【レビュー】真っ直ぐな恋愛小説がここにある!『他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました』
【新作ラノベ先読み感想文レビュー】をお届けします! 今回は電撃文庫から5月10日に刊行される皐月陽龍先生×みすみ先生の新作です。みんなの感想も聞かせてください!
よく、恋は歯車のようだと言い表すことがある。歯車は他の歯車と噛み合わないことには順調に動き出さない。そこから転じて、二人の恋心が噛み合う様を「恋の歯車」と言い表すようになったのだろう。なぜ、唐突にこんな話をしたのかといえば、本作のヒロイン・東雲凪の歯車は、絶妙な掛け違いが生じていたからだ。
本作の肝は、凪が他人に冷たい【氷姫】であることと、氷姫であるはずの彼女が主人公の海似蒼太にだけ可愛い一面を見せることにある。凪が痴漢の被害に遭っていたことから始まった蒼太との接点。徐々に二人の距離は近づいていき、お互いに恋心を抱いていく。しかし、凪の家庭環境故に二人の仲が引き裂かれてしまうのだ。
そもそも蒼太と出会ったのは、凪が氷姫と呼ばれるほどに孤立した存在であったから。凪が氷姫と呼ばれるまでの境遇になったのは、とある教えを胸の内に秘めていたから。とはいえ、その二つがよくない方向へ掛け違えてしまい、蒼太と凪は引き裂かれてしまうのだ。
だが、とある教えがなければ凪が氷姫とならず、蒼太と出会わなかった……というのも事実。二人がこうして出会ったのも運命だったのかもしれない。そんな運命の相手が引き裂かれたとき、その恋の歯車が、再びきちんと噛み合うことはあるのか? ——と思いながら、ページを捲っていくこと必至の一作だ。
とにかく二人が互いのことを思い続ける純愛模様がたまらない、真っ直ぐな恋愛小説がここにある!
文:太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
・他人に冷たい【氷姫】が、主人公・蒼太にだけ見せる可愛い一面!
・"お友達"への恋心に揺れる蒼太の葛藤。
・そして【氷姫】の凪が密かに抱えるヒミツとは……?
主要キャラ紹介
その美しい容姿と、誰にも靡くことのない冷徹な態度から【氷姫】と呼ばれる他校の少女。
-
他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました
著者: 皐月 陽龍 イラスト: みすみ
他人に冷たい【氷姫】の心は、なぜか《お友達》の俺にだけ溶けていき──。
普通の高校生・海以蒼太が乗る電車には、他校の美少女が乗っていた。冷たい態度で他人を寄せ付けない【氷姫】──東雲凪。それが彼女の名前。ある日蒼太は彼女が痴漢に遭っているのを目撃し、勇気を振り絞って彼女を助ける。その次の日、彼の前に彼女が再び現れて……。
「電車に乗っている間、傍にいて……欲しいんです」
友人がいないという彼女のお願いを断る事が出来ず、蒼太はそれを引き受ける。彼女にとって初めてで、たったひとりの"お友達"になる事を。
「一番は海以君って決めてましたから」
世界でたったひとり、自分にだけ甘く溶けていく他人に冷たい【氷姫】。蒼太は彼女と"お友達"であり続けられるのか──。
いたって普通の男子高校生。通学中に気にかけていた凪の痴漢を前に……。