4-2
それから二科は、早速自室に閉じこもってコスプレの準備を始めたようだ。
数十分後。
「……!」
「どう!? 『
部屋から出てきた二科を見て、思わず息をのむ。
アニメ化もした人気ライトノベル『冴えない彼女の育てかた』のメインヒロインである、『加藤恵』のコスプレをしていた。
好きなキャラクターだったため、二次元から出てきたかのような二科の姿に内心めちゃくちゃテンションが上がってしまう。
昨日のユメノ☆サキコスプレのような、いかにも二次元という感じの格好も良かったが、加藤恵のような清楚なコスプレもすごく似合う、と思った。
「お前、男性人気がある作品は
「『冴えカノ』はたまたま深夜にやってたアニメ見てからハマって、特に恵が好きでコスプレ衣装まで買っちゃったんだよね~! じゃ、早速写真撮ってくんない?」
「あ、ああ……」
「場所はー、うーん、どうしよっかなー。この辺だったら背景に
ソファーに座り、背景に壁しか写らない位置で、二科は俺にスマホを
「ちゃんと可愛く撮ってよ!?
それが人に物を
「じゃ、撮るぞ」
少し
二科が一枚撮るごとに少しずつポーズを変える。
「んー、
二科が普通に座っていた状態から体勢を変えて、
前屈みになったことで、ただでさえまあまあ開いていた
うおお、これはやばい、やばいぞ……。注意すべきか? と思ったが、そんなことできる度胸は俺にない。どこ見てんだよキモい、とか言われそうだし……。
二科って、服の上からじゃ分からなかったが、まあまあ胸あるんだな……。
「じゃ、今度は
「あ、ああ」
二科は床にペタンと座ってポーズをとった。撮影を再開する。
それにしても……スカート、かなり短いな。スカートとニーソの間の絶対領域が
いや、何考えてんだ俺。そんなこと考えながら撮ってるってバレたら、間違いなく
「んー、ポーズいっぱい変えんのって結構大変だな……」
しかし、二科が座り方を変えたり足の角度を変える
あんなに上の方まで
二科が次のポーズ……体育座りをしようとして
「あっ……!」
次の
「ちょ、ちょっ……み、見てない……よね!?」
二科は顔を真っ赤にして
ってことは、やっぱりこいつ、下はパンツなのか……!?
「……っ! み、み、見てないって!」
俺は慌てて首を左右に
「ちょっと今までに撮った写真見せて!」
二科にスマホをふんだくられる。撮ってもらった相手に対する態度かよ……! と思ったが、言わないでおいた。
「……、うわっ……
「え!? どこが写り悪いっていうんだよ! めっちゃ
「これなら自撮りの方が全然
さっきの写真に気付いて、二科は顔を真っ赤にさせて怒り始めた。
「え、いや、だ、だって……」
「ギ、ギリギリ見えてない、けど……なんで言ってくんないの!?」
二科は見たことないくらい顔が赤い。怒っているのもあるだろうが、それ以上に
「お、お前が勝手にそういうポーズとったんだろ! 俺はそんなもん撮ろうとなんかしてねえし!」
「あーもー最悪! あんたなんかに頼んだ私がバカだった!」
「人に撮ってもらっておいてその言いぐさかよ!?」
「もう頼まないから安心してよね!」
二科は捨て
くそっ、やっぱりどこまでも自己中心的な女だ。
しかし……家でコスプレした写真をツイッターに上げて、そんな簡単にイケメンレイヤーと出会えるもんなのだろうか。
ああ、俺も良い顔の作りに生まれていれば、イケメンコスプレイヤーとして美少女コスプレイヤーからモテまくっていたかもしれない。いや、そもそも良い顔に生まれていれば、それ以前にモテモテになれて彼女できてんだろ、
「できた! めっちゃ
数十分後。
二科が自室からリビングに
こいつ、さっき怒ってたのもう忘れてんのかよ。なんて単純な
二科のスマホ画面に目を向けると……。
「うわ……」
確かに、二科とは分からないくらいの顔になっていた。
元々見た目だけは
目はさらに大きくされ、
確かに美少女ではあるが、まるでCGのようだ。
「どう!?
「不自然すぎるな。人間味がない……」
「でも、私だとは分かんないでしょ?」
「まあ、確かにそうだけど……」
「よーし、早速ツイッターアカウント作って、今日から写真
二科は目を
そんな二科を、俺はただ
ここまで出会い
二科と
* * *
一週間後。
「見て見て
夕食後、二科にツイッターのトップ画面を見せられる。
「コスプレ動画とかも上げてたらイイネめっちゃもらえるようになってー!」
「へ、へえ……すげえな」
「今度合わせしましょう~って言ってくれるレイヤーさんもいて! ほら、人気バーチャルYouTuber『アイト ユウキ』ちゃんのコスプレイヤーさんなんだけど、めっちゃ可愛くない!? 私がサキちゃんのコスプレして、バーチャルYouTuber合わせすんの!」
『アイト ユウキ』とは、ボーイッシュ系の美少女バーチャルYouTuberであり、『ユメノ☆サキ』の次に人気がある。確か、あいもコスプレしてたな。
バーチャルYouTuber合わせか。それはとても楽しそうだし、見てみたくもあるが……。
「なんか順調にコスプレイヤーの道を
「あのさ、二科……それで、本来の目的の方はどうなんだ?」
「え? 本来の目的……?」
二科は心底不思議そうな顔で聞き返す。
まさかこいつ……忘れてやがるのかっ!?
「お前そもそも、憧れの男性レイヤーと
「……っ!」
二科は俺の言葉に、暗い表情になる。
「……も、
「え……それじゃ、コスプレアカウント作った意味なくね……?」
「そ、そそ、そんなことないわよっ! コスプレの楽しさを知れたし! 女の子のレイヤー友達も作れたしっ!」
二科は自分自身に言い聞かせるかのように強い口調で言い切る。
「当初の目的完全にどっかいったな……」
「……っ! う、う、うるさいうるさいうるさーいっ! い、いいのっ! これからも
二科は俺の突っ込みに、ヤケクソ気味に
やはり、コスプレで
ここ最近の二科の努力を思うと、さすがに少し