第一章◆社畜転生
暖かい……ここは天国か……?
重い
そして、顔が異常に近い。近すぎる。この
しかしこれ
◆
◆外部からの『気力』の流入を確認しました。
◆『気力』の流れの解析に成功しました。
◆スキル『操気』を
◆
……は? 今、なにかボーカロイドの声みたいな人工的な音声が聞こえなかった?
「──────」
「──────!」
女性と同じくらいの年齢の細身の男性が大声をあげながら近づいてきた。泣きながら
そして女性の手から男性の手に、僕が渡される。
……ん? 渡される?
「───!───!!」
男性の大きな声が耳にキーンと響く。なんだこのうるさい人は!?
耳を
これは……まさか……
◆
◆外部からの『
◆『魔力』の流れの解析に成功しました。
◆スキル『魔力操作』を獲得しました。
◆
あー……うん。なんとなく分かった。ここ、ファンタジーの……世界だ……。
目が覚めた。ここは会社……ではなく、ふかふかのベッドの中。そして、
「──────」
母は優しげな顔で僕を
「──────!!」
このテンションが上がりすぎて大きな声で語りかけてきている男性は、父だと思われる。母はそんな父を
「あーうー」
うん、舌がうまく回らない。歯がゆいけれど、生まれていきなり
それにしても、転生か……父と母の話す言語は、どうも地球のものではないと思われる。今まで色々な国のクライアントと仕事をしてきたが、こんな言語は聞いたことがない。
またこの部屋の設備。調度から貧しさは感じないのに、電気設備や機械がない。どうやら、科学技術が発達していないようだ。ランプて、いつの時代ですか?
しかも死ぬ前と寝る前に聞こえてきた声。
今までの記憶を
◆
◆スキル『解析』により、対象者の所持スキルを確認しました。
◆所持スキル:『
◆
なん……だと……。
あまりのファンタジーさに
この流れだと、スキルの
◆
◆スキル『解析』により、対象スキルの効果を確認しました。
◆『超耐性』:常時発動型スキル。
◆状態異常などの対象者への
◆任意で発動を停止することが可能。
◆『解析』:任意発動型スキル。対象物の構成要素や詳細を解析する。
◆『操気』:常時発動型スキル。気力の感知、操作を行う。
◆『魔力操作』:常時発動型スキル。魔力の感知、操作を行う。
◆『気力』:体内で生成されるエネルギー。主に身体能力強化に消費される。
◆『魔力』:大気に存在する
◆体内に
◆
やはり、スキルの詳細を確認することもできてしまった。
どうやら『超耐性』なるスキルも知らぬ間に獲得していたようだ。
そしてやはり一番気になるスキルは、『魔力操作』だ。
前世には
いや、前世にも存在していたのかも知れないが少なくとも僕は実際に見たことはなかったし、そんなオカルトはありえないとすら思っていた。
しかしこの世界には魔力や魔術があるという。
するとすぐに熱を帯びた何かが体内を
生前よりも明確に流れを感じることができるのは『操気』スキルの
そして気とは別の、なにか身体にまとわりつくような、じわじわと胸の辺りから
魔力と思われるその力を、意識的に動かせないか
動きそうな気配はあるが、すごく重い……。もう少しで動きそうな気がして、思い切り力を
これが魔りょ……う……
魔力が動く感覚とともに視界が
■
あれから毎日、やることもないので両親の目を
そんな日々を半年も過ごしていると、『魔力操作』の練習を行っても気絶することは少なくなった。
あまりに
それにしても前世ではそれこそ死ぬほど働きまくっていたので、こんなにゆっくりとした時間を過ごすのは久しぶりだ。
働かずに日々を過ごすことにもどかしさを感じつつも、久々の連休を僕は
例えば最近は少しずつこちらの言語を習得できてきている。前世の仕事では様々な国の言語を覚えなければいけなかったため、言語習得は得意なのだ。
もちろん自分ひとりの力ではなく、毎日しつこいくらい絵本をせがみまくっても
「ただいま! 今日はラビをとってきたぞー! やっぱり
「ありがとうあなた。私の大好きなラビのお肉ね!」
どうやら僕が生まれる前は母さんが食材を調達していたようだけれど、僕が生まれてからは父さんが代わりに狩りをしているようだ。母さんに比べると狩りは苦手なのにも
僕はまだ
「ありあおー! おとーあん!」
お礼を言いつつ父さんにたどたどしく歩み寄る。これも地道なトレーニングの成果だ。
「シリウスぅぅぅ!! も、もうお父さんって呼んでくれるなんて……。やっぱりこの子は天才だっ!! シリウスももう少し大きくなったら父さんが狩ってきたラビを食べさせてあげるからなぁぁぁ!!!」
僕を
いや違う、すごい魔力を感じる。
実は、転生直後から魔力は大分増えたが僕はまだ魔術が使えずにいた。
気力は生前にも
適当にメ〇とかファイ〇とか唱えてみたが、うんともすんとも言わない。
魔術に精通していると思われる父さんに聞いてみるか……とも思ったのだが、確実に
しかしそれでも、早く使ってみたい。
勉強やスポーツ、音楽、武術などは知識の吸収が早く、
仮に
では、どうやって魔術を習得するのか。
実は父さんの部屋に魔術に関する書物があるのではないかと見ている。
生後まもない
とある日の昼頃、母さんが
背表紙が読めないものも結構あるが、まだ完全に言語をマスターしたわけではないからこればかりは仕方ない。
とりあえず自分の背で届く、一番下の段にある背表紙がボロボロな本を手に取る。その本の表紙には『初級魔術教本』と大きく書かれていた。
おっ! もの
本を
そして魔術行使には対象となる現象に対する深い理解や具体的な想像力、そしてその現象を引き起こすための術式の構築が
『初級
魔術への理解もない、術式も構築していない、それでは何も発現しなくて当然だ。
しかし流石は初級の魔術教本である。
術式の構築方法が
とりあえず今回は初めての魔術だし、まずは詠唱で補助をして発動してみよう。
実際、この世界で魔術というものを見たことがないのでイメージも出来ていないから補助は必須だろう。
僕は『
本当はもっと派手な魔術を使ってみたかったけれど、コントロールできるかも分からない
それに最も初歩的な魔術だし、
僕は滲む
「
──カッッ!!
詠唱を終えると同時に、
「めがぁッ!?」
凄まじい閃光に
そして一気に半分近くの魔力を失い、そのまま横たわった。
本来は生活魔術であり殺傷力がなく
原因は自覚している。まず、魔力を込めすぎた。本気で指先に魔力を
……本当に発動するか不安だったから、と言い訳をしておく。
虚脱感に襲われつつも起き上がり、再チャレンジをする。
魔力を調整し指先に少しだけ纏わせてランタン程度の光量をイメージし詠唱すると、
◆
◆スキル『初級光魔術』を
◆
成功だ……!!
今度はきちんと成功したからか、スキルとして認められたようだ。魔力消費量は先ほどの二十分の一程度で十分であった。
最初の魔術行使はどう考えてもやりすぎだったな。
その後も何度か『
初級魔術だし当たり前か。この程度の術式なら詠唱がなくても
よし、
集中し術式を頭で構築する。そして魔術名を心の中で唱えるとスムーズに魔力が流れ、指先に光が灯った。成功だ!
──ガタッ
◆
◆スキル『詠唱破棄』を獲得しました。
◆
スキル取得のお知らせと共に後ろで物音がしたと思いサッと
……やっちまった……。
「……う?」
必殺、あどけない幼児のポーズ。
僕は何も知りませんと
そんな僕の
「シ……」
「……あう?」
「シリウスが魔術を使ったぁぁぁぁぁ!? しかも詠唱もしてない!! 俺の
父さんは僕を持ち上げて
声でかい、耳が痛い、目が回る。
その後、
うん、今度から魔術の練習をする時は細心の注意を
母さんの胸の中で、僕はそう決意した。