1 新入生歓迎会殺人事件(5)
数日後、入学式兼新入生歓迎会当日。外は
俺は机の上で果てていた。
「おー、死にかけてるなー」
声の主は、ユキだ。相変わらずの甘いマスク。俺と同じ制服なのに、雑誌から切り抜かれたみたいな二枚目。クラスの女子の視線が痛い、流れ弾で当たって来るんだ。
「なんか用か?」
「廊下から死に損ないが見えてちょっかいかけにきた」
うん、わかりやすい理由だ。
「暇なら手伝え」
俺はユキに自分のスマホを渡す。画面は作り立てのSNSアカウントだ。部活動の紹介文を写真として表示、タップで拡大とこれといって複雑さはないが見やすい作りだ。
「チェックしてくれ。ようやく終わった」
「
「作ったよ、作りましたよ!」
おかげで大変だった。三十近くある部活動、代表者を一人一人当たって紹介文を
と、いうわけで最後のページが出来上がったのは、今さっき。二次元コードはもう印刷して拡大コピーしている。
それにしても、結局ほぼ一人でやったな。
他のクラスはまだイベント補助委員とやらは決まっていないのか? 『聖母』は、放課後うろうろして何もせずに帰っていくだけだし。というか、他のクラスは面倒くささに感づいて、とりあえず歓迎会終わるまで決まってないふりして待ってるんじゃないか?
「うん、よくできているんじゃない? ってか、最後の生物部だけやたらページ多くないか?」
ユキは確認を終えてスマホを返す。
「ああ、それが最後な。紹介文なのに、論文持ってこられてびっくりした」
生物部、ただの文化部と侮ること
運動部系は、大体部活動の実績が書かれているだけなのに、文化系は妙に熱のこもった内容だったりする。
「まー、問題ないんじゃないか?」
「あんがとよ。ってか、ユキ、今日は部活ないんだろ、帰らないのか?」
俺の言葉にユキは顔を曇らせる。ユキの手には震えるスマホ。
「ナイスタイミング。新入生歓迎会、出ろってさ」
今まさに催促の連絡が来たのだろう。ユキは、憂鬱な顔をしている。
「あー」
俺は瞬時に納得した。ユキは剣道部で特待生だ。あの見た目なら、ユキ目当てで剣道部に入ろうなんて思う
「がんばってなー」
「そっちこそ」
そうなのだ。俺もこれで仕事は終わりじゃない。
部活動紹介にやってくる部活の受付をすることになっている。
いきなり昨日言われて驚いた。放送部が取り仕切ると思っていたのにさ。
でも、決まったものは仕方ない。
さてと、俺も動かねばと──。