1 第三迷宮高等専門学校(6)

 翌日、朝食を寮の食堂でとる。ここでの食事もこれが最後だ。高校生男子相手なので質より量なメニューだったが、今日から自炊することになるのか。

 調理器具とかないし、当分コンビニ弁当かな、などと考えながら食べ納めとばかりにおかわりをした。

 残っている身の回りの荷物を、探索用のバックパックとボストンバッグに詰めて寮の部屋を出た。鍵をキーホルダーから外し寮監に渡す。

「おせわになりました」

 最後に挨拶をしてバス停に向かった。

 バス停で待っていると対向車線に逆回りのバスがやってきた。新学期からはあれに乗って登校することになるのか、とぼんやり眺めていたら迷高専の制服を着た女子が降りてきた。

 女子のネクタイは青に白の細い一本線だったので、サポートコース医薬科の二年生のようだ。サポートコースの中で頭が良くないと進めない医薬科。

 医薬科だけ一般科目のレベルが違うから、JDDSとしては専門の学校としたいのだけど、治療師系スクロールの絶対数が少なすぎて学生に与えることができない。そのため専門校を作っても卒業して治療師になれるのは毎年一人か二人。それじゃあ専門校を作る意味がないので設立は見合わされている。

「さすが青ネクタイ。授業はなくとも春期講習があるんだよな」

 迷高専の学生は制服を見ると、どこ校のどのコースの生徒かわかるようになっている。

 第一校は、実験的に北海道に作られた。思春期の方がレベルアップが早いということで、第一期は中卒の男子を二十人くらい集めた学校ともいえない状態だった。

 北海道の第一校北一校は現在規模は大きくなったが、高専とそうで無いコースがある学校だ。

 高校卒業資格が取れるコースの定位員は四十名と少なけど、紺色のブレザーの制服がある。

 高専じゃあない方は探索者育成専門学校となっていて、こっちは制服はない。

 第二校は首都である東京……に作りたかったようだが、ちょうどいいダンジョンがなくて千葉県にできた。千葉県の第二校千二校はうちと同じ高専だけど、探索者コースと商業コースしかない。制服は同じブレザーで灰色だ。大三校うちのブレザーは黒だった。

「四校の臙脂色や五校の茶色じゃなくて三校が黒でよかった」

 二校の灰色でもよかったかな、なんて考えながら学校へ足早に向かっていく女子の後ろ姿を何気なく見ていると、自分が乗車予定のバスがやってきた。


 新しい住居は築四十五年の木造二階建てのアパートである。昭和のアパートが現存していたのには驚いたが、その家賃にも驚いた。敷金礼金なし、エアコン、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ完備で電気水道の光熱費込の月三万円である。ちなみにガスはない。オール電化と言えば聞こえがいいが探索者向けのマンスリーアパートに変更した時、撤去したと学校事務室の担当が教えてくれた。

「学校ができる前のことですが、大阪ダンジョンがスタンピードを起こしたことで一時期住民が一挙に減ったんです」

「だから家賃が安いんですか」

「まあそれもありますが未制覇ダンジョン周辺は、スタンピードの危険性があるってことで固定資産税が安いんですよ。ここは大阪ダンジョンも近いですから」

 住むには不安があるということで、この周辺の地主はダンジョンに通う探索者が借りることができる、マンスリータイプの賃貸物件へと変えていったという。

 敷金礼金がないのはJDDSが一括借り上げしていたり、物件によってはJDDSの所有だったりするかららしい。ちなみにこのアパートはJDDSの所有なので迷高専生である俺が寮代わりに借りるため、保証人は不要だった。

「未制覇ダンジョンがスタンピードを起こした際は、仮免許保持者も徴収されますしね」

「それ入学時に契約書交わしたやつですよね」

 周辺にダンジョンが多いことで一般住民は減るが、探索者は増える。

 そして緊急事態時は、近所に住んでいる探索者は招集される。拒否することも可能だけど。

「いざというときはモンスターを倒してもらえるということで、探索者や迷高専の学生相手に貸すと国から補助金も出るんです。この家賃は探索者価格ですよ。一般とは金額が違いますからね」

 と、家賃の安さの秘密を教えてもらった。

 国からの補助金がいくらかは教えてもらえないが、それがあるから学校から学生に補助金が出せるようで、月額は五万円はありがたかった。

 家賃と交通費を差し引いてもすこし余る掘り出し物件だと思ったら、そういうカラクリだったのかと納得した。

 寮では朝夕の食事が格安で食べられたから、食費分が嵩む感じになるけれど。

 まあ、ダンジョン周辺はスタンピードのこともあり、火災保険や地震保険だけでなく、ダンジョン保険の加入も必要になってくるのだから、一般家庭は少ない。

 アパートからバス停まで徒歩三分で、しかもバス停のすぐ隣にコンビニまであり、かなり利便性はよかった。


 アパートの鍵を開けて、薄暗い室内に入いる。つい先日まで迷高専の卒業生が入居していたけれど、掃除はされているようで綺麗だった。

 宅配便が届くのは夕方なので、荷解きするのはバックパックに詰めた日用品だけだ。

 アパートは1Kトイレシャワー付きだけど湯船はない。元は六畳トイレシャワーなしの部屋だったが、探索者向けにリフォームした時にトイレとシャワーがついたそうだ。部屋は四畳に縮んだけど、探索者はどうせ寝るくらいだから十分な広さなんだろう。

 備え付けの電化製品はどれもおひとりさま用サイズである。エアコン、洗濯機、電子レンジに小型だが冷蔵庫もついていて非常にありがたかった。

 キッチンというほどの広さはないけど、一口コンロもあり湯は沸かせるのでカップラーメンも作れるし、レトルトカレーも温められる。

 料理もそこそこできるが、調理器具がひとつもないので今はなにもできない。

 帰省したときに、実家で余ってる食器や調理器具なんかを持ってこようと脳内メモをしておく。

 敷金礼金がないのはJDDSが一括借り上げしていたり、物件によってはJDDSの所有だったりするかららしい。ちなみにこのアパートはJDDSの所有なので迷高専生である俺が寮代わりに借りるため、保証人は不要だった。

「未制覇ダンジョンがスタンピードを起こした際は、仮免許保持者も徴収されますしね」

「それ入学時に契約書交わしたやつですよね」

 周辺にダンジョンが多いことで一般住民は減るが、探索者は増える。

 そして緊急事態時は、近所に住んでいる探索者は招集される。拒否することも可能だけど。

「いざというときはモンスターを倒してもらえるということで、探索者や迷高専の学生相手に貸すと国から補助金も出るんです。この家賃は探索者価格ですよ。一般とは金額が違いますからね」

 と、家賃の安さの秘密を教えてもらった。

 国からの補助金がいくらかは教えてもらえないが、それがあるから学校から学生に補助金が出せるようで、月額は五万円はありがたかった。

 家賃と交通費を差し引いてもすこし余る掘り出し物件だと思ったら、そういうカラクリだったのかと納得した。

 寮では朝夕の食事が格安で食べられたから、食費分が嵩む感じになるけれど。

 まあ、ダンジョン周辺はスタンピードのこともあり、火災保険や地震保険だけでなく、ダンジョン保険の加入も必要になってくるのだから、一般家庭は少ない。

 アパートからバス停まで徒歩三分で、しかもバス停のすぐ隣にコンビニまであり、かなり利便性はよかった。


 アパートの鍵を開けて、薄暗い室内に入いる。つい先日まで迷高専の卒業生が入居していたけれど、掃除はされているようで綺麗だった。

 宅配便が届くのは夕方なので、荷解きするのはバックパックに詰めた日用品だけだ。

 アパートは1Kトイレシャワー付きだけど湯船はない。元は六畳トイレシャワーなしの部屋だったが、探索者向けにリフォームした時にトイレとシャワーがついたそうだ。部屋は四畳に縮んだけど、探索者はどうせ寝るくらいだから十分な広さなんだろう。

 備え付けの電化製品はどれもおひとりさま用サイズである。エアコン、洗濯機、電子レンジに小型だが冷蔵庫もついていて非常にありがたかった。

 キッチンというほどの広さはないけど、一口コンロもあり湯は沸かせるのでカップラーメンも作れるし、レトルトカレーも温められる。

 料理もそこそこできるが、調理器具がひとつもないので今はなにもできない。

 帰省したときに、実家で余ってる食器や調理器具なんかを持ってこようと脳内メモをしておく。

 探索者は長期間探索する際も、探索中に煮炊きすることは基本ないので、調理できなくとも問題はない。

 だけど学校ではいざという時のために、サバイバル料理を家庭科で教えられる。

 ダンジョン内で得られる食材もあるし、食材をドロップするモンスターも存在するのだ。お肉なんかはかなり美味しいらしい。

 荷解きといってもバックパックとボストンバッグの二つだけで、すぐに終わってしまった。

 早々にすることがなくなり、なにもないフローリングの上に、ゴロリと寝転ぶ。

「こんなことなら朝一で寮を出るんじゃなかったな。夕方まで学校で鍛錬してればよかったかも」

 放課後や休日は二階層にある鍛錬場が生徒に解放される。迷高専にも部活動があるが通常のスポーツの場合、公式戦に出場することができない。レベルアップしていることで身体能力が上昇しているからだ。

 一年生の間は放課後にダンジョン内で活動する目的もあり、ほとんどの生徒が何がしかの部活に参加する。

 しかし二年度になり探索者コースに進んだものは、次年度の進級を目指してスポーツではなく探索者としての能力アップを目標とした活動に切り替えていく。三年度四年度と進級を目指すため、武術系同好会に入って戦闘能力の向上を目指すからだ。

 同好会なのは顧問がいないから。顧問になれるのは教員免許を持っている教師だけで、教師は探索者免許を持っているものでも、ほぼ探索活動をしておらず、戦闘力については生徒に劣る。そんな状況で顧問を引き受けるものはいない。

 またサポートコースの生産職系の生徒は、ほとんどが目指す生産職系の部活や同好会に所属している。部活というより授業の延長のようだけど、休日も学舎や工房が使用可能なので入り浸っているそうな。

 同好会だけでなく小さなグループや個人での活動であっても、鍛錬場の使用は認められている。

「明日は土曜日か。免許証受け取りまで一週間あるし、学校で鍛錬でもするか」

 早い話が休日だろうと長期休暇中だろうと、お盆と正月以外は使用可能なのだ。

 スクロールの一件のせいでそういう系の参加はできなくなり、一人で鍛錬を行ってきた。放課後に鍛錬場で自主鍛錬をしていたように、帰省まではそれを続けることにするか。

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