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教会からの帰り道は惨憺たる有様だった。レナルドは思案顔で馬車の外を眺めているし、私もあえて話す気になれず、間に挟まれたリアムだけがぎこちなさそうに身じろぎをしている。
そうして彼が何十回目かの座り直しをした頃、磯の香りが馬車の中にまで漂ってきた。
「ダミアンのアジトまでもうすぐだ」
レナルドが窓の外に顔を向けたままつぶやく。私たちはアナリーに会って教会の内情を聞くため、ダミアンに場所を貸してもらうことにしたんだ。私が王女だとバレた今、治療院を訪ねたら騒ぎになるし、夜中にアナリーを王宮へ呼び出すわけにもいかないから。
やがて大きな石造りの建物の前で馬車が停まった。久々のダミアンとの再会だと思ったら、緊張してきた。ヴィオラではなくヴィオレッタとして彼に会うのは、実は今日が初めてだったりする。私の正体を知った今でも、いつも通りに接してくれるだろうか?
ドキドキする私の前で、レナルドが獅子の顔をかたどったドアノッカーをたたく。すぐに日焼けした海の男が中から現れ、ニヤリと口の端をつり上げた。ああ、ダミアンだ!
「よっ! 待ってたぜ、レナード。今日はやけにめかし込んじゃって、一段と男前だな」
ダミアンが笑いながらレナルドの背中をバシバシたたく。私はホッとして肩の力を抜いた。
はー、この空気、落ち着くわー。感情の読めないマティアスと対峙したあとだからこそ余計にそう感じるのかもしれない。でも、たたかれたレナルドの方は嫌そうに顔をしかめている。
「ダミアン、あんたは自分の馬鹿力を自覚した方がいい。少しは加減を覚えてくれ」
「いやぁ、これも愛情表現の一種だって。あんたの正体が判明した今でもこうして人目を忍び、逢瀬に来てもらえるなんて嬉しいじゃないか」
「そういう誤解を招く言い方はよせ」
「おっと、これは失礼。想い人の前では、俺のような間男は出しゃばらない方がいいな」
ん? 想い人?……って、誰のこと?
意味がわからず、首をかしげる。そんな私の前にダミアンが進み出た。その顔からさっきまでの笑みがすっと消え、真面目な顔つきになる。
「ヴィオレッタ王女におかれましては、ご機嫌麗しく。以前は王女のご身分を存じ上げず、大変なご無礼を働いたこと、どうかお許しください」
うーわー……。こんなことを言ったら失礼だけど、ダミアンに敬語は似合わない。というか彼にこういう恭しい態度を取られると、すごく落ち着かないわ。
「えーと、ダミアン? せっかくの口上は嬉しいけど、その芝居がかった仕草はちょっと……」
「ちょっとお気持ちが悪かったでしょうか?」
「もう! わかってるならやめてよ! 私に対しても、今までと同じ態度で接して!」
たまらず叫んだ私を見上げてダミアンが満足そうにニカッと笑い、立ち上がる。
「ありがたきお言葉、助かるわー。お嬢ちゃんを相手にかしこまって話すのは、俺もなんだか全身がむずがゆくてさ」
「それは私のセリフよ。あなたに敬われても、気味が悪いだけだから」
「おや、俺たち気が合うな。お嬢ちゃん、レナードをやめて俺に乗り換えるかい?」
「ダミアン」
レナルドがムッとした様子でダミアンをにらむ。
「ちょっとからかったぐらいで怒るなって、レナード。俺にとって、お嬢ちゃんはもうけの種を提供してくれる魔法使いのような存在だって、おまえも知ってるだろ?」
待って、ダミアン。その言い方はひどくない? 少なくとも私は仲間だと思ってるのに。
頬を膨らませ、ダミアンを半眼でにらむ。その時、後ろからクイクイとドレスの袖を引っ張られた。今まで私たちの後ろに隠れていたリアムが、不安そうにこちらを見上げている。
「リアム? どうしたの?」
「あの、今の言い方……ヴィオレッタはこの人に利用されているの?」
「は?」
みんなして目が点になる。一拍おいて、ダミアンの盛大な爆笑が辺りに響いた。
「俺がお嬢ちゃんを利用って……! なかなかおもしろい発想をするなー」
「そうだぞ、リアム。ヴィオレッタがおとなしく利用されるような性格に見えるか?」
「……ううん。万が一そんなことをしたら、あとが恐そう」
「ちょっと! リアムまでひどくない!? みんな、私のことをなんだと思ってるのよ!?」
憤慨する私をよそに、全員が一斉に目を逸らす。もう!
私はさらにムッとしたけど、今の会話でリアムは緊張がほぐれたらしい。私たちの後ろから出てきて、ぺこりとお辞儀をした。
「はじめまして、ダミアンさん。レナルドの弟で、ヴィオレッタの従弟のリアムです。その、僕に対しても、二人と同じように敬語なしで話してもらえたら嬉しい、です」
誰に対しても礼儀正しい王子様を前にして、ダミアンが面食らったように目を瞠る。すぐにその目が嬉しそうに細められ、彼はリアムの前に手を差し出した。
「俺はヴィオラの仕事仲間のダミアンだ。よろしくな、リアム」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
リアム、成長したなぁ。初対面の人と目を合わせながら握手までするなんて。
「うんうん、よかった」と思った、その時、「ダミアンさ~ん」と呼ぶ声が奥から聞こえてきた。
「いつまで玄関先で話し込んでるんですか? 皆さん、風邪を引いちまいやすぜ」
「おっと、それもそうだな。エリク、おまえはすぐに茶の用意をしろ!」
ダミアンが命令し慣れたボスの声で、奥に向かって叫ぶ。彼はすぐ私たちの方に向き直り、今度は茶目っ気たっぷりに笑って続けた。
「男ばかりでちぃっとむさ苦しい場所だが歓迎するぜ、我が城へ」
それから五分後、私たちは通された客間で久し振りにダミアンの報告を聞いていた。
私たちが三人で始めた瓶詰め工場はついに先日、肉類を使った瓶詰めの試作に成功したらしい。その結果、海軍や船乗りたちからもより注目を集めるようになった。今はまだ魚の瓶詰めを作るだけで手一杯だけど、いずれ肉類専門の工場を増設した方がいいかもしれない。
石鹸の方も防疫の考え方が市民の間に少しずつ浸透したおかげで、コンスタントに売れているらしい。今後は石鹸も工場の数を増やしていくつもりだとか。
「すごいじゃない、ダミアン。しばらく会わないうちに、立派な経営者になって」
渡された黒字の帳簿に目を通した私は、思わず感嘆の吐息をこぼした。ダミアンはめずらしく照れたのか、冗談も言わずに鼻の下をこすっている。
いい傾向だ。こうやって少しずつ工場の規模を拡大していけば、王都の働き口も増えるし、市民の生活も豊かになっていくだろう。だけど……。
「これならもう、私は必要ないわね」
一抹の寂しさと共に、本音がポロッとこぼれた。その瞬間、ダミアンがギョッと目を瞠った。
「お嬢ちゃん、冗談はよしてくれ! 既存の商品を扱う工場なら、俺たちだけでもなんとか回せる。けどな、何か新しい商品を扱う時には、今後もお嬢ちゃんのアドバイスが欲しいんだ」
「そうね。あなたにとって、私はもうけの種を提供する魔法使いらしいし?」
「……お嬢ちゃん、意外と根に持つタイプだな。レナードの苦労が思いやられるぜ」
「共感してもらえて何よりだ、ダミアン」
「ちょっと! 二人とも!」
抗議した私の横で、リアムがクスクス笑う。つられてみんなが笑い出した。思わず私も。
やっぱり好きだな、この空気。いつまでも、みんなでこうしていられたらいいのに……。
部屋が穏やかな空気で満たされた。そこへ扉をノックする音が響いた。
「ダミアンさん、もう一人の客人をお連れしました。お通ししてもいいっすか?」
きっとアナリーだ。つい全身に緊張が走る。アナリーとはラルスの事件のあとも一度王宮で会ったけど、あの時は周りに人がたくさんいたせいで、ろくに話せなかったから。
「じゃ、俺はこれで。何かあったら呼んでくれ」
ダミアンがソワソワし出した私を見やって席を立つ。彼が扉を開けた次の瞬間、輝くプラチナブロンドの髪と目の縁いっぱいに涙をためたアクアブルーの瞳が視界に飛び込んできた。
「お姉様!」
「アナリー、久し振り! 会いたかったわ!」
感極まったアナリーが駆け寄ってくる。私は立ち上がり、腕を大きく広げた。
これぞまさに感動の再会! 私は彼女を抱きしめ……ようとしたのに、あれ?
広げた手が空を切り、ギョッとする。アナリーが突然、目の前でひざまずいたのだ。
「アナリー? 急にどうし……」
「お姉様、ごめんなさい! ラルスは私の騎士でしたのに、何も気づけなくて……。お姉様をラルスの反逆に巻き込んでしまったなんて、私……!」
アナリーが目を伏せ、悔しそうに唇を噛みしめる。私はハッとした。
王宮で再会した時、どうして気づかなかったんだろう? あの事件は、ラルスの前世に対する思い入れの強さが招いた結果だ。アナリーは利用されただけで、何も悪くない。それなのに真相を知らない彼女はラルスの主としての責任を感じ、ずっと思い詰めていたんだろう。
アナリーに前世のことを打ち明けるわけにはいかない。でも、その気持ちを少しでも軽くしてあげたくて……私は迷った末、その場にしゃがんで彼女の手を取った。
「お姉様?」
「ラルスの事件は誰にも予測できなかったことだから、どうか気に病まないで。それより私は、あの事件のせいで、あなたの人生が大きく変わってしまったんじゃないかと心配しているの」
あの時、アナリーは私のために瀕死のお父様を救おうとして、光の力に目覚めた。それ自体はすごいことだけど、彼女のためを思うなら、下町で治療院を続けていた方が幸せだったかもしれない。ゲームのシナリオを脱した今、彼女が光の乙女になる必要もなくなったのだから。
選べなかった未来を思って暗くなる。そんな私の手をアナリーがギュッと握り返してきた。
「お姉様こそ、どうかそんな悲しそうなお顔をなさらないでください。陛下の暗殺未遂は決して許されないことですし、皆の心に深い傷を残しました。ですが、私にとっては一つだけいい結果ももたらしてくれたんですよ」
え? ラルスのせいで、アナリーは踏んだり蹴ったりだったはずよね? それなのに、いいことって……。首をかしげる私を見上げ、アナリーが顔に清々しい笑みを浮かべる。
「あの事件があったからこそ、私は光の乙女としてお姉様にお仕えできることになりました。ラルスの罪を償うためにも、私は一生お姉様に忠誠を誓います!」
「ええっ? その想いは、あなたが好きになった相手に向けるべきじゃないの?」
「はい! ですから、私はお姉様に忠誠を」
いやいや、そこはレナルドやリアムの方がふさわしいでしょう! ほら、二人とも呆れた様子でこっちを見てるよ。しかし、それでもアナリーのうっとりした表情は変わらない。
「私、お姉様と出会えたことを神様と初代乙女に感謝しています。女王の重責を担うお姉様と毎日お話がしたいなんて贅沢は言いません。私がお姉様のためにできることをして、お姉様が時々でも私のことを思い出してくださったら、それだけで十分幸せなんです」
なに、その推しに対するような無償の愛! アナリー、落ち着いて!
「その気持ち、ちょっとわかるかも」
は? 私は驚いて声のした方を向いた。なんとさっきまで微妙な顔つきをしていたリアムが、腑に落ちたような表情でアナリーを見ている。なんで?
「その、僕もヴィオレッタがくれた言葉のおかげで、人生がいい方に変わったから。ヴィオレッタと会えた日は、僕も寝るまでずっと幸せな気持ちでいられるし」
「リアム様もですか!」
アナリーがキラッと目を輝かせて立ち上がる。急に詰め寄られ、リアムは一瞬ビクッと震えたものの、逃げずに踏みとどまった。いや、そこは無理せずに逃げていいと思うんだけど。
「リアム様は、ヴィオレッタ様のどんなところがお好きですか?」
「え?……やっぱり一番は、いつも欲しい言葉をくれるところ、かな?」
「わかります! お姉様のお言葉はいつも素晴らしいですよね!」
「本当? わかってくれるの?」
リアムも意気込んで前のめりになる。なんだろう、この褒め殺し地獄は。二人に慕われて嬉しいけど、でも……!
恥ずかしさに耐えきれず、目でレナルドに助けを求める。彼は弟と美少女の思いがけぬ意気投合を前にして呆然としていたが、私の言いたいことが伝わったらしい。リアムたちに向かって、コホンとわざとらしい咳払いをした。
「二人とも盛り上がっているところ悪いが、そろそろ本題に入ってもいいだろうか?」
「も、申し訳ございません! 私ったら、同志に巡り会えた喜びから興奮してしまって……」
アナリーが頬を赤らめ、向かいの席に慌てて座る。その仕草はかわいいけど、さっきまで話していた内容を思い返すとなんだか生暖かい気持ちになるのは仕方ないよね。
「今日は皆様から私に質問があると伺いました。どういったお話でしょうか?」
「アナリー、君は教会の養護院で育ったのち、光の乙女候補に選ばれたと聞いている。そのことを踏まえ、教会の内情について知っていることを教えてほしい」
二人とも頭の切り替えが早い。急に尋問の様相を呈した部屋の中、レナルドが教会で見てきたことを先に語り出す。その話が進むにつれ、アナリーの顔色が悪くなっていった。
どうしたんだろう? もしかしてアナリーも養護院にいた頃に、ひどい体罰を受けたとか?
「教会において、養護院と救貧院の窮状は見て見ぬ振りをされているようにすら感じられた。その原因は、予算不足だけではないように思える。君はその理由を知っているか?」
心配する私をよそに、レナルドがアナリーに問う。彼女はやっぱり何か嫌なことを思い出したのだろう。一瞬つらそうに目を伏せ、絞り出すような声で答えた。
「レナルド様もお気づきのように、予算不足というのは単なる口実です。教会は、特に救貧院のためにお金をかけたくないだけなんです」
「それはなぜだ?」
「救貧院に入るのは、怠けていたせいで仕事を失い堕落した人たちだと、教会では考えられていますから。彼らがこれ以上怠けて教会の厚意に甘えることがないよう、救貧院はあえて最悪の環境のまま放置されているのです」
「何それ! 救貧院は、困っている民を助けるために作られた施設じゃないの?」
人が働けなくなる事情は病気とかリストラとか様々だ。それなのに、一概に怠けていたせいだと決めつけるなんて……。唖然としている私を見て、アナリーが悲しそうに微笑む。
「お姉様のおっしゃりたいことはよくわかります。民を助けるために作られた施設が、かえって民に苦しみを与えていては意味がありません。私もそう思ったからこそ、養護院や救貧院の改善を訴えたのですが、力及ばず……」
教会を出奔した時のことを思い出したのか、アナリーが悔しそうに拳を握りしめる。
「ちなみにアナリーが改善を訴えた相手というのは、責任者のマティアスだったの?」
「いいえ、当時はまだお父様がご存命でしたので、お父様の方にご相談しました」
ん? マティアスのお父さん?……ああ、そういえば亡くなられたと話していたっけ。
横で話を聞いていたレナルドの眉がピクッと跳ね上がった。マティアスとの会話で気まずい思いをしたせいで、お父さんのこともずっと気にかかっていたのかもしれない。
「アナリー、その点について詳しく教えてもらえないか? なぜ君が、平民であったマティアスの父に救貧院の改善を進言したんだ?」
「平民?……いいえ、私の言うお父様とは、元枢機卿で公爵家ご出身のクレマン様の方です」
「え? 待って。お父さんが平民の方とか公爵の方とか、どういうこと?」
マティアスは救貧院に入っていたこともあるそうだから、平民の出身でもおかしくない。でも、そのお父さんが元枢機卿ってどういうこと? まさか元枢機卿も一緒に救貧院にいたの?
混乱する私を見て、アナリーが少し気まずそうな顔をする。
「マティアス様は救貧院で実のお父様を亡くされたのち、聖職者の道に進まれました。そこでマティアス様の才覚に惚れ込んだ枢機卿のクレマン様が、周囲の反対を押し切ってご自身の養子に迎えられたそうです。ですが、それからすぐにクレマン様が他界されたため、後を継いだマティアス様が枢機卿に就任なさったのです」
「ああ、そういうことね」
やっと謎の関係が理解できてスッキリした。しかし次の瞬間、私は練兵場で耳にした噂を思い出して、ゴクリとツバを吞み込んだ。
「養父殺し……」
「お姉様? どうしてその二つ名を……」
口からこぼれた単語の苛烈さにアナリーが動揺し、レナルドとリアムも息を吞む。
「あ、いや、騎士たちがマティアスを陰でそう呼んでいるのを偶然聞いてしまったの」
「そうですか、まだそんな噂が……」
「アナリー、何か知ってるの?」
つい気になって聞くと、アナリーは悲しそうに目を伏せた。
「私が知っているのは、マティアス様を見守るクレマン様の目がいつもすごく優しかったことくらいです。マティアス様は望まれて公爵家の養子になられましたが、その直後にクレマン様が亡くなられたことを受けて、様々な憶測が飛び交うようになったのです」
「まさか本当にマティアスが何かしていた可能性は……」
「やめろ! あいつはそんな奴じゃない」
ドンッとテーブルをたたく音が隣で上がった。え、何?
見ると、レナルドが青ざめた顔で下を向いていた。その握りしめた拳が小刻みに震えている。
「に、兄さん……?」
いつも優しい兄の急変に、リアムがプルプル震えている。我に返ったレナルドが慌てて拳を開き、テーブルから手を離す。
「すまない。今日は少し疲れているみたいだ。悪いが、先に帰らせてもらってもいいか?」
「レナルド、どうしたの? あなた、今日ずっと変よ。やっぱり過去にマティアスと何かあったんじゃ……んっ!」
私の疑問は途中で封じられた。レナルドが私の唇に人差し指を押し当ててきたのだ。こちらに向けられた瞳はひどく切なげで、今にも泣き出しそうな光を宿している。
あの責任感の塊のようなレナルドが話を聞くのもつらくなるほど追い詰められるなんて……。本当に何があったの?
かすかなぬくもりを残し、レナルドの指が離れていく。彼はそのまま部屋を出て行った。
ハッ! ボーッとしてる場合じゃないわ!
「ごめんなさい、アナリー。話の続きはまた今度お願いできるかしら?」
「は、はい。私でお役に立てることであれば、いつでも」
「ありがとう! リアム、私たちはレナルドを追いかけるわよ!」
「う、うん」
リアムは戸惑いつつも、おとなしく私のあとについてきた。あんな状態のレナルドを一人にするのは心配だと、彼も思ってくれたらしい。
私たちは玄関でレナルドに追いつくと、驚いているダミアンに挨拶をしてから三人で馬車に乗り込んだ。しかし、会話はない。王宮までの道すがら、レナルドはずっと思い詰めたような表情で、暗くなった窓の外を見つめていた。