両親の借金を肩代わりしてもらう条件は 日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。3

第1話 もっとあなたのことが知りたいです その2

 じゃじゃーんと効果音とともにどこからともなくアルバムを取り出した楓さん。几帳面に表紙に年代が記されている。もしかして生まれてから今日までの記録を一つずつ見ていくのか?

「勇也君にもっと私のことを知ってもらいたいんです。ダメですか?」

「もちろんダメじゃありません!」

 上目遣いに潤んだ瞳を付け足して、さらに切なそうな声で尋ねて来ないでください。俺の心はノックアウト寸前です。

「さすが勇也君です! それじゃ夜は長いのでゆっくり観ていきましょう! あ、生まれたままの姿の写真もあると思いますがまじまじと見ないでくださいね? さすがに恥ずかしいので」

「いやいや、そんなこと言うなら毎日一緒にお風呂に入りましょうっていうのは恥ずかしくないんですか!?」

「それとこれとは話が別です! 私はいつ何時勇也君に見られてもいいように毎日鍛錬に励んでいますから。ほら、見てくださいこのまん丸な顔! お団子みたいだと思いませんか?」

 指差したのは幼稚園児くらいの楓さんがゾウさんの遊具に乗りながらピースをしている写真だった。確かに今と比べて顔が丸いが、可愛いことに変わりはない。むしろもちっとしていて触り心地が良さそうだ。

「今の方がすべすべもっちりだと自信があります。試しに触ってみてください!」

 はい、と顔を差し出してくる楓さんはまるで〝私のことを撫でろ、ご主人〟とすり寄ってくる子猫みたいだな。そう思うと自然と頬が緩むな。

「どうですか、私のほっぺは? 柔らかいですか?」

「うん、楓さんの頬っぺたはずっと撫でていられるね。柔らかくて、それでいて弾力が抜群の触り心地。控えめに言って最高です」

「……なんだか言い方がとてもエッチです」

 言いながらたわわな果実を両手で隠す楓さん。どうしてそうなんですかね!? 俺はあくまで楓さんの頬っぺたの感想を言ったのであって決して楓さんの魅惑の双丘の話をしたのではない! というか背中や胸にぎゅっと押し付けられたことは多々あれど、実際に触ったことはないから感想も何もない。

「それじゃ……今からこっちも触ってみますか?」

「えっ……楓さん、今なんて? というかなんでパジャマを脱ごうとしているんですか!? どうせその下には───!」

「はい、勇也君の予想通り夜は着けない派なので今の私はノーブラです!」

 知っていたことだけどドヤ顔で言わないでくれ! 薄手のパジャマ越しに伝わるたわわな感触のおかげで春休み期間中の俺の睡眠時間は削られている。これが夏になったらどうなるかなんて考えるだけで恐ろしい。

「さ、さぁ勇也君。思う存分触ってください! 恋人に愛情たっぷり揉んでもらえたら大きくなるとお母さんが言っていました!」

 桜子さん、あなたって人はどうして毎度毎度楓さんにいい加減なことを吹き込むんだ。どうせ〝私もそうしてもらったから〟って最後に付け足したんだろうな。一人娘に赤裸々に話しすぎだろう。

「勇也君……初めてなので、優しくしてくださいね?」

 その台詞を蕩けるくらい甘えた声で言うのはよろしくない。俺の理性君を刺激して崩壊してしまう。俺が必死に〝据え膳食わぬは男の恥っていうぜ?〟と囁く悪魔と戦っているというのに。これでは負けてしまう。何か状況を一変させる一手は───

「そ、そうだ! ねぇ、楓さん。この写真に写っている女の子は誰か教えて!?」

 俺が指差したのは先程とは別の写真。楓さんがブランコで遊んでいる時のものだが、彼女の隣で同じように遊んでいる同い年くらいの子供がいた。

 その子は太陽に照らされて黄金色に輝く金砂の髪に宝石のように美しいスカイブルーの瞳を持つ、お人形のように可愛らしい女の子だった。

 赤の他人と言うわけではないだろう。その証拠にアルバムを捲っていくと、その子と楓さんが仲良さそうに遊んでいる写真が何枚も出てきた。

「楓さんって一人っ子だよね? 顔は似てないけどなんだか姉妹みたい……もしかして外国の知り合いの子?」

「むぅ……勇也君にうやむやにされた感は否めませんが、まぁ今はいいでしょう」

 いそいそとたくし上げていた裾を元に戻していく。楓さんのお腹周り、無駄な肉がなくてくびれがあって美しいなぁ、ほんの少しだけ見えた下乳がものすごく艶めかしかったなぁ、もっと見たかったなぁ、なんて思ってないんだからね!

「この子は宮本結ちゃんです。勇也君もよく知っている宮本さんの娘さんです。子供の頃、よく一緒に遊んだんです。あ、ちなみに結ちゃんのお母さんは英国の方で、とっても綺麗な人なんです」

 なるほど、日本人離れした容姿や髪の毛はそういう理由か。楓さんだけでも十分可愛くて花があるのに、それと同等の花が並んでいるから写真は気品に溢れていてどれも輝いて見える。というか宮本さん、結婚していたのか。しかも英国人の女性との国際結婚とは。落ち着いた物腰からは想像できないな。

「結ちゃんは一個下ですが私にとっては可愛い妹です。写真を見ていたら久しぶりに会いたくなりました。勇也君にもいつか紹介しますね。すごく綺麗な金髪なのでびっくりすると思います」

 雲一つない澄みきった夜空のような黒髪に対して、この人───宮本結ちゃん───の髪の毛は光り輝く満月のようだ。おとぎ話に出てくるお姫様みたいだから憧れを抱くのは無理もない。でも〝子供の頃は憧れていた〟ということは今は違うのだろうか?

「はい。だって勇也君、黒髪好きですよね?」

 俺の心の内を全て見透かすような真っ直ぐな瞳。口元はからかうように吊り上がっている。確かに楓さんの言う通り俺は黒髪が好きだ。でも誰でもいいかと聞かれたらそういうわけではない。

「俺は楓さんの黒髪が好きなんだよ。夏の澄んだ夜空みたいな綺麗な黒髪がね」

 言いながら、俺は楓さんの頭をそっと優しく撫でる。指に一切引っかかることのない絹のように滑らかな触り心地。ふわりと漂う爽やかな香りをもっと味わいたくて、俺は思わず髪の毛に顔を近づける。

「ゆ、勇也君? 突然どうしたんですか? 恥ずかしいですよ……」

「本当に綺麗だよ、楓さん」

 髪の毛や容姿といった外見だけじゃない。内面も全て含めて一葉楓は綺麗だと俺は思う。時々暴走したりポンコツ化することもあるけれど、それが可愛さというアクセントというかギャップになって魅力をさらに引き立てている。

「もう……勇也君はいつもそうです。いつもそうやって、いきなり甘い声でさらりとカッコイイことを言って……なんですか、私を喜ば死させる気ですか?」

 反則です、と呟きながら楓さんはコテッと俺の肩に頭を乗せた。これはもっと撫でてほしいという無言のアピールということを俺は知っている。

「えへへ。勇也君にこうしてナデナデしてもらうの大好きです。もっとしてださい」

 猫なで声で甘えてくる楓さん。やれやれ、拗ねたり照れたり甘えたりと忙しい人だ。まぁ俺も人のこと言えないんだけど。

 それにしても楓さんの髪の毛は本当に綺麗だよな。雲一つない澄んだ夜空のような黒髪。もしこれが本物の空だったら、今夜の満月もより輝いて見えるだろう。

「二年生は同じクラスになれたらいいですね。そしたら家だけじゃなくて学校でも勇也君と一緒にいられます」

「そうだね。今年は同じクラスになれるといいね」

 楓さんだけじゃなくて伸二や大槻さん、二階堂ともみんな一緒になれたらきっと楽しい一年になるはずだ。

 クソッタレな父さんのせいで一時はどうなるかと思ったが楓さんのおかげで無事続けられている高校生活。全力で楽しまなきゃ損というものだ。

「フフッ。楽しい一年にしましょうね! あ、もちろん勉強も頑張りましょうね?」

 はい、もちろんです楓先生。

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