つぎラノ2024文庫部門4位『週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~』羽田宇佐先生スペシャルインタビュー

「次にくるライトノベル大賞2024」文庫部門4位『週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~』。友達でも恋人でもない関係でつながる、気まぐれな女子高生の日常を綴った話題の百合作品はどのように執筆されのか、著者の羽田宇佐先生に伺ってみました!

──「次にくるライトノベル大賞2024」上位入賞おめでとうございます! まずは今の感想をお聞かせください。

いつも応援してくださっている皆様に、前年の第8位からランクアップして第4位という結果をご報告でき、とても嬉しく思っています。「次にくるライトノベル大賞」に「週に一度クラスメイトを買う話」が参加できる最後の年でもあったので、結果を知ったときはテンションが上がりました。投票してくださった皆様、本当にありがとうございました!

──『週に一度クラスメイトを買う話』は、ファンタジア文庫内レーベルのGirlsLineの一作としても数えられているように、宮城と仙台の関係性を主軸とした百合作品です。そんな百合作品の中で、羽田先生が大好きな作品をお教えください。

マンガだと『青い花』や『やがて君になる』、『私の百合はお仕事です!』、『きたない君がいちばんかわいい』などが好きですね。私は主人公にならないタイプのキャラクターを好きになることが多く、作中で好きなキャラクターのメイン回がなかなかやってきません。そういったタイプのキャラクターがずっとメインの作品を読みたいという気持ちを反映して、「週に一度クラスメイトを買う話」は宮城と仙台、二人のことだけを書く小説になっています。

──本作の発端は、そもそもライトめの百合を目指して書かれ始めたとのことですが、ディープな展開になっていったのはどういった理由からだったのでしょうか?

『週に一度クラスメイトを買う話』は、普段百合を読んでいる方にはもちろん、百合に興味がない方にも読んでもらえる物語にしたいと思っていたので、序盤は百合という点よりも、スクールカーストの下位が上位に命令することやその命令の内容にフォーカスした作りになっています。この部分の宮城と仙台の関係性が受け入れられるようなら、二人の関係の変化に合わせて踏み込んだ描写をしたいと思っていたので、少しずつ今のような形になっていきました。

──本作を執筆する上で、特に意識していることは何ですか?

書く上で特に意識しているのは、リアル感と読みやすさです。宮城と仙台は、この世界のどこかに存在していると感じてもらえるキャラクターとして書きたいと思っているので、二人をリアルに感じてもらえるような台詞や描写を意識しています。また、一人称で視点が交互に変わっていく作品でもあるので、宮城が宮城に見えること、仙台が仙台に見えることも気にしています。特に視点変更したあとの冒頭部分は、思考や口調など二人が二人らしく見えるように何度も読み返して書き直すことも多いですね。

──宮城と仙台、それぞれのキャラクターについて、作者だからこそ感じる魅力とめんどくさいところ、それぞれお教えください。

宮城の面倒くさい部分は、仙台に対して驚くほど素直にならないところや、言い訳に言い訳を重ねているところかなと思います。なかなか良さが伝わらないタイプなのですが、ここぞというときは仙台の気持ちを考えて行動できるところが彼女の良いところなので、不機嫌で無愛想な宮城の不器用な優しさを見ていただければ嬉しいです。仙台は大学生になってから、宮城との関係にばかり目がいっている部分が面倒くさくもあり、厄介なところでもあるかなと思います。同時に宮城へのこだわりが仙台の魅力でもあるので、宮城に対する優しさや行き過ぎと思えるくらいの行動を見ていただければと思います。

──第4巻で高校生編がひと段落し、第5巻からは大学生編がスタートします。第4巻までの中では、どういった展開が特にお気に入りですか?

第1~4巻の中で一つ気に入っているシーンを挙げるなら、第4巻の卒業式の後です。ボイスドラマにもなっているのですが、高校生編で一番書きたかったシーンで、一つの区切りとしてここを書くことを目指していたということもあって思い入れがあります。書き下ろしに限定すると、第5巻の新生活に繋がる第4巻の番外編も気に入っています。

──大学生編は現在まだまだ進行中ですが、その中でも特に推したいポイントをお教えください。

宮城と仙台の変化です。二人とも内面はもちろん、外見も変化していきます。高校時代は身に着けなかったものを身に着けたりするようになるので、少しずつ変わっていく気持ちとともに今までとは違う二人を楽しんでいただきたいですね。高校時代はほとんどのシーンが宮城の部屋だったのですが、大学生になって二人で部屋の外へ出かけることも増えるので、外での二人も見ていただければと思います。

──では最後に、今回投票してくださった読者に、そして今回のランキングを機に本作を新たに知った読者へのメッセージをお願いします。

いつも応援ありがとうございます! 皆様が応援してくださったおかげで第4位になることができました。宮城と仙台は一歩進んで二歩下がり、突然三歩進むような関係ですが、これからも二人を見守っていただけると嬉しいです。そして、「次にくるライトノベル大賞2024」がきっかけで興味を持ってくださった皆様、「週に一度クラスメイトを買う話」は、百合を普段から読んでいる方、そうではない方、どちらにも楽しんでいただける物語だと思っています。宮城と仙台の焦れったい関係にハマっていただけると嬉しいです!

──ありがとうございました!

取材・執筆:太田 祥暉

つぎラノ2024受賞作特集

文庫部門、単行本部門、それぞれ上位5作品をご紹介するとともに、受賞作作家へのスペシャルインタビューを公開中!


次にくるライトノベル大賞とは

「次にくるライトノベル大賞」は、次世代にブレイクするであろうライトノベルを一般読者自らがエントリーし、またユーザーの投票でその頂点を決めるアワードです。

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    週に一度クラスメイトを買う話 ふたりの時間、言い訳の五千円

    著者: 羽田 宇佐   イラスト: U35

    気まぐれな女子高生の日常は、少しずつ変化していく。

    彼女――宮城は変だ。週に一回五千円で、私に命令する権利を買う。一緒にゲームしたり、お菓子を食べさせたり、気分次第で危ない命令も時々。秘密を共有し始めてもう半年経つけれど、彼女は「私たちは友達じゃない」なんて言う。ねぇ宮城、これが友情でないのなら、私たちはどういう関係なの?

     あの人――仙台さんでなければいけない理由は、今も別にない。私のふとした思い付きに彼女が乗った、ただそれだけ。だから私は、どんな命令も拒まない彼女を今日も試す。……次の春、もし別のクラスになったとしても彼女はこの関係を続けてくれるだろうか。今は、それがちょっとだけ気がかりだ。

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    週に一度クラスメイトを買う話 ふたりの時間、言い訳の五千円 2

    著者: 羽田 宇佐   イラスト: U35

    淡くもつれた関係は、高校最後の夏を前に揺れ動く――。

    長い休みは憂鬱だ。一人でいることには慣れているけど、一人でいることが好きなわけじゃない。高校最後の夏休みは、みんな忙しい。仙台さんとだって、会うのは”放課後”だけというルールだ。なのに彼女は『家庭教師になってあげる』なんて提案してきて。……キスしたこと、気にしてるのは私だけなの?

     つまらない。面白くない。キスしても何も変わらない宮城に、もうすぐ来る長い休みに、そう思う。だから、宮城に提案した。『休み中も宮城に会いたい』そう思っているのかは自分でもわからないし、距離を置くべきなのはわかっている。……でも、本当は彼女から返事が来ることを、私はたぶん期待している。

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    週に一度クラスメイトを買う話 ふたりの時間、言い訳の五千円 3

    著者: 羽田 宇佐   イラスト: U35

    曖昧になるルールと踏み込めない距離。この関係の行く先は――?

    夏休みが終われば、全て元通りになると思っていた。曖昧になったルールも、仙台さんとの距離も。なのに、彼女だけが未だに変で、「同じ大学受けたら?」なんて言いだす始末。そんなことを言われても、卒業後も一緒にいる理由はないし、彼女の将来に興味はない。そう、全く、少しも、私は興味ないのだ。
     
     夏休みが終われば、進路の話になるのは自然なことだ。例えば宮城に、私と同じ大学への進学を提案してみたり。もちろん、宮城がそんな未来を考えていないことは知っている。それでももし、彼女が私と一緒の未来を少しでも考えてくれたら――そんなことを期待する私はやっぱりずるいのかもしれない。

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    週に一度クラスメイトを買う話 ふたりの時間、言い訳の五千円 4

    著者: 羽田 宇佐   イラスト: U35

    巡る春に、迫る期限。二人が選ぶ未来とは――?

    春になったら、この関係は終わりだ。でも、今はまだ簡単に会えるし、会う理由も作れる――たとえ冬休みであっても。仙台さんに会いたいと思うことも、触れたいと思うことも、全部ルールを最初に破った彼女のせいだから。だから責任をとってもらわないと困るのに……仙台さんはまだ何も言ってこない。

     春になったら、この関係は終わりだ。たとえ近くの大学に進もうと、今と全く同じではなくなる。それでもこの先の未来で、隣に宮城がいてほしい。今そう願ってしまうことは契約違反だろうか? その問いの答えを、私は彼女の口から聞きたいと思ってしまっている。「――宮城は私に会いたくない?」

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    週に一度クラスメイトを買う話 ふたりの秘密は一つ屋根の下 5

    著者: 羽田 宇佐   イラスト: U35

    「おはよ」今日も彼女の声から始まる

    春になり、私には”できないこと”が増えた。ルームメイトになった宮城との距離は、前よりずっと近いはずなのにどこか気まずくて。触れることも、キスすることも、会話さえもままならない。これまでの当たり前を取り戻すために、五千円に代わる新たな言い訳が――新しいルールが私たちには必要だ。

     春になり、私には”分からないこと”が増えた。使われていなかった五千円とルームメイトになった仙台さん。その事実は、当たり前のように解釈していたこの関係を、180度違うものに変えてしまって。どうしてあの時、仙台さんは――今更湧き上がる疑問の答えを、私は知りたいのかどうかも分からない。

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    週に一度クラスメイトを買う話 ふたりの秘密は一つ屋根の下 6

    著者: 羽田 宇佐   イラスト: U35

    「行ってきます」特別じゃない、ふたりの休日。

    ルームメイトとは言えないことをしたあの日から、宮城が家に帰ってこなくなった。行先は分かっている。捕まえに行くべきだとも思う。それなのに、あの日宮城に触れて自覚してしまった”認めたくない感情”が、私の足を重くする。本当に、宮城はいてもいなくても私の感情を左右する、面倒くさいヤツだ。

    早く帰った方がいい。それは分かっているはずなのに、帰らずにいた時間が仙台さんへの会いにくさを加速させている。その一方で『仙台さんは今日どう過ごしたのだろう』なんて考えているのもまた事実で。自分で作った距離は自分で縮めなくてはいけない――分かっているけど、今日も私は帰れそうにない。

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