間章、ある一匹狼のモンタージュ
知ってる? 芹沢明希星って。
そう。A組の背の高い子。
え、バスケ部なんじゃないの?
違うよ。
あんなに背高くて?
いや、スカウト行ったらしいよ。だってミニバスでダンクしてたんだよ。経験者って思うじゃん。そしたら「やったことない」って。
そんなわけなくない?
いや、部活はやってないみたいよ。
何か中学のとき、いじめにあったんだって。あんな性格でしょ。
チームとかコミュニケーションとか苦手そうだし。
モデルやってんだって?
俺が聞いたのは何かエロいやつだって。
マジ? 詳細。
オレ知らない。蜷川が言ってたんだって。
つかえねー。
◆
五時限目。
前の席で、芹沢さんが寝ていた。
初夏の日差しのなか、セミロングの髪を明るく輝かせて、ライオンみたいに豪快に寝ていた。
芹沢さんも怖い。怖いけど、かっこいい。そんなこというと、変な目で見られるかもしれないから黙っているけど。
席替えで近くになったときは怖かったけれど、今はそうでもない。芹沢さんはいつも一人で、他人に興味がないみたいだった。休み時間は微睡むように窓の外を眺めている。
そんなことより、世界史の後藤田の視線が芹沢さんに突き刺さってる。
起こすべきだろうか? でも、そんなに、というか、全然親しくないし。芹沢さんが寝ていることに気づいて、誰かがくすくす笑っている。
「芹沢! 芹沢明希星!」
後藤田の大声に、自分とは関係ないのに肩が震える。
当の芹沢さんはゆっくりと頭を上げ、周囲を眺める。本当にライオンみたいだ。
「スミマセン、聞いてませんでした」
悪びれる様子もなく、芹沢さんは言った。
「放課後、職員室まで来い!」
「はい……」
芹沢さんはまた、微睡むように窓の外を眺めた。