第二章

【ミッションとりんごジュース】

「ぎょぁああああああああ! 私のバカバカバカバカ! 何で、何であんなことを言っちゃったのよぉ……。しかも、その後パニックになって安藤くんを家に呼んじゃったわ!」


(幸いママは外に出ているみたいだけど、安藤くんはまだ私の部屋にいるのよね。飲み物を取ってくるって理由で部屋を出たから、早く戻らないと!

 でも、私ったら何であんな言い間違いを……いや、何となくだけど理由は分かるわ……。

 あの時、私が言おうとした言葉は──


『私も、安藤くんと同じでライトノベルが大好きなの!』


 だった。でも、当時の私は極度の緊張状態で、その言葉が──


『私(も)、安藤くん(と同じでライトノベル)が大好きなの!』


 このように( )内の言葉が抜け落ちてしまったのよ!

 そう! ただ緊張して早く言おうとした結果、超偶然的にその部分だけの言葉が抜け落ちただけであって……けけけ、決し──て! 私の本音が口に出たなんてことは絶対にありえないわ! だって、私はあんどうくんのことなんか……す、好きじゃないわよ!?

 そうよ! むしろ、彼が私にれるべきでしょう? そりゃ別に、ラノベが好きなことは……隠さないって決めたけどぉ~? でも、安藤くんが好きとかは関係ないし……そもそも、私は彼に惚れてなどいないのよ!)


「よし、考えはまとまったわ!」


(まずこれから行うミッションは三つよ!

①安藤くんに本屋での発言は言い間違いだと力ずくでも分からせる。

②誤解を解いた後に彼へ私がラノベ好きであることを告白する。

③私は絶対に彼に惚れてなどいない!

 よし、完璧ね。ああ、そうだわ! 飲み物取ってくるって言ったんだから、何か持っていかないと変よね? うーん、安藤くんは牛乳とか嫌いじゃないかしら? でも、苦手って可能性もあるわよね……。じゃあ、ドリアンジュースに! うぅ……これって結構クセが強いから他のがいいかしら? なら! ドクダミジュース? だけど、これも独特の風味があるし、安藤くんの口に合わなかったら……だって! せっかく、彼が私の家に来てくれたのよ!? ちゃんと、おもてなしをしたいじゃない! べ、別に、安藤くんが何を飲もうが私はどうでもいいわよ! だ、だって私は彼のことなんて、全っ──然! 意識していないんだからね!? そうよ! だから、彼のジュースなんて……うぅ~あぁああ、もう! この100%天然しぼりの甘さスッキリりんごジュースで十分だわ!)


「でも……どうして、私は安藤くんを家に呼んじゃったのかしら?」


(うーん、あの時の会話を思い出してみても──、


『……ふぇ! わ、わわわ、私ったら何を──まって! 違うのよ! いい、今のは言葉が足りなかったと言うか練習不足で……いやぁああああああああ!』

『あ、あさくらさん……つまり、今のは言い間違いなんだよね? だ、大丈夫! おおお、俺はぼっちだからこんなことで変に勘違いなんてしないよ? だ、大体あの朝倉さんがぼっちの俺を好きなんてありえないもんね! じゃ、じゃあ! 俺は先に帰るから──』


 あぁ、思い出したわ! そうよ、そう、かあの時の──


『あのあさくらさんがぼっちの俺を好きなんてありえないもんね!』


 あの言葉! あれがしように腹が立ったのよ!

 まったく……今思い返せば『あの朝倉さん』って誰よ! 私はアニメに出てくる『生徒A』じゃないの! きっと、そういう言葉に無意識で怒っちゃったんだわ!)


「そうと決まれば、あんどうくんも待たせちゃってるし早くジュースを持って戻らないと!」


(安藤くん、覚悟しなさい! 私は貴方あなたのことなんか……す、好きじゃないんだからね!)


「このりんごジュース……安藤くんの口に合うかしら? ウフフ♪」

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