第三章

【策略】

 キ~ンコーンカーンコーン♪


(お昼休みになったわ……。さぁ、あんどうくんを誘うわよ!)


「あんど──」

「……よし!」


(昼休みの時間だな。席を占拠される前にコンビニに行って、ぼっちのランチでもするか)

(──ちょ! もう、廊下に出ようとしているのだけど!? 安藤くん、行動が早すぎないかしら!? ま、待ってぇえええー!)


「安藤くん。ちょっと、いいかしら?」

「──え、委員長……どうしたの? ドアの前なんかで待ち伏せして……」


(委員長が教室で話しかけてくるとか珍しいな……)


「実は今日から学校の食堂で、春キャベツをふんだんに使った期間限定の『春ロールキャベツの春キャベツ詰め&春キャベツのスープ定食』が発売されるらしいのだけど……安藤くんは知っていたかしら?」

「何その見事に春キャベツしか使用していないベジタリアン歓喜の定食は……。別に知らなかったけど、それが?」

「はぁ、鈍いわね……。一緒に学食で食べない? って、誘ってあげているのよ」

「はぁあああ!?」


「なにぉ──っ!?」


(ちょっと、委員長ぉおおおおおおおおお!? 貴方あなた、私に『安藤くんは好きじゃない』なんて言って……わ、私をたばかったわね! わ、私がどれほど……彼を誘いたかったか知っていて! それを目の前で奪うなんて……委員長の悪魔! このサタン! いやルシファー! もう、委員長なんか、見損なっ──)


「それで、良かったら──あさくらさんもわたしたちと一緒にどうかしら?」

「へ……私?」

「は? 何でここで……あさくらさん?」


(委員長のやつ、何を──)


「ぜ、、ご一緒するわ!」

「──って、はぁあああ!?」


(何で、朝倉さんも即答してるんだよ!?)

(委員長、マジ天使だわ! ありがとう、委員長様! 私……委員長の半分は優しさで出来ているんだって、信じてたわ!)


「待って、委員長! 何で……俺が二人と一緒にご飯食べるの? 理由が無いよね……」

「はうっ!」


(それよ! 私もあんどうくんをお昼に誘おうとして、何度その理由で悩んだか! 委員長は一体どんな理由で説得するのかしら……?)


「え、理由なんて『クラスメイトだから』で良いでしょ?」

「「えぇえええええええええええええええええええええ!」」


うそ……だろ? え、クラスメイトって、理由が無くてもご飯を一緒に食べるのか?

 俺『ともだち』なんて存在いなかったし、そんなこと言われても分からないんですけど!)


「え……委員長、それって理由になるの?」

「なるなる。ね、朝倉さん?」

「……そ、そうね! と、当然でしょう?」

「いや、朝倉さんもさっき一緒に驚いていたよね……?」

「そ、そんなことないわよ! ね? 委員長?」

「何? もしかして、安藤くんはわたしたちと一緒にご飯食べたくないって言うの?」

「いや、一緒に食べる理由がないというか……」

「じゃあ、一緒に食べない理由もないわよね?」

「いや……だって俺、いつもは外で食べるから──」

ちなみに、それは断る理由にならないから。委員長命令よ」

「じゃあ、何で聞いたし!?」


(ふぅ、何とか二人をお昼に誘えたわ。本当は二人の仲に介入するつもりは、なかったんだけど……今の調子で二人の仲が進展するとはとうてい思えないのよね。そうしたら、あさくらさんの相談は増える一方……。ならば、いっそ! わたしが裏から手を回してチャチャッとあの二人をくっつけるべきなんじゃないかしら? だって、そうすれば、わたしはお役めんでしょう。そして、朝倉さんの信用も得て……クラスでの地位も安泰ってことよ!

 クフフ……二人ともこのお昼休み覚悟しなさいよね……)

(やったわ! ついに、あんどうくんと一緒にご飯よ! な、何を話そうかしら~♪)

(委員長って、実はクラスでそこそこ人気なんだけど……その委員長と一緒にお昼ってだけでクラスのヘイトを集めるよな……? なのに『学校一の美少女』の朝倉さんも俺と一緒とか……学校中の男子のヘイトがまりすぎて、俺の胃がヤバイよ……)

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