接続章 『夜のこと/旅の途中』1
接続章『夜のこと/旅の途中』
1
「──今さらだけど。ラミは、これで本当によかったの?」
エイネが切り出したその言葉に、ラミはきょとんと首を
視線を、温かな炎色の揺れる
「よかったのかって、何がだ?」
「いろいろ。というか全部のことかな。だってラミは騎士を目指してたんでしょ?」
「……そりゃ本当に今さらの質問じゃないか?」
「あはは、そうだよね。ホントなら、旅立つ前に
少女は普段通り、薄い笑みを浮かべたような表情。彼女はいつだって何かを──自分の人生というものを楽しんでいる。そして、それを素直に伝えてくれる。
多くを楽しんで受け入れるエイネだから、表情から感情を読み取ることは難しい。この少女はだいたい、いつだって楽しんでいるのだから。
「でも、これはラミだって悪いんだよ?」
ぷっくりと
こんな風に感情を
「え、なんでよ。今、オレが怒られる流れだったの?」
「そりゃ私は
「だからこうして
「いや、そういう話じゃなくて。ラミの言う騎士って普通に教会詰めだったでしょ。神子付きになって旅をする騎士なんて例外中の例外じゃん」
「それは……まあ、そうだけど。なんだよ、今さら不満だとか言うつもりか?」
「私はもちろんラミといっしょに旅したかったし、してくれるとも思ってたけど。それはそれで、それならちゃーんと理由を言ってくれないと納得できないじゃない」
「何そのわがまま……めんどくさ」
「面倒とは何さー! その通りだけどっ!」
むくれながら器用に認めるエイネ。付き合ってくれるのは
確かにこれは面倒臭い。
「まあ初めから納得してるよ、オレは。エイネに置いてかれるほうが嫌だった」
神子だとは知らなかった幼き日から、命数術師としてのエイネの天才性を、ずっと目の当たりにしてきたラミだ。
それは嫉妬することではなく、むしろ
それを誇らしく思う一方、自分だって負けてはいられないと鍛錬してきたのだ。決して才能ある身とは言えないラミが、
「思ったんだけど。そもそもどうして騎士を目指そうと思ったの? 私の印象だと、
エイネのそんな問いに、ラミは軽く首を振って答えた。
「さっきも言ったけど、大した理由はないんだよ。子どもなら、男子なら、普通に考えるようなことで、それをずっと持ったままだったってだけ」
寝物語として聞かされた英雄
たまさかラミは、その遠い憧憬を現実に結びつけただけ。
確かに、エイネが神子だったからこそ強くなれたとは考える。けれど決して、エイネが神子だったから騎士になろうと思ったのではない。
「大した理由はないんだよ。ただ誰かを守れる存在ってのに、憧れただけなんだ──」