第三章

【嫉妬】

「あ、あんどうくん!」

「ん、何? あさくらさん」


(気づいたら、もう三時間目の休み時間だし……お昼休みまで時間が無いわ! 安藤くんはぐにかへ行っちゃうから、今のうちに誘っておかないと!)


「その……」

「サ~ク~ラ! ねぇ、聞いてよ!」

「きゃぁあ! って……モモ!?」


(いきなり抱き着くから誰かと思ったら……なんだ、モモじゃない。今は安藤くんを誘う大事な所なんだから、邪魔しないでよね!)


(誰だっけこの人? モモってあだ名だよな……? 確か──そう、ももさんだ!

 朝倉さんは黒髪ロングの正統派美少女で人気だけど、桃井さんと言えば何よりも──

 その『巨乳』!

 ぼっちの俺でも名前を知っているくらい『学校一の巨乳』で桃井さんは有名だし、ポニーテールで背も高くてスタイルもいいから、朝倉さんに次いで男子の人気も高いんだよな)


「さっきの授業さ! なか西にし先生のカツラが取れかけてたんだけど、超面白くない?」

「ハイハイ、面白い面白い。だから、早くどいてくれるかしら?」

「はいはい、どきますよー。そういえば……最近、サクラって安藤くんとよく話してるけどー、二人ってそんなに仲よかったっけ? ねぇ、一体どんな話してるの!」

「ふぇ!? べ、別に……ただの世間話よ! 特に話すような会話でもないわ」

「ふーん……、教えてくれないんだー? なら──」

「「え」」

「安藤くんに、直接聞いちゃうもんねー?」

「「ちょ!」」


(うゎあああああああああああ! いきなり桃井さんが俺に抱き着いてきたぁあああああ! え、何コレ! どういう状況!? 胸が……! 桃井さんの胸が俺の右腕に──もしかして、俺は今日で死ぬのか!?)

(うぎゃぁああああああああああああああああ! わわ、私のあんどうくんに……何してくれてるのよぉおおおおおおおお! は、離れなさいよ! そんなに胸を押し付けたりなんかして……ム、ムキィイイイイイイイイ!!)


「ねぇねぇ、安藤くん。サクラとはどんな話してるのかなー?」

「え、えっと……」


(な、なんて答えるのが正解だ……!? ラノベの話は言わない方が──いいよな? てか、胸デカ!? って、ちゃうちゃう……ぼんのうよ消えろ! えーとえーと、本の話はダメだし、胸の感触の話は──って……だから、違ぁ──う!)

(安藤くん! 私がラノベ好きなのは、安藤くんと私だけの秘密だからね!? だから、絶対に言っちゃダメよ! って……ちょっと、安藤くん? さっきから、視線がモモの胸ばっかりに行ってないかしら!? やっぱり巨乳が好きなのね! ふ……ふふ、フケツよぉー! 安藤くんったら、フケツだわ!)

(ヤバイ……段々とあさくらさんの視線がキツくなってきた気がする……やっぱり、俺みたいなぼっちがともだちの巨乳をたんのうしているのは相当にキモく見えるんだろう……クソッ! これ以上、朝倉さんから嫌われる前に何か言わないと!)


「と、トイレの話……かな?」

「へ……と、トイレ? アッハハ! 何それー? あんどうくんてば、面白ーい!」

「え、そうかな……?」

「ガルルゥウ~……」


(私はちっとも面白くないわよ!)


「アハハハ、安藤くんって、話すと意外と面白いんだねー。うん! 最近、サクラが休み時間によく話してる理由が少し分かったかも。じゃあ、あたしは席に戻るねー♪

 安藤くん、またおしゃべりしよう!」

「え、あ、はい……」


(なんか、ももさんって嵐のような人だな……)


「あ! それで、あさくらさん話って──」

「ないもん!」

「……え、でも──」

「ないもんもん!」

「い、いや──」

「ないったら、ないもんもんもんっっ!!」

「は、ハイ! すみませんでしたぁーっ!」


(何だ!? ラノベのことは言わなかったのに、何で怒っているんだ……!?)

(フン……安藤くんなんか、知らないんだから!)

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