2.別れ

 

 

ルークと共に暮らし始めて五ヶ月、こちらの世界に来て半年がった。

 私は相変わらず、食堂と病院で働くいそがしい生活を送っている。

「それでは、先に行っていますね」

「うん。気をつけて」

 げんかんでルークを見送った私はリビングへともどり、のんびりと出かけるたくを始めた。

 今日はいよいよ、テレシア学院に無事合格したルークとのデートの日なのだ。

 ルークは先に家を出て色々と準備をする必要があるらしく、私は今から一時間後に家を出て、待ち合わせをすることになっている。

 何日も前から張り切っていたルークがわいくて、私も今日をとても楽しみにしていた。

「よし、こんな感じかな」

 軽くしょうを済ませた後、私はたなにあったピンクのうでけいへと視線を向けた。

 この世界に来た時につけていたもので、くなった祖母からゆずけた大切な宝物だ。

 よごれたりこわれたりしないよう仕事にはつけていかずにいたため、ずっと棚にしまったままになっていた。今日はせっかくのお出かけだし、久しぶりにつけてみようと手に取る。

「……あれ?」

 すると、時間がかなりズレていることに気がついた。そして調整しようと、何気なくりゅうをくるりと回した時だった。

 とつぜん、目の前の景色がぐにゃりとゆがんだ。同時に身体からだが、まぶしいほどに光り出す。

 ――私は、この感覚を知っている、、、、、、、、、、

「えっ、うそ……!」

 もしかして、と思った時にはもう、目の前が真っ白になっていて。ゆう感に包まれた私は、あまりの眩しさにきつく目を閉じた。

 ゆっくりと目を開けると、そこは少しのなつかしさすら覚える私の部屋だった。

 テレビからは、子ども向けのアニメのエンディングテーマが聞こえてくる。

「私、本当に元の世界に戻ってきちゃったんだ……」

 ――わたびとは急に現れて、急に消える。

 そう分かっていたはずなのに、こんなにも早くその日が来るとは思わなかった。しかもそれが楽しみにしていたデートの日だなんて、あんまりだと思う。

「もっと、ルークといっしょにいたかったな……」

 ルークの入学式だって見に行きたかったし、遊びに行く約束だってたくさんしていたの

に。

「……ごめんね、ルーク」

 きっと、いつまでも待ち合わせ場所に現れず、急にいなくなった私を心配してくれるにちがいない。いなくなった後の準備をほとんど終えていたのが、ゆいいつの救いだろう。

 もうルークやモニカさんに会えないと思うと、さびしさで視界がなみだでぼやけていくのを感じていた私はふと、かんに気がついた。

 ……半年も経っていたら、コンビニばらいにしていた電気など止まっているはず。

 それに、私は元々マメな方ではないけれど、半年もだれともれんらくがつかなければ、ゆくあつかいになっていてもおかしくない。

 母にこの部屋のあいかぎも渡してあるものの、誰かが来た様子もなかった。

 あわててスマホを探せば、じゅうでんつながれたままで、すぐに画面は明るくなる。そして画面には十五件の着信れきと、三十件ほどのメッセージが表示されていた。


「――えっ?」


 けれど、何よりもおどろいたのはその日付で。

 私が異世界へ行ってしまった日から、一ヶ月ほどしか経っていなかった。


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