ルークと共に暮らし始めて五ヶ月、こちらの世界に来て半年が経った。
私は相変わらず、食堂と病院で働く忙しい生活を送っている。
「それでは、先に行っていますね」
「うん。気をつけて」
玄関でルークを見送った私はリビングへと戻り、のんびりと出かける支度を始めた。
今日はいよいよ、テレシア学院に無事合格したルークとのデートの日なのだ。
ルークは先に家を出て色々と準備をする必要があるらしく、私は今から一時間後に家を出て、待ち合わせをすることになっている。
何日も前から張り切っていたルークが可愛くて、私も今日をとても楽しみにしていた。
「よし、こんな感じかな」
軽く化粧を済ませた後、私は棚にあったピンクの腕時計へと視線を向けた。
この世界に来た時につけていたもので、亡くなった祖母から譲り受けた大切な宝物だ。
汚れたり壊れたりしないよう仕事にはつけていかずにいたため、ずっと棚にしまったままになっていた。今日はせっかくのお出かけだし、久しぶりにつけてみようと手に取る。
「……あれ?」
すると、時間がかなりズレていることに気がついた。そして調整しようと、何気なく竜頭をくるりと回した時だった。
突然、目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。同時に身体が、眩しいほどに光り出す。
――私は、この感覚を知っている。
「えっ、うそ……!」
もしかして、と思った時にはもう、目の前が真っ白になっていて。浮遊感に包まれた私は、あまりの眩しさにきつく目を閉じた。
ゆっくりと目を開けると、そこは少しの懐かしさすら覚える私の部屋だった。
テレビからは、子ども向けのアニメのエンディングテーマが聞こえてくる。
「私、本当に元の世界に戻ってきちゃったんだ……」
――渡り人は急に現れて、急に消える。
そう分かっていたはずなのに、こんなにも早くその日が来るとは思わなかった。しかもそれが楽しみにしていたデートの日だなんて、あんまりだと思う。
「もっと、ルークと一緒にいたかったな……」
ルークの入学式だって見に行きたかったし、遊びに行く約束だってたくさんしていたの
に。
「……ごめんね、ルーク」
きっと、いつまでも待ち合わせ場所に現れず、急にいなくなった私を心配してくれるに違いない。いなくなった後の準備をほとんど終えていたのが、唯一の救いだろう。
もうルークやモニカさんに会えないと思うと、寂しさで視界が涙でぼやけていくのを感じていた私はふと、違和感に気がついた。
……半年も経っていたら、コンビニ払いにしていた電気など止まっているはず。
それに、私は元々マメな方ではないけれど、半年も誰とも連絡がつかなければ、行方不扱いになっていてもおかしくない。
母にこの部屋の合鍵も渡してあるものの、誰かが来た様子もなかった。
慌ててスマホを探せば、充電器に繫がれたままで、すぐに画面は明るくなる。そして画面には十五件の着信履歴と、三十件ほどのメッセージが表示されていた。
「――えっ?」
けれど、何よりも驚いたのはその日付で。
私が異世界へ行ってしまった日から、一ヶ月ほどしか経っていなかった。