行されていた印象がありますね。個人的には『魔王の娘だと疑われてタイヘンです！』が大好きでした。そこから、2018年ごろになると、『citrus』や『やがて君になる』などの漫画作品のヒットによって、百合というジャンルが脚光を浴びましたよね。それこそ『やがて君になる』は『安達としまむら』の入間先生によってスピンオフノベライズが刊行されていますし。

太田　『佐伯沙弥香について』、本当に大好きです。原作では負けヒロインと化していた感情の重い女が、まさかこういった派生を遂げるとは……。

ことぶき　その後、2020年になって、遂にみかみてれん先生が商業でも百合ライトノベルを書き始めるわけですよね。『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』と『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ！（※ムリじゃなかった!?）』。個人的にはこの二作品が百合ライトノベルのターニングポイントだったと思います。この二作品がなければ、私は角川スニーカー文庫に入っていないですし。あと、同時期には『転生王女と天才令嬢の魔法革命』も刊行が始まっています。

湯町　私はあまりライトノベルに触れてこなかったので、『転天』にはとても驚かされたんですよ！　異世界もの特有の魔法の原理や職業の仕組みがとても新鮮だったんですけど、百合の関係性があることでとてもすんなり読めて……。ある意味、異世界もの初心者にもオススメな気がします。

最新百合ラノベ事情　～2024年9月は百合ラノベ大豊作！～

太田　さて、ここからはこの9月に新刊が刊行された百合ライトノベル5作品について語っていければなと思います。まず、ここまで何回もお名前が挙がった入間人間さんの最新作『人妻教師が教え子の女子高生にドはまりする話』から……。

湯町　先生がもう戻れない領域まで深みにハマっていく様子が素晴らしかったですよね。

夏鎖　もう大好物です。主人公が教え子から先生と呼ばれるたびに理性を失っていく過程が大好きで、はちゃめちゃに大好きです。ドロドロした人間関係が大好きな人にはぜひ、オススメしたいですね。

ことぶき　私は先ほど甘々系が好きと言いましたけど、とても刺さりました……！　年下攻めの年上受けが好きなこともあって、先生を振り回す教え子の様子がとてもチャーミングでした。

太田　教え子×教師ものだと、『放課後の教室に、恋はつもる。』は？

夏鎖　同じ生徒と教師という関係性ではありますが、先生がしっかりとした大人なので純粋な百合を感じることができました！　二人のどこか未熟な恋愛観も好きなポイントですね。

ことぶき　入間さんの作品が背徳感推しならば、日日綴郎さんの作品の方はラブロマンスですよね。プロローグが成人同士と書かれているということは……？　という行間含め、妄想が捗りました。歳の差百合が好きな人はぜひ一気に読んでほしい……。

湯町　こちらは先生の健全さを感じましたよね（苦笑）。理性が働いている先生が描かれるので、とても安心して読むことができました。いや、子どもにこんなことしてはいけません！　ってなりますけど。

太田　健全というワードが出たところで、不純な関係の青春百合のお話もしたく。『週に一度クラスメイトを買う話』が個人的にはここ最近の百合ライトノベルでは一番刺さっているんですよね。

夏鎖　買う、買われるの関係の中で不器用ながらお互いのことを知っていく様子がいいですよね。徐々に野良猫のじゃれ合いみたいな過激なこともし始めますけど……。

ことぶき　言葉にしづらいですけど、距離の詰め方が絶妙ですよね。

湯町　タイトルは過激ですけど、読み始めるとどこかゆったりした空気が感じられて……。

太田　でも、徐々に過激になっていき、第5巻から始まる大学生編ではもう苦悩の連続！　という感じになるところも、個人的には大好物です（苦笑）。

夏鎖　女子高生同士だからライトな百合なんだろうと思って読み始めると、一発殴られる感じじゃないですか（笑）。

太田　そして何より、角川スニーカー文庫から犬甘あんずさんの百合が同時刊行されていることも触れずにはいられないわけですが、皆さんは『性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話』はいかがでしたか？

湯町　幼馴染というと分かりあっている関係性が描かれることが多かったように感じているんですが、まさかこんなに嫌いあっている――いや、内心はそうではないですけど――関係性ってとても新しいなと思いました。

夏鎖　何より主人公とヒロインのビジュアルが対照的なのがいいですよね。わかばは小牧のことを嫌いと言いつつ、やっぱり心の中では嫌いになれていないという複雑な距離感も大好きです。

ことぶき　壮大な誘い受けですよね。もうその様子がとてつもなく可愛いです。勝つ気満々だけど負けて、どんどん奪われていく様子が最高です。犬甘さんの作品は最新作の『好きな子のいもうと』も大好きで。こちらはドロドロなストーリーが展開されるんですけど……。

夏鎖　お姉ちゃんのことが大好きだったけど、妹で代用しちゃうその背徳さが、もう！　その始まりでありながら、中盤で関係性を引き直すところが良かったですね。

湯町　犬甘さんの作品を一気に読んだんですけど、どちらもキャラクター設定の巧みさを感じたんですよね。穏やかなデートからのギスギス、みたいな構成がとても面白くて、気付いたらどんどん引き込まれていきました。特に『好きな子のいもうと』は三角関係の構図がとても読み応えがありましたね。

他にもいまのおすすめ百合作品教えて！

太田　直近で刊行された作品について伺いましたが、最後に皆さんがオススメする百合作品をお伺いできればと思います。

夏鎖　『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか？』や『さいはての終末ガールズパッカー』、『ステラ・ステップ』といったSF百合は、『少女終末旅行』や『シメジシミュレーション』が好きな方にぜひオススメしたいですね。早川書房さんの頑張りもあって、最近はSFと百合の距離が近いですけど、そういった作品がライトノベルにも多くあることが知れ渡ってほしいです！　あと、『百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話』。こちらも今ちょうど最新巻がめちゃくちゃ盛り上がっているところなので、一気に読んでいただきたいですね！

湯町　『私の百合はお仕事です！』が好きな方はスール百合の原点として『マリア様がみてる』をぜひ。私としては一気に全巻手にとっていただきたいですけど、一気に第10巻まで読むと真髄が感じられる気がします。それと、これはマンガですが『オタクに優しいギャルに私はなる！』が今一番刺さっている百合です。ニコイチだった女の子の片方が友達を作ろうと頑張っているんだけど、それに嫉妬しちゃう女の子の巨大感情が凄まじいんですよ。いわばギャル版・クール版の『安達としまむら』なので、ライトノベル好きの方にも読んでいただきたいです！

ことぶき　個人的には『人妻教師が教え子の女子高生にドはまりする話』が良過ぎました。もう全人類これを読んでください！　落ちていったらダメだけど、どんどん落ちていくその様が最高でした。リアルでやったらダメだからこそ、小説という形でぜひ読んでいただきたいですね。

太田　『Link! Like! ラブライブ！』で蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブに触れている方は、ぜひそのシナリオライターであるみかみてれんさんの作品も読んでいただきたいですね。女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』と『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ！（※ムリじゃなかった!?）』はもちろん、『私のシスター・ラビリンス』や『百合に挟まれてる女って、罪ですか？』も傑作です。

そして、この座談会が掲載されるのはライトノベルについての情報が集まる「キミラノ」さんなので、ぜひ異世界ものにどっぷりハマっている方には『お姉さまと巨人 〜お嬢さまが異世界転生〜』を推したい！　異世界もののテンプレートを皮肉りつつ、スール百合を繰り広げる展開がとても絶妙です。ぜひ、ここまで挙がったライトノベルとともに、読んでいただけると嬉しいですね。

取材・文：太田祥暉
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【百合好きによる、百合ラノベ座談会！】いかがでしたか？　気になる作品ありましたでしょうか。最新おすすめ百合ライトノベルを、ゲスト３名によるクロスレビューであつ～く詳しくご紹介しています。特集TOPからご覧ください。ここまで読んでいただきありがとうございました！