第三章

【手紙】

「あのね……その笑わないで欲しいのだけど、実は私! あ、ああ──安藤くんと一緒にお昼ご飯を食べたいの!」

「え……朝倉さん」

「何かしら……」


(さぁ、心の準備はできているわ! どんな返答もバッチ来ーいよ!)


「何でそれを……本人じゃなくて、わたしに言うのかしら……?」

「だって、安藤くんを誘うのが恥ずかしいのよぉおおおおおおおおおお!

 委員長、私の恋を応援してくれるって言ったでしょ!? ねぇ、お願い! 安藤くんをお昼に誘う方法を一緒に考えて!」

「あぁ……」


(なるほどね。どうして急に、朝倉さんに呼び出されたのか分かったわ)


「うーん、どうするもなにも……さっき、わたしに言ったセリフをそのままあんどうくんに言えばどうかしら?」

「そんな簡単に言えてたら、苦労しないわよぉぉおおおおおおおおお!」

「ハイ、ソウデスネ……」


(それさえ言えれば、簡単に終わる問題なのよ!)


「じゃあ……手紙にでも、書いて渡せば?」

「それよ! そうと決まれば次の授業が始まる前にチャチャッと手紙を書くわよ!」

「うん、そうね……じゃあ、わたしは授業が始まるから席に戻るわね」


(でも、あさくらさん……手紙を書くのはいいけど、ちゃんと渡せるのかしら?)



 キーンコーンカーンコーン~♪


「ここ次のテストにそのまま出すぞー、少しでも点が欲しいやつはノートを取れよー」


(安藤くん、今日こそは私と一緒にお昼休み、ラノベ話に花を咲かせてもらうわよ! 幸いなことに、私は安藤くんの真横の席だし……この手紙を渡すのも楽勝よ!)


「安藤くん……安藤くん……」

「え、朝倉さん?」


(……何だ? 授業中に朝倉さんが小声で話しかけてくるなんて珍しいな……)


「こ、これ……」

「これは……手紙?」

「そうよ」


(やった! 安藤くんが手紙を受け取ってくれたわ! これで──)

(何だろう? 朝倉さんから手紙が回って来たぞ……? 俺って『ぼっち』だから、手紙を回すのやったことないんだよなぁ……。とりあえず、前の奴に渡せばいいか)

(───って、ええええええええええええええええええええええ! あああ、安藤くん、何でもらった手紙を前の席の人に渡しちゃうのよ! もらった子も誰宛か分からなくて……どんどん他のクラスメイトに回してるうぅううううううう!?

 や、めてーっ! その手紙をあんどうくん以外に読まれたら……私恥ずかしくて死んじゃうからぁあああああああああああああ!)


「………………」


か、あさくらさんの手紙がわたしに回ってきたわ……。

 一応、気になって様子は見ていたけど、朝倉さん手紙の表に『朝倉より』って書くからみんな、誰宛か分からず中を見ないで回し続けたのね。確かに、あの朝倉さんの手紙を間違って開けたら気まずいし、手紙を開けずに回すのは分からなくもないけど……でも、安藤くんは流石さすがに自分宛だって気付きなさいよ!)


ちなみに、朝倉さんはどんな手紙を書いたのかしら?」


『拝啓、安藤様。

 突然のお手紙失礼します。

 いつも私とあいさつを交わしてくれてありがとうございます。貴方あなた様と言葉を交わせるだけで私の心臓は早鐘を打ち、この胸を焦がす思いです。

 さてさて、実は本日からこの学校の食堂に春キャベツをふんだんに使用した新メニューが追加されるそうです。

 もし、安藤様のご都合が付きましたら、この機会に私とご一緒にその新メニューをたんのうしてもらえますでしょうか。

 良い返事を心よりお待ちしております。

    朝倉』


「う~ん……」


(…………前半、ラブレターかと思ったわ)

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