幕間『双原流希』
「──流れ星を拾いに行こう!」
最初にそんなことを言い出したのは、さて、誰だっただろう。
流希だったような気もするし、僕が自分から言い出したような気もした。
小学生と絡んでいる、と知られるだけでご父兄諸氏に顔を
古来から《願いを
その点、空から降ってくる流れ星が、自分の住む街に落ちたというなら話は楽だった。冒険が近所で済むのなら、元手もまったくかからない。
降っている間なら願いを三回唱えるだけで叶えてくれるはずが、落ちてしまうとなぜか交換条件を要求してくるのは困ったものだが、その辺りは星側にも言い分があるだろう。
そもそも。僕には別段、叶えたい願いがあったわけじゃない。
小学生の僕にとって、
──ただ、《流れ星をみんなで拾いに行った》という過程が欲しかっただけ。そういうことだったのだ。
だから、僕は流希とふたりで星を探しに行った。僕の記憶では、そうなっている。
「悪いことをするなら夜に限る。お天道様が見てない夜こそ、悪事を働くチャンスだぜ」
流希からそんな言葉を聞いたのは、そのときだっただろうか。
よく覚えていない。当時のことを思い出そうとすると、今でも頭に
「でも、太陽の代わりに星が見てるぞ。俺たちが悪いことしてるの、バレてるじゃんか」
確か僕は、そんなふうに答えたのだったか。
「だからいいんじゃない」
そんなふうに、流希は言っていた。
あのときの僕には、その言葉の意味なんてわからなかった。
「──だって。それでも誰かは見てくれている。いいところも悪いところも。それって、素敵なことじゃない? きっとわたしたちは、誰かが見てくれてないとダメだからさ」
「そういうものかな」
「そうだよ。少なくともわたしは、
ああ。そういえば、そんな会話をしたのだったか。
徐々に記憶が想起されていく。脳の、あるいは心の奥深く、鍵をかけて封じられていた思い出が解かれるように。そのことを思い出せと、まるで誰かに告げられるような。
だから僕は、これが《夢》だと自覚した。
僕の頭はぐちゃぐちゃだ。自分で星の涙を使ったのは一度きりだし、そもそも二度目はないけれど、星の涙が関係する事件に関わったのは一度だけではないのだから。そいつが関わっている以上、きっとどこかで思い出が
僕が、どうしても思い出せないものがある。
こいつはきっと、夢の中だけで許されたお
「これが、友情の
夢の中で流希が言う。
その笑顔を。僕はもう二度と見ることができないのだと思い知らされてしまう。
けれど、それは当然のこと。
「使わずに取っておく、友情の証。大人になっても、いつまでも! 星の涙を持っている限り、友達でいようって誓えるでしょ? だって友達でいることなんて──お星様に頼むことじゃないんだから! わたしたちには必要ないってもんだぜ、そうでしょ?」
その約束を、僕は破った。
星の涙に頼ってしまった。
「ね、
そうだ。
いちばん大切な友達だった。
なのに──。
──次に会うときも、きっとまたわたしと、友達でいてね──。