男嫌いな美人姉妹を名前も告げずに助けたら一体どうなる? 1

一、目覚めた女心に嘲笑うカボチャ(2)

    ▼▽


 勉強とは将来に役立てるため、そして己の未来を切り開くための大切なモノだと理解はしているが言わせてほしい──マジで眠たかった。

「ふわぁ……」

 天井に腕を伸ばすようにして体をほぐしながらおお欠伸あくびをする。

 既に終礼は終わって後はもう帰るだけなのだが、友人たちからカラオケでもどうかと誘われてしまった。

「悪い、今日は遠慮しとくわ。昨日あんなことがあったしな」

「それもそうだな。じゃあまた誘うぜ!」

「ゆっくりしろよ! んで何かあったら言うんだぞ?」

「分かった。サンキューな」

 きっと俺の家の近くでの事件だったからそれを少しでも忘れさせるためにと遊びに誘ってくれたのは分かっているので、その心遣いは本当にうれしかった。

 今回は断ったけど週末にはハロウィンが控えており、颯太の家に集まる予定なのでその時に思い切り騒がせてもらうことにしよう。

 教室を出ていく二人の背中を見送り、俺も帰るかと教室を出た。

「ちょっと寒くなってきたしコンビニに寄って温かいものでも買って……うん?」

 そうひとちながら廊下を歩いていると、男子に連れられて歩く亜利沙さんを見つけた。

 二人が向かう先はおそらく屋上だろう──二人の男女、放課後、屋上、この三つのキーワードから考えられるのはあれしかない。

「告白かねぇ……昨日あんなことがあったんだから勘弁してやれよ」

 さいは伝わっていなくても大よそのことは噂で知っているはず。だからこそ今日くらいそっとしてやれば良いのにと俺は男子に対して思った。

 亜利沙さんと連れ立っていたのはサッカー部に所属するイケメンで、確か姉妹と同じクラスだったかな? あんなことがなければ告白か頑張れよで終わったはずなのに、俺は少し亜利沙さんのことが気になってしまった。

「ったく……まあでもこれも縁ってやつか」

 俺は二人にバレないように後ろをついていくと、やはり二人が向かった場所は屋上だった。

 完全にうま根性丸出しだけど、俺は開いた扉の隙間から彼らの行く末を見守るためにのぞく。

 しっかりと閉めないと開いてしまう古い扉に感謝しながら耳を傾けた。

「亜利沙さん。俺と付き合ってくれないか」

 ほらやっぱり告白だった。

 あの男子についてはクラスも違うので全然絡みはないものの、かなり人気者なのは知っている。

 俺のクラスでも彼のことが良いと言っている女子はそこそこ居た気もするが、そんな人気者のイケメンからの告白に対する返事はあまりにもバッサリだった。

「ごめんなさい。私には心に決めた方が居るのであなたとは付き合えません」

「え……?」

「わお」

 ぜんとする男子と違い、俺はへぇっと興味津々だった。

 今まで全ての告白を断ってきたとされる亜利沙さんなので、相手があのイケメンであっても断るとは思っていたが……まさかそんな風に断るとは思わなかった。

「誰だよ亜利沙さんは男嫌いとか言ったやつは……デマを流すんじゃねえ」

 ちゃんとおもいを向ける相手が居るじゃないか、やっぱりこの目で見る情報が全てだな。ひやくぶんいつけんかずだ。

「断るための方便かもしれんけど……」

「ううん、実際それが本当なんだよねぇ」

 マジかよ、それは凄い情報を聞いたぞ。


「……うん?」

 ちょっと待て、今俺は誰と会話をしたんだ?

 俺は動揺を表に出さないようにしながら、ギギギッと壊れかけのブリキ人形のように振り向く──するとそこに居たのは、藍那さんだった。

「なん──」

「静かに、二人に気付かれちゃうよ」

 声を出しちゃダメだよと、彼女は俺の唇に人差し指を当ててきた。

「っ……」

「そうそう良い子。大きな声は出さないでね?」

「……分かった」

「うんうん。さてと、まあどうしてあたしがここに居るかだけど。妹としては姉さんのことが気になるわけですよ。結果は分かり切ってるけどねぇ」

「あの男は脈なしってことか?」

「いえ~す」

 それはそれは……あの男子にはご愁傷様と言うほかないなこれは。

「で、君は何をしてるの?」

「……あ~」

 覗き見なんて最低だとそれくらいは言われるかと思ったのだが、藍那さんは変わらずニコニコと笑みを浮かべている。

 そのれいな笑顔の裏は読めないものの、俺は素直に話すことにした。

「昨日大変なことがあったんだろ? それなのに今日いきなり告白って空気が読めてないっていうか、それ以前に新条さんのことを考えてないっていうか」

「なるほど、君はとても優しいんだね」

「こんなの優しいとかじゃなくて普通の感性だと思うんだが」

「ま、そうだよね。でもあたしは君のことを優しい人だと思ったよ? 変に疑われるよりはマシでしょー?」

「それは確かに」

 思ったよりも和やかに話が進んで助かる。

 そんな風に藍那さんと言葉を交わしていると、どうやらあちらの話もそろそろ済みそうだ。

「昨日のことをひとづてに聞いて気が気じゃなかったんだ!! あんなことがないように俺が君のことを守りたい!!」

 ほ~、こいつ顔だけじゃなくて性格もイケメンか?

 ただその心意気は立派で褒められてしかるべきだとは思うけど、もう少し落ち着いた頃に告白すれば良いのに。

「よっこいしょっと。ちょっとごめんねぇ」

「っ!?」

 そんな声と共に、ふにょんと柔らかな感触が背中に引っ付いた。

 どうやら屋上を覗き込む俺の背中に藍那さんは抱き着いたらしく、その豊満な肉体を惜しげもなく当ててくる。

 動揺する俺をよそに藍那さんは口を開く。

「何を言っても姉さんは首を縦には振らないよ。脈なしだって指差して笑ってやりたい気分だね」

「……あのぅ新条さん?」

「おっぱい、当ててるの気になる?」

 この子ストレートすぎる!!

 カーディガン越しに伝わるその大きくて柔らかなものは、藍那さんの動きに応じて縦横無尽に形を変えていく。


 手で触れたりしているわけではないのに、恐ろしいほどにその柔らかさが鮮明に脳へと伝わってくる。

「離れてくれるとありがたいんですが……」

「それだとあたしが見えないよぉ」

 俺の前に出れば良いよね……?

「ふふ、このくらいにしとこっか」

 そう言って藍那さんは離れてくれた……揶揄からかわれたのか、俺。

 まあでも、こう言ってはなんだが揶揄われてもお釣りが来るくらいには良い時間だったのは言うまでもない。

「……ふぅ」

「あはは、ごめんごめん。っとそうだ──ねえねえ、さっきあたしのことを新条さんって言ったけど」

「うん」

「あたしも姉さんも名字は同じだから分かりづらいでしょ? だからあたしのことは名前で呼んでくれないかな? その代わりあたしも君のことを名前で呼ばせて?」

 それは別に構わないけどちょっと恐れ多い気もする……けど、俺はうなずいた。

「分かったよ。藍那さん……で良いのか?」

「呼び捨てで良いよ?」

「いやいやそれは勘弁してくれ」

「今は良いよ。追々考えてね?」

 呼び捨てはもう友達の段階なんだけどな……今回俺がこうして藍那さんと話をしたのは偶然だし、こんなことはこの先そうそうないだろうから、彼女と話すことはもうないと思ってる。

「それじゃああたしも。よろしくね隼人君」

「よろしく……って俺のこと知ってたんだ」

「こうして話をしたのは今日が初めてだけど、時々朝に会ったりしてたじゃん? だから当然だよね?」

「……そう、なのか?」

 なら……知ってて当然なのか、俺は難しいことを考えるのはやめた。

 そうやって藍那さんとの話に夢中になっていたせいか、亜利沙さんの方に向けていた意識がおろそかになっていた。

 既に話は終わったようで男子が駆け足でこっちに向かってきた。

「まずっ……」

「こっち来て」

 隠れないと、そう思った俺を藍那さんが強い力で引っ張った。

 ちょうど扉が開いたことで見えなくなる死角だったため、男子に気付かれることはなかった……その代わり、とてつもなく甘い香りが俺の鼻孔をくすぐってくる。

「近いね?」

「っ……」

 お互いの顔と顔が当たってもおかしくないほどの至近距離、俺はたまらず彼女から距離を取った。

 藍那さんはやっぱり楽しそうにクスクスと笑っている。

「無駄な告白劇も終わったことだし姉さんのところに行くね。それじゃあ隼人君、またゆっくりお話ししようね♪」

 そう言って藍那さんは亜利沙さんのもとに向かった。

 俺はしばらくぼうぜんとしていたが、すぐに我に返り家に帰るために歩き出す。

 その間、さっきの藍那さんとのやり取りを思い出し、良い匂いだったし柔らかかったな、なんてことを思春期の男子っぽく考えるのだった。


 藍那さんと名前で呼び合う仲になってから数日が経過した。

 あれから何度か彼女と目が合うことはあっても、そばに亜利沙さんが居たり他の友人が居ると彼女が近づいてくることはなく、その逆も然りだ。

「……ま、これが普通なんだよな」

 そうつぶやき、俺はちょっと重たい段ボール箱を持って資料室を訪れていた。

 今は昼休みなのだが、トイレの帰りに廊下を歩いていると先生に呼び止められ、段ボール箱を資料室に置いてきてほしいと頼まれたのだ。

『いいっすよ。貸し一つで』

『分かった。今度ジュースでもおごってやろう』

 先生に奢ってもらうつもりはないけれど、えず頷くだけ頷いておいた。

「えっと……ここで良いか?」

 資料室に着いたけど、元々誰もあまり寄り付かない場所で掃除以外で入ることもない……なので備品がその辺に散らかっているわけだ。

 俺は段ボール箱を適当に床に置き、一仕事したぜといった具合に息を吐いたその時だった──ガタンと音を立てて扉が閉まった。

「っ!?」

 棚とか色々な物があって扉は見えないものの、誰かが閉めたことは分かる。

 閉じ込められたのかと焦りそうになったが、別に外から鍵を掛けられても内側から開けることが出来るし問題ない。

「電気いてないからちょっと不気味だなここ……」

 そう呟いた俺はすぐに扉の方に向かう。

「ったく、誰だよ閉めたやつは──」

「あたしだああああああああ!」

「どわああああああああああ!?!?!?」

 突然の大きな声に俺は盛大にビックリしてしまった。

 本当にお化けでも出たのかと驚いてしまったが、よくよく思い返せば今の声には聞き覚えがあった。

 何事かと背後を見ればいつの間にそこに居たのか、笑顔の藍那さんが立っている。

「にしし、悪戯いたずら成功♪」

「……勘弁してくれ。心臓が飛び出るかと思ったぞ」

 うちの高校が誇る美人姉妹の片割れ、その一人である藍那さんの登場に俺はドキドキよりも勘弁してくれって気持ちの方が強かった。

「あはは、ごめんごめん。廊下を歩いてたら段ボール箱を抱える隼人君を見つけちゃってさ。気になって追いかけてきちゃった」

「それならわざわざここまでついてこなくても声を掛けてくれればいいのに」

「確かにそれもありなんだけど、今まであたしたちって絡みなかったでしょ? だからいきなり親しげに話すと隼人君に迷惑掛かるかなって」

 あぁそういうことか。

 藍那さんは校内で有名人だから普段話さない俺と一緒に居たら変なうわさでも流されるかもしれない、それを考えてのことだったんだろう。

「あたしね? 結構隼人君とお話ししたかったんだよ? でも遠くから目が合うだけでお話できないし、あたしがウインクとかするくらいじゃん?」

 そう言って藍那さんはグッと距離を詰めてきた。

 この間初めて藍那さんと長く話をして、それで二度目のかいこうがこんな風に親しみあふれるものだとやっぱり裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。

「まだ昼休みの時間はあるしお話ししよ?」

「……分かった」

 綺麗な子の提案は断れない……まだまだ俺は未熟だった。

 二人で適当に椅子を引っ張り出し、向かい合うように座って会話するのだが彼女とする話は別に特別といったものではなかった。

「隼人君はハロウィンの予定とかあるの?」

「あぁ。友人の家に集まってコスプレパーティみたいなことをするんだ」

「コスプレ良いね! あたしはそういうのしたことないからちょっと憧れるな」

「そうなんだ」

「うん。あ、ちなみになんだけどあたしがコスプレするとしたら何が隼人君は似合うと思う?」

「え? う~ん……」

 俺はその言葉を聞いて、ふっと頭に浮かんだのが際どい衣裳の魔女だったのだが……流石さすがにこれを口にすると嫌われることは確定なので、俺は取り敢えず際どい部分は口にせずに魔女かなと伝えた。

「魔女かぁ。悪い魔法を使う魔女……良いねぇ!」

 どうやら大丈夫な答えだったようで安心した。

「隼人君はどんなコスプレをするの?」

「……聞かないでください」

「えぇ? 聞きた~い!」

 いちいち反応が子供っぽい人だな……これもまた新しい発見だ。

 どんなコスプレをするのかしつこく聞いてきたので、取り敢えず俺はとある漫画に出てくるキャラクターでも真似まねると伝えておいた。

(ここでカボチャのかぶものとかレーザーソードとは言えないからな……)

 それはバレてしまうとかそういう心配ではなく、彼女にとってつらい出来事になったそれを少しでも思い出させないためにだ。

「それじゃあ何か欲しいモノは?」

「まあ近日発売するゲームくらいかな」

「なるほど。ちなみにあたしにも欲しい物あるんだよね」

「教えてくれるの?」

「もちろん♪」

 あの藍那さんが今欲しがる物とは何なのか、彼女は微笑ほほえみながら教えてくれた。

「えっとねぇ……う~ん、教えてあげるとは言ったもののちょっと曖昧にしちゃうけどごめんね? 物とはちょっと違うんだけど、それが姉さんと被っちゃってね」

「そうなんだ」

「うん。それはこの世界に一つしか存在しないからさ。あたしは姉さんのことも大好きだし二人で共有しようと思ってるんだよ♪」

「そんな物があるんだな……」

 世界に一つだけって何だろうか……それが何かは気になるが別に聞き出そうとまでは思わない。

 藍那さんは更に笑みを深めて言葉を続けた。

「今はまだあたしだけがそれを見つけてて姉さんはまだ気付いてないの。すぐに姉さんも気付くとは思うけど、それまではあたしが独占しようかなって」

「へぇ……ていうか、話聞いてて思ったけど本当に二人は仲良いんだな?」

「そりゃあね! だってずっと一緒に居た姉さんだし、それこそどんな時だってあたしの傍に居てくれたから」

 藍那さんの言葉からは強い亜利沙さんへの信頼と親愛が感じ取れた。

 亜利沙さんのことを思い浮かべながら話しているのか、彼女の表情はどこまでも優しくて……そして楽しそうだった。

「藍那さんは……お姉さんのことが──」

 大好きなんだね、そう言おうとした時だった。

 俺の目の前に垂れてくる何か、それは天井から糸を垂らしているだった。

「っ!?」

 突然の蜘蛛の出現に俺は思わずドドドッと音を立てるように移動したが、俺とは違い藍那さんは一切慌てることはなくむしろ蜘蛛に向かって、そっと指を伸ばす。

「触れるの?」

「うん。あたし、蜘蛛とか結構好きだし」

「そうなの!? 女の子なのに珍しいな……」

「そうかな? ということは隼人君は嫌いなんだ?」

「嫌いというより苦手なんだ」

 基本的に俺は足の多い生き物が苦手なので、蜘蛛もあまり得意ではない。

 藍那さんが触っている程度の小さい蜘蛛なら全然大丈夫なんだけど、時々見かける大きな蜘蛛とかになると悲鳴を上げるかもしれない。

「蜘蛛って頭が良いと思うんだよね。糸で自分のテリトリーを形成して、そこに入り込んだ獲物は絶対に逃がさない。弱るまで待って最後にはパクリと食べるの」

 指に乗せていた蜘蛛を優しく逃がした藍那さんは俺を見た。

「自分の欲しいモノを甘い誘惑で誘い込み、糸を出して包囲網を作りその獲物を絡め取る……うんうん、なんかこう言うとかっこよくない?」

「そうかなぁ?」

「むぅ、あたしだけかぁ……」

 かっこいいと言うより怖くないかな?

 胸の下で腕を組むようにした藍那さんは思いの外、蜘蛛の話が俺にウケなかったことが悔しいのか、むむむとうなり続けている。

「あ、じゃあさ! お互いの恋愛についてのお話ししようよ!」

 名案だと笑顔一色になった藍那さんだけど、俺としては自身の恋愛に関してはちょっと悲しい過去があるわけでして。

「あたしは今まで誰とも付き合ったことないんだよね……ってこれだと全然面白みがないじゃん!!」

「自分でツッコミを入れるんだ」

「隼人君はどうなの?」

「俺は……」

 実は中学の頃に少しだけ、本当に数日間だけど付き合った女の子が一人だけ居た。

 でも結局、お互いに気持ちが通じ合わないことが増えてしまってすぐに別れた。

「……居たの?」

「まあ……でもすぐに別れたよ」

 これで高校が同じとかなら気まずかったかもしれないけど、幸いにも違う高校に進学したのでもう会うことは……たぶんないかな。

「ふ~ん」

 さっきまでの笑顔を引っ込めて俺を見つめる藍那さんだったが、俺は彼女の背後にある棚から本が落ちそうになっているのが目に入った。

 まさかと思った時には既にガタッと音を立て、かなり厚めの辞書が落下した。

「危ない!」

「えっ?」

 藍那さんの肩に手を置き、そのままこちらに引き寄せるようにした。

 驚いた声を上げた藍那さんだが、すぐに鈍い音を立てて地面に辞書が落ちたことで何が起きたのか察したようだ。

 至近距離にある俺の顔と落ちた辞書を交互に見つめる藍那さんに、何もがなさそうで俺は安心した。

 あの強盗が持っていた刃物に比べれば辞書の殺傷力なんてなまぬるい、それでも頭にでも落ちてしまったら当たり所によっては危なかったかもしれない。

「良かった」

 安心したのもあってそんな声が漏れた。

 すると、藍那さんはいきなり身を震わせ始めた。

「……やっぱりだ間違いない……この手だ……あはっ、あははははははっ!」

 突然笑い出した藍那さんから俺は離れた。

 誰だっていきなり近くに居る女の子が脈絡もなく急に笑い出したら驚くに決まってる。

「ごめんね。助けてくれた隼人君がかっこよくてうれしさから笑いが出ちゃったの」

 いきなり笑い出してかっこいいって言われても嬉しくない……って、割と長めに話をしていたせいかもうすぐ昼休みが終わってしまうぞ!?

「藍那さん! もう昼休み終わるから戻らないと!!」

「え!? うわほんとだ! 戻ろう隼人君!!」

 思ったよりも話し込んでしまったけど、藍那さんとの会話は楽しかった。

 そろそろ昼休みが終わるというのもあって他の生徒の姿はそこまでなく、俺と藍那さんがそろって廊下を急いで歩いているのも特に誰も気に留める人はいなかった。

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