そうして、わたしは西燕国の王宮に舞い戻った。内界と各国は、水鏡と言われる特殊な道で、一瞬で行き来ができる。水鏡を通って出るとそこは西燕国の神子の宮だった。今世初めて来た場所は、記憶と全く変わっていなかった。
「瑠黎、急な呼び出しにもかかわらず、ありがとうございます」
一人、出迎える者がいた。王宮に留まる可能性があるなら、初めから神子として会いに行く方が後々都合がいい。それならば筆頭神子に話を通しておいた方がいいだろうと蛍火が事前に連絡をして、待ってもらっていたのだ。
蛍火が声をかけ、待っていた神子が顔を上げる。長い黒髪が揺れ、明らかになった顔は無表情だった。黒に限りなく近い紺色の瞳もまた、感情の読みにくい眼差しをしていた。
「蛍火様、一人、この国付きの神子を増やしたいとのことでしたが」
「ええそうです。心配せずとも、役立たずの増員はしませんよ」
もう少し良い言い方があるだろう、と思っていると、蛍火の手がわたしを示し、瑠黎がわたしを見た。瞬間、瑠黎は息を吞んだ。表情の乏しい生真面目な顔が驚愕に染まり、目が大きく見開かれる。
「睡、蓮様……?」
瑠黎もまた、外見は蛍火と同じくらいの年頃に見えるが、すでに二百年以上を生きる神子だ。前世では内界で何度か会ったことがある。
「ご本人です。理由は不明ですが、記憶をお持ちのまま再びお生まれになりました」
「久しぶり、瑠黎」
わたしの声を聞き、瑠黎は我に返った様子で流れるように膝をついた。
「お久しぶりです、睡蓮様」
「ちょっと、瑠黎まで?」
瑠黎も自然に最敬礼をするものだから止める暇がない。蛍火のときと同じように立ってと促すが、こちらは中々立ち上がろうとしてくれない。
「瑠黎、これからわたしがあなたの部下になるんだから」
「部下……?」
無表情に戻った瑠黎は声だけ怪訝そうにする。
「増員の神子は彼女です」
「は?」
瑠黎も「は?」とか言うのだな、とわたしは場違いなことを思った。
「花鈴様も蛍火様もご存じかとは思いますが、陛下の私室へ案内させていただきます」
あの後驚きすぎて固まってしまった瑠黎に、今世のわたしは花鈴という名前で新王の姉であること、弟の様子を見に来たことを明かし、ようやく落ち着いたところで王宮を案内してもらっていた。偽の神子であることは知らせていない。偽装の一端どころか大部分を担ってくれている蛍火のためにも、それだけは瑠黎にもばれないようにしなければならない。
「私室にご案内しますが、少し待っていただくことになるかもしれません」
「どうして?」
尋ねるけれど、瑠黎はそれきり口ごもる。
「瑠黎?」
何かを躊躇うような様子に首を傾げる。新王の姉であるわたしに言いにくいことなのか。
そういえば、とわたしは正門の前で衛兵が気になることを言っていたと思い出す。蛍火と再会したり一気に色々なことが起こって頭の隅に置かれていたけれど、あれが本当なら。
「また新王が失踪したらしい」
そのとき、後ろからそんな声が聞こえてきた。新王という単語に、わたしは歩みを緩めて、前を向いたまま耳を澄ませる。
「ただでさえ頼りないと思っていたが、ますます先行きが不安だ」
「先代王の時代の繰り返しにだってなりかねない。その前は千年も時代が続いたというのに……」
「そもそも百年振りの王だ。苦し紛れに選ばれたのではないか?」
後ろを横切ったのは、文官のようだった。やっぱり新王に対するよくない評判は浸透しているようだ。瑠黎はわたしの問いかけるような視線に、ようやく重い口を開いた。
「実は、陛下はよく部屋からいなくなられるのです。その度にもちろん捜すのですが、今日はまだ見つかっていません」
「自分で、部屋を抜け出していなくなっているということ?」
はい、と瑠黎は歯切れ悪く言う。
勉強が嫌になったから、王になるのが嫌だから、とか逃げ出す理由として思いつくのはこんなところだ。けれど雪那のことをよく知っているからこそ分からない。雪那は元々役人を目指すくらい勤勉で、いつも周りを気遣っていた優しい子だ。そんな彼がそう簡単に物事を投げ出すだろうか。
「瑠黎、新王の評判は些か芳しくないようですね」
蛍火が、先ほどの臣下たちの会話を示して、瑠黎に尋ねる。
「はい。陛下の度々の失踪でさらに悪くなった点は否めませんが、最初から多くの臣下たちの期待値は低い方でした」
「最初から? 何もしないうちから? 『初対面』から?」
わたしの食い気味な問いに、瑠黎は「はい」と頷く。
弟が逃げ出したくなる理由はそれだ、と思った。わたしの不安は杞憂ではなかった。一刻も早く弟に会って、抱きしめて、もうこの王宮で一人ぼっちではないと言ってあげたい。
「わたしも捜す」
「今女官達が捜していますので、お待ちいただければ……」
「瑠黎、人手が増えるのですからいいでしょう」
わたしを止めようとした瑠黎を、蛍火が制した。そのままどうぞと促されたので、わたしは頷いてその場を離れた。
部屋で待ってなんていられない。足早に私室へ向かう廊下から離れ、弟を捜し始めた。とりあえず周辺の部屋を隅まで覗いてみるものの、ありきたりな場所はすでに捜されているはずだ。
弟はもう十五だが、幼い頃は一人になりたくなると、物が乱雑に置かれた物置によく隠れていたのを思い出す。そんな弟が泣き出す前に見つけるのがわたしの仕事だった。そんな子がこの王宮で隠れそうな場所はどこだろうか。王宮内には空き部屋はあっても物置部屋なんてないし……。考え込んでいたわたしは、はっと顔を上げた。
王宮の図書室の一角に、不要なものしか置かれていないため司書すらも滅多に立ち入らない狭い部屋がある。
部屋の扉を静かに開けると、埃っぽい空気に包まれてせき込みそうになった。室内には背の高い棚が右と左両方にあり、古い本ばかりか不要品も雑に詰められている。
誰も来ない部屋の空気、静寂、この部屋に駆け込んだときの苦しさと安堵を思い出す。
大きな木に生い茂る葉で外から室内は窺えず、天気のいい日は木漏れ日が差し込む。大雨が降れば雨粒が窓を叩く音がして、室内がひんやりする。
今日はどんよりと曇っているため日の光もろくに入り込まない。薄暗い部屋の隅の床に、彼は膝に顔を埋めて座っていた。男性としてはまだ華奢な体つき、首筋を隠すくらいの長さの黒髪から細い首が覗いている。
「雪那」
名前を呼ぶと、肩が小さく震えた。声に反応して上げられた顔は細いと言うよりやつれていて、わたしは表情を歪めそうになる。
「姉さん……?」
弟に歩み寄りそっと顔に触れると、雪那は信じられないというように、黄色の目でわたしを見上げる。
「どうして、ここにいるの。簡単に入って来られるような場所じゃないでしょ……? 僕が、姉さんに会えないか聞いても、身分が低いから駄目だって言われた」
「そうね、わたしも同じことを言われて困ってたら、偶然会った神子に素質があるって言われて神子になれたから会いに来られたの」
雪那は、そのとき初めて姉が神子の恰好をしていると気がついたようだ。わたしの青い装束姿をまじまじと見て、「神子に……?」と今度は戸惑ったような表情を浮かべる。
「姉さん、神子になったの……?」
「そうよ。雪那に会いに来たの」
その一言で、雪那の目に浮かんでいた驚きと戸惑いが、溶けていくような錯覚を覚えた。
「もう、一生、会えないかと思った」
張りつめていた糸が切れたように、雪那は力なく笑い、腕を広げた。わたしも腕を広げて迎え入れ、抱きしめ返した。久しぶりに会った弟は、一年前に背を抜かされたはずなのに、小さく思えた。
もう幼い頃のように、雪那が自分から抱きついてくることはなくなっていた。随分久しぶりの抱擁と、力ない笑いは喜べたものではなく、弟がそこまで追い詰められていたことに悲しい気持ちになって、強く抱きしめた。
しばらくして抱擁を解き、雪那と長椅子に座り「ところで雪那」と現状を聞こうとした。
「僕がこんなところにいる理由? ここに来たっていうことは、僕が部屋からいなくなっていることを聞いて捜しに来たんだよね」
雪那は力ない微笑みのままで、わたしが聞く前に質問の内容を当てて見せた。
「そうよ。頻繁に部屋を抜け出していなくなると聞いたけど、どうして?」
責める気はない。ただ心配なのだ。どれだけ雪那の気持ちを考えても、それは臆測に過ぎないから、本人の口から心の内を聞きたい。優しく聞くと、雪那の瞳が翳る。
「姉さん、僕は、王になりたくないよ。……いや、なれないよ」
予想はしていたけれど、弟の後ろ向きな言葉と様子を目の当たりにして、わたしは少しだけ驚いた。と言うのも、雪那は向上心が高く、隣町の小さな学校でいつも一番の成績を収めていた。ゆくゆくはもっと大きな町の学校にという考えを、彼自身から聞いていたほどだった。
「どうしてなれない、なんて言うの? 雪那は役人になるための勉強をしていたじゃない。知識が足りなくても、これから勉強すればなれないなんてことはないわ」
「最初は、頑張っていたよ。王に選ばれたときは戸惑ったけれど、僕がやるべきことは一つだ。戸惑う暇があるなら学ばなければいけない。即位するまでに、少しでも皆の期待に応えるために」
そうだ。弟はそんな子だ。だから、後ろ向きなのには理由がある。
でもね、と雪那はそのときを思い出したような暗い目になった。
「日が経つにつれて、違和感を抱いて、ある日周りの目の意味に気がついたんだ。皆、農民の癖に、っていう目をしているんだ。村にいた役人がよくそんな目をしていた。臣下たちは、僕が農民出身だから期待していないんだ。誰も僕を望んでいない。……部屋を抜け出して歩いていると彼らが僕に気がつかずに話していたんだ。僕は千年王のような王にはほど遠くて、どうせ同じ農民出身だった先代王のようにしかなれないだろうって。皆、百年振りの王が農民で落胆している」
雪那は、もうわたしを見ていなかった。覇気が欠片もない胸の内をじっと聞いていたわたしは、思わず雪那が口にしたある単語を繰り返してしまう。
「千年王」
心臓がどくりと鳴った。表情も少し強張ったかもしれないけれど、雪那は床を見つめたまま気がつかず「そう」と頷く。
「姉さんも知ってるよね。この国を千年にわたって治めた伝説の王だ」
神に選ばれた各国の王は、神より不老性を授けられ、理論上はいつまでも国を治め続けることが可能だった。しかし人の王は、人ゆえに度々道を踏み外す。欲に溺れ、悪政を行い、その度に民の反乱、臣の裏切りに遭ってきた。
けれど二百年前までこの国を治めていた千年王だけは違う。どの国も長くて七百年という記録しかない中、治世千年の記録を作りながらも、神にただ一人王位の返上を許され自害したと伝わっている。その王の築いた時代は千年王国と呼ばれ、他国にも伝説の一時代と轟いているという。
「歴史に詳しくなくても、誰もが知っている素晴らしい時代。この国の誇りで、理想の時代だよ。政策だけでなく、その王の神秘の力はこの国の大地を豊かにした。臣下たちはその輝かしい時代と千年王のような王の再来を望んでいるんだ」
王の持つ神秘の力は、神子のそれより遥かに大きい代わりに国に依存する。国の中であれば一瞬で移動でき、大地を豊かにする。王は国そのものなのだ。
「僕なんか、見てもらえないはずだ。僕自身そのようになれるとは思えないし、千年どころか、即位前から望まれていない身分の僕が王になるべきじゃないよ」
「それは違うわ。千年王も元は農民だったのよ」
あまり知られていないことだけれど、と付け加えたわたしの言葉に、雪那は「本当に?」と信じられないことでも聞いたような反応を見せた。
「……いや、たとえ本当だとしても、僕にはその王のような素質があるはずがないよ」
雪那はまた自らを卑下し、俯いた。
「雪那……」
そんな弟の様子に、わたしは唇を噛む。
二百年の時を経て復活している身分差別と、前世のわたしの時代に複雑な思いを抱いている弟の懸念を吹き飛ばしたい。励ましたいのに、すぐに言葉が出てこない。
でも、何も言わないわけにはいかない。雪那をどうにか前向きにさせなければ、彼を待つのは暗い未来だ。王は自ら王を辞めることも死ぬこともできない。王を辞められるのは民に討たれて死ぬときのみ。千年王は特例だ。
雪那は今、出身から立派な王にはなれないと思わされている。何を言えば今の雪那の心に響くだろう? わたしが知っている中で理想の王と言えば、例えば『彼』のような──。
「……雪那、恒月国の王が今治世何年なのか知っている?」
蛍火が、紫苑がまだ生きている、と言っていたことを思い出した。そして、わたし自身が今世で少しだけ耳にした隣国の王の評判を。
「うん。もう六百年以上になる。恒月国王も、長い時代を築いている王だ」
「じゃあ、彼が王になる前は商人であったと知っている?」
「え……?」と雪那が顔を上げた。驚いている。
恒月国は、先代の王が恒月国史上最悪の王と呼ばれ、最悪の時代を作ったと言われている。今の王が立ったときには、国土は荒れ秩序も何もなかった。そんな状態の国を立て直した豪傑と呼ばれる彼もまた、六百年経った今では、元の身分など自国の民にすら伝わっていないだろう。
「商人も平民よ。職業的な地位はこの国でも恒月国でもあまり変わらなくて、決して高いとは言えないし、政治に関わる職業じゃない」
でも、恒月国は今なお時代の全盛期にある。雪那に必要な生きた実例だと言えた。
「問題は生まれや身分ではないわ。どんな国にしたいのかという将来像が頭にあって、そのためにどれだけ努力できるかよ。政治経験や知識のある貴族出身であっても数年で崩御した王は過去に多くいる」
もちろん、生まれや身分で最初の苦労の度合いは異なるだろう。けれど、長い時代を築くなら、最初のそんな期間は誤差のようなものだ。最も重要な点は、知識の先にある。
「雪那は、この国をどんな国にしたい?」
問うと、雪那は困った顔をした。何とか答えようと考えているのが側から見ていて分かるが、口を開く様子はない。
「じゃあ、どうして役人になろうと思ったの?」
わたしは質問を変えた。雪那は元々役人を目指していた。自分から言い出したことなのだから、理由があるはずだ。すると雪那は今度は少しだけ間をおいて、口を開いた。
「姉さんや、生まれ育った村の人たちが幸せに暮らせるようにと思って。……村に来る役人が、村の人たちに身勝手をしていたのを見てきたから。僕でも、大きな学校に行って良い成績を収めれば役人になることができる。だから、僕は役人になって、皆が理不尽な目に遭わずに暮らせるようにしたかった」
言ってから、「でも、これは役人になるために思っていたことであって、王様は同じじゃいけないでしょ?」と小さな声で言う。
「最初はそれでもいいわよ。国に暮らしている人の事を思っているのは同じでしょ?」
わたしは、少しでも不安を拭えるよう、雪那に微笑みかけた。
神子になって聞いた秘密のことだと言い置いて、わたしは雪那に言う。
「西燕国ではここまで三代続けて農民が王に選ばれていると知っている? そう、千年王も含めて。これは偶然ではなくて、そのとき国に必要な素質を持つ人が王に選ばれるの。だから──農民生まれの雪那にしかできないことがあるから、選ばれたのよ」
「僕にしか、できないこと……?」
わたしは、雪那が役人を目指していた理由を聞いて、そんな考えを持つ彼だから王に選ばれたのかもしれないと思っていた。雪那は昔から周りの人をよく見ている。人のために一生懸命になれる弟に誇らしさを覚えたほどだ。けれど一方で、懸念が生まれた。
ずっとその考え方でいるのは、駄目だ。弟の手前、顔が強張るのを堪えたけれど胸が苦しくなる。弟の考えを否定したいのではない。けれどこのままでは雪那のためにならない。
家族は、いつまでもこの世にいてくれはしない。
王は、通常の人間とは異なる時間を生きる孤独な存在だ。たった一人だけ、伴侶と望む者がいれば、即位の際に受け取る特別な指輪によって死ぬまで共に生きる存在を得られるけれど、雪那に今後そういう人が絶対現れるとは言い切れない。
だから家族のために、知る人のためにと、身近な人間を心の支えにすると、彼らがいなくなったときに、大きな喪失感に囚われることになる。
村の人たちはやがて死んでしまう。神子になる資格のないわたしも、百年と経たない間に死んでしまう。雪那とずっと一緒にいることはできないのだ。そうして雪那が王として心の支えにしている人間が皆死んでしまったあと、雪那は苦しむことになる。
かつてのわたしがそうだったように。
「まだ、雪那は本当の評価を受けていないんだから、これから認めさせてやりましょう」
雪那の目を真っ直ぐ見て言うと、雪那は控えめに頷いた。
雪那が出身や身分に対する偏見を吹き飛ばすくらいの王になるために、この三年で何ができるだろう。側にいることも、知識の面でさりげなく助けることもできる。でも根本的なところが問題だ。
どうすれば、雪那に自信を持ってもらえるだろう。今、わたしの言葉はこの子の心にどれくらい響いただろう。きっと、『姉が言った言葉』以上の効果はない。わたしはもう王ではなく、王であった前世を明かすつもりもない。何より雪那と同じように悩みながらも脱却できなかった自分に何が言えるのか。
わたしより、そう、紫苑のような王の言葉がきっと今の雪那には必要なのだ。
『言いたい奴には言わせておく。俺がこの国を良くすれば、文句もないだろう』
即位当初、わたしとは異なる理由から王宮内に味方が少なかった彼は言った。
雪那が真っ直ぐ前を向いて歩いていくためには、味方も道標も足りない。道標にはなれなくても、わたしがせめて側で守ってあげなければと、不安が消えない弟の目を見つめて決意を固めた。
雪那と部屋に戻った後、わたしは神子の宮の内界に繋がる水鏡の前で蛍火と向き合っていた。
蛍火は、弟が本当に助けが必要な状況だったら、わたしを三年限定で西燕国の国付きの神子にしてくれると言った。国付きの神子は、王の在位中に辞めることもあるから、三年後に役目を辞したところで不自然ではない。
答えはもう決まっている。
「蛍火、わたし、三年力を尽くすわ」
真剣な目で言うわたしに、蛍火は無言で何かを差し出した。持ち運びできるくらいの小さな手鏡だった。「これは?」と受け取りながら尋ねる。
「私の力で内界と繋がるようにしてあります。移動用ではなく、連絡用です。定期的に状況報告をお願いします。何かあったときもこれに呼びかけていただければ、私に声が届きます。決して無理はせず緊急時は迷わず連絡してください」
水鏡を通り抜ける間際、なぜかもう一度振り返ってから、蛍火は内界に戻った。