MF文庫Jライトノベル新人賞 第20回 最終審査結果発表のお知らせ

MF文庫J

 いつもMF文庫J書籍をご愛読いただき、誠にありがとうございます。

 弊社のシステム障害の影響により、MF文庫Jライトノベル新人賞サイトが閲覧できない状況のため、以下にて第20回の最終審査の結果を発表いたします。

 今年で第20回を迎えたMF文庫Jライトノベル新人賞では、第一期予備審査404作、第二期予備審査457作、第三期予備審査456作、第四期予備審査564作、合計1881作と、多数の応募をいただきました。
 ご応募いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
 第一期~第四期を通じて佳作に選ばれた3作品につきまして、志瑞祐先生、鈴木大輔先生、花間燈先生に審査いただきました。

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【最優秀賞】
『魔法使いの孤』茶辛子
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【優秀賞】
『冬めく。』あすとろのーつ
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【佳作】
『ツギハギ事象の欠落人形』雨谷夏木
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総評

 MF文庫Jライトノベル新人賞も節目となる第20回を迎えることができました。今回も無事、1881作の熱い力作のご応募をいただきましたこと、応募者の皆さまに心よりお礼申し上げます。またご多忙のなか、審査にご参加いただきました先生方におかれましても誠にありがとうございました。一つ一つの作品に対する理解度が高く、そして長所、課題や改善点においても議論された審査会はとても充実したものになりました。

 早いもので今回で20回目の新人賞開催となりました。おかげさまで、これまで100作を超える受賞作の刊行、そして数多くの才能の芽、ヒット作を創出して参りましたが、第20回においても計3作品の受賞作を選出させていただき、刊行する運びとなりました。
 昨年よりMF文庫Jは“見つけよう、キミのおもしろい!”という新たなレーベルキャッチコピーを定めさせていただきました。まずは読者の皆さまに見つけていただき、そして読んだ際にその面白さを誰かに伝えたくなるような作品作りをしていきたい、というテーマ性になります。今回の受賞3作品においても、皆さまが誰かと面白さを語りたくなるような作品になると編集部一同で自負致しておりますので、刊行を楽しみにお待ちください。

 すでに募集が始まっております第21回MF文庫Jライトノベル新人賞におきましてはシステム障害により皆さまにご面倒をおかけしている部分もございますが、何卒、ご応募をお待ちしております。

審査員講評

志瑞祐先生

 新人賞をご受賞された皆様、まずはおめでとうございます!
今年はMF文庫Jも20周年。一緒にライトノベル業界を盛り上げていきましょう。

 さて、今回の受賞作は三本と、数としては少なめでしたが、いずれも個性のある作品で、楽しく読ませていただきました。
 最優秀賞の『魔法使いの孤』は、魔法をテーマとしたジュヴナイル。所謂バトルもののライトノベルとは少し違う、ジュヴナイル作品であることに自覚的な意欲作です。いいですよね、ジュヴナイル。ただ、ライトノベルの新人賞に投稿するためか、まだライトノベル的なコードや作法に寄せている印象を受けたので、そこは気にせず、作者さんの書きたい方向にもっと舵を切ってもいいのかなと思いました。

 優秀賞の『冬めく。』は、滅びゆく世界を旅するポストアポカリプスもの。主人公とヒロインの綴る旅のエピソードが、楽しいのにどこかもの悲しく、ラストの展開の感動にしっかり繋がっていました。涙腺にくる…。

 佳作の『ツギハギ事象の欠落人形(リビオドール)』は、人形をテーマにしたバトルファンタジー。主人公の設定や戦い方など、物語の随所に個性的な設定やアイデアが盛り込まれており、光るものを感じました。ただ、設定が煩雑なところや、展開に詰めの甘い箇所はあったので、そこはしっかり改稿で直していきましょう。

 今回、審査をしていて感じたのは、スケールに気を配りましょう、ということです。小説には、作品のテーマ、物語に合ったスケールがあります。壮大なファンタジーを期待していたら、意外とミニマムな話だった……とかだとがっかりしてしまいますし、逆にテーマに対して壮大すぎる世界観をもてあましてしまうのも、あまりよくありません。これから作品を応募される方は、扱うテーマ、物語にちょうどいいスケール感は、どのくらいなのか、意識して執筆してみてください。

鈴木大輔先生

 新人賞受賞者のみなさま、この度はまことにおめでとうございます。この先は予期せぬ幸運と、想像だにしないアンラッキーがみなさまを待ち構えていることでしょうが、狭き門を突破したみなさまであればきっと乗り越えられることでしょう。ささやかながら激励の言葉を贈らせて頂きます。がんばってください。

 総評について。
 受賞作三本。数の上では寂しい結果となりましたが、今年もバラエティーに富んだ作風の応募作を審査することができました。いずれの受賞作も、それぞれに優れた着眼点で書かれた小説であったと思います。

 その中でも最優秀作に選ばれた【魔法使いの孤】は、最も文章がよく整理され、誤字脱字も少なく、またプロットの設計が整理された――言い換えれば、最も良く推敲のされた作品でありました。さらに付け加えるなら、審査会開始時における三作品の獲得票数は、まったくの同点でした。激論の末、新人賞レースの行方を決したのは、作品応募時の段階における推敲の差であった、と言えます。

 推敲を重視してください。書籍化する段階ではもちろんのこと、新人賞に応募する段階でも、そのまた前の段階でも。自分が書いたもの、書いているもの、書こうとしているものを見つめ直す作業は、必ず作者の利益になります。

花間燈先生

 受賞された皆様、この度はおめでとうございます。
 心血を注いで書き上げたそれぞれの玉稿、今回も楽しく読ませていただきました。

 講評としましては、今年は設定の部分で作りの甘さが目立つ作品が多かったかなという印象です。具体的には設定の練り込みが足りないせいで物語の展開に説得力がなかったり、世界観にそぐわない単語が急に出てきてノイズになってしまったりと、審査員の間でも設定に関する指摘が多かった気がします。どの作品も何をやりたいのか明確にわかる点は好印象でしたが、技術が追い付いていないこともあり、描きたい世界を表現しきれていないと感じる場面がありました。

 反面、キャラ同士の台詞の掛け合いは巧く書けていたり、中二病チックな武器やネーミングが格好良かったり、文章力は未熟なものの作品のアイデア自体は面白かったりと、それぞれに光るものがあった点はさすが受賞作といったところでしょうか。特に物語の終盤部分に関しては各作品とも作者のやりたいことが前面に出ていて、なんなら終盤だけ一気に本文のクオリティが上がったりして、新人特有の若さと熱意を感じてニヤニヤしてしまいました。

 色々と書きましたがここからが作家としてのスタートラインです。今後は自らの長所を伸ばしつつ、弱点は克服して着実にスキルアップしていってほしいと思います。

最優秀賞 『魔法使いの孤』茶辛子

作者コメント

 初めまして、茶辛子(ちゃ がらし)と申します。
 はじめに編集者の方々、拙作を審査してくださった方々、その他この作品に携わった全ての方々に感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 世の中の作品に触れるたび、どれもこれもが面白く輝いて見えます。
 メールで受賞の知らせを聞いた日から、達成の喜びを嚙みしめるよりも自分自身のヘキだけで構成されてしまった作品を「面白くしないと!」の一念で動いておりました。
 書店では二次元化された文豪作家書影の作品が並ぶ昨今ですが、あれら名作と自分の作品が同じような価格帯で並び売られるとは、いや並んでしまうとは、これはもう大変なことです。私は髪の毛をむしる回数が増えました。
 子供のころから余裕のある作家像に憧れていたはずなのですが、憧れの分だけ実態は離れていくようです。よし書こう、と机に向かっている時間の割には進みが遅く、必死に書いた文章ほど読みにくい。世の面白い文章を読むと焦燥し、ぼーっとしている場合ではないとスマホを壁に投げ刺す。つまりは未熟であると痛感させられる日々です。

 それでも今回名誉ある賞を頂けたからには、己の不足を言い訳とせず、世の作品に負けないほど面白い作品を目指し精進し続けようと思います。
 ぜひに、これからよろしくお願いいたします。

審査員コメント(鈴木大輔先生)

 総じて作り込みが甘い。作者の都合で物語を振り回しすぎているきらいがある。

 たとえるなら──どんな料理を調理しようとしているのかは理解できるし、素材選びも悪くないのに、調理法も下ごしらえも盛り付けもピントがズレているような。
 逆にポジティブに考えるなら、素材選びの勘所は悪くないわけだし、語り口も軽妙、磨けば光るものを持っていると判断した。

 また総評でも書いたとおり、受賞作三本の中で、この作品がもっとも推敲された形跡が見受けられたのも好印象だった(それでもまだまだ推敲は足りていないが)。最優秀賞を受賞した流れは当然と自負している。

■優秀賞 『冬めく。』あすとろのーつ

作者コメント

 MF文庫Jは、僕が一番好きなレーベルです。その文庫で栄誉ある賞を授かり、さらには作家としての道を歩むことができるようになった喜びは、筆舌に尽くし難いものがあります。
 ……というと、単なる社交辞令の一環のように受け取られかねませんが、実のところ、MF文庫J新人賞は、僕が初めて挑戦したライトノベル新人賞でした。

 あれは3年前の春のある日、僕はラノベ作家になろうと、つたない現代ラブコメを送り付けました。それ以来、ほぼ全期新作を送り続けてきましたが、この粘り強さ……いや、かようなストーカーまがいの執念によって、ようやく実を結んだという形です。しかし、それまでには多くの苦悩がありました。

 ライトノベル作家になるには、どのような技量が求められるのか。よりラノベっぽく書く技術が必要なんじゃないか。ユーモアのある地の文の方が好まれるんじゃないか。誰にでも分かるようなストーリーや語彙を選んだ方がいいんじゃないか。

 僕はライトノベルの真髄を捉えようと、その特徴とされるあらゆる要素を意識して、執筆に励んできました。しかし、ライトノベルの「正解」を見出すだけの才覚は、残念ながら僕に備わっていないようでした。

 行き詰まりを感じた末、「それならば、自分の心に素直に従おう」という結論に至り、2年ほど温めてきたアイデアを形にすることにしたのです。その結果、吉報が届きました。

 振り返ってみれば、本作にはいわゆるライトノベルらしさとされる要素は極めて少ないように思います。しかし、そもそも僕が抱いていた「ライトノベルらしさ」という概念自体が、ひとつの幻想だったようにも思います。

 もしもいま、自身の創作がライトノベルの範疇に収まるのかと迷いを抱えている方がいらっしゃるのであれば、その懸念を払拭し、新たな地平を切り拓くライトノベルの誕生に向けて、勇気を持って筆を進めていただきたいと思います。そして、単に可能性を示すのみに留まらず、この挑戦が広く認知され、読者の心に響く作品として受け入れられるよう、これからも研鑽を重ね、精進を続けて参ります。

審査員コメント(志瑞祐先生)

 魔王と勇者の出てくる王道ファンタジー、と思わせて、滅びゆく世界を旅するロードームービー。不死の主人公と、死のさだめにあるヒロインが、旅先での様々な出会いを通じて絆を深めていく──。

 テーマがテーマなだけに、全編にわたってもの悲しさの漂う作品ですが、雰囲気のある文体で描かれるエピソードは温かみがあり、とても楽しく読めました。もったいないのは、クライマックスの展開がやや説明不足で急なこと。描きたいことはわかるのですが、主人公の心情についていけず、おいてけぼりにされてしまった印象を受けました。改稿で、より感動できるラストに仕上がることを期待しています。

■佳作 『ツギハギ事象の欠落人形』雨谷夏木

作者コメント

 初めまして。雨谷夏木(あまや なつき)と申します。この度は名誉ある賞に拙作を選んでいただき、誠にありがとうございます。
 審査に関わってくださった全ての方々に、この場をお借りして感謝申し上げます。

 受賞前も受賞後も、自身の気持ちや心構えはほとんど変わっておりません。
 前作より少しでも良い物を書こうともがき、今でも毎日、自分の実力不足を呪いながら文を読み、文を書いています。
 まあ、それはそれとして。賞をいただけて本当に本当に嬉しいです。ありがとうございます。

 MF文庫Jライトノベル新人賞は、箸にも棒にもかからない投稿の日々を送っていた頃、初めて高次に残していただいた新人賞でした。
 正直、懐がめちゃくちゃ深いと思います。どこに投稿するべきか迷われている方に、個人的にはおすすめしたい新人賞です。

 それでは、今度は本の中の文字を通してお会いできればと思います。これから、どうぞよろしくお願い致します。

審査員コメント(花間燈先生)

 主役脇役含めてキャラが立っており、台詞の掛け合いもコミカルで心地よく、個人的にはとても楽しく読めました。ラノベにおいて重要なキャラクターが今どんなふうに動いているかなどの描写力が高く、純粋な武力に頼らない主人公の戦い方などは見所があってとても良かったと思います。終盤の話のまとめ方もグッドでした。

 ただ、ところどころ設定の甘さやツッコミどころがあったのも事実で、他の審査員からもそのあたりで厳しい評価を受けました。設定に穴があるせいで物語の説得力が弱かったり、作品の世界観にそぐわない単語が急に出てきたり、そういったノイズは読後感にも影響を及ぼすので、もう少し世界観を詰められていたらもっと完成度がアップしていた気がします。

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