第二巻 第二章 美しい枢機卿には棘がある③

    ***


 教会からの帰り道はさんたんたる有様だった。レナルドは思案顔で馬車の外をながめているし、私もあえて話す気になれず、間にはさまれたリアムだけがぎこちなさそうに身じろぎをしている。

 そうして彼が何十回目かの座り直しをしたころいそかおりが馬車の中にまでただよってきた。

「ダミアンのアジトまでもうすぐだ」

 レナルドが窓の外に顔を向けたままつぶやく。私たちはアナリーに会って教会の内情を聞くため、ダミアンに場所を貸してもらうことにしたんだ。私が王女だとバレた今、りよう院を訪ねたらさわぎになるし、夜中にアナリーを王宮へ呼び出すわけにもいかないから。

 やがて大きな石造りの建物の前で馬車がまった。久々のダミアンとの再会だと思ったら、きんちようしてきた。ヴィオラではなくヴィオレッタとして彼に会うのは、実は今日が初めてだったりする。私の正体を知った今でも、いつも通りに接してくれるだろうか?

 ドキドキする私の前で、レナルドがの顔をかたどったドアノッカーをたたく。すぐに日焼けした海の男が中から現れ、ニヤリと口のはしをつり上げた。ああ、ダミアンだ!

「よっ! 待ってたぜ、レナード。今日はやけにめかし込んじゃって、一段と男前だな」

 ダミアンが笑いながらレナルドの背中をバシバシたたく。私はホッとしてかたの力をいた。

 はー、この空気、落ち着くわー。感情の読めないマティアスと対峙したあとだからこそ余計にそう感じるのかもしれない。でも、たたかれたレナルドの方はいやそうに顔をしかめている。

「ダミアン、あんたは自分の鹿ぢからを自覚した方がいい。少しは加減を覚えてくれ」

「いやぁ、これも愛情表現の一種だって。あんたの正体が判明した今でもこうして人目をしのび、おうに来てもらえるなんてうれしいじゃないか」

「そういう誤解を招く言い方はよせ」

「おっと、これは失礼。おもい人の前では、俺のような間男は出しゃばらない方がいいな」

 ん? 想い人?……って、誰のこと?

 意味がわからず、首をかしげる。そんな私の前にダミアンが進み出た。その顔からさっきまでのみがすっと消え、真面目まじめな顔つきになる。

「ヴィオレッタ王女におかれましては、ごげんうるわしく。以前は王女のご身分を存じ上げず、大変なご無礼を働いたこと、どうかお許しください」

 うーわー……。こんなことを言ったら失礼だけど、ダミアンに敬語は似合わない。というか彼にこういううやうやしい態度を取られると、すごく落ち着かないわ。

「えーと、ダミアン? せっかくの口上は嬉しいけど、そのしばがかった仕草はちょっと……」

「ちょっとお気持ちが悪かったでしょうか?」

「もう! わかってるならやめてよ! 私に対しても、今までと同じ態度で接して!」

 たまらずさけんだ私を見上げてダミアンが満足そうにニカッと笑い、立ち上がる。

「ありがたきお言葉、助かるわー。おじようちゃんを相手にかしこまって話すのは、俺もなんだか全身がむずがゆくてさ」

「それは私のセリフよ。あなたに敬われても、気味が悪いだけだから」

「おや、俺たち気が合うな。お嬢ちゃん、レナードをやめて俺に乗りえるかい?」

「ダミアン」

 レナルドがムッとした様子でダミアンをにらむ。

「ちょっとからかったぐらいでおこるなって、レナード。俺にとって、お嬢ちゃんはもうけの種を提供してくれるほう使つかいのような存在だって、おまえも知ってるだろ?」

 待って、ダミアン。その言い方はひどくない? 少なくとも私は仲間だと思ってるのに。

 ほおふくらませ、ダミアンを半眼でにらむ。その時、後ろからクイクイとドレスのそでを引っ張られた。今まで私たちの後ろに隠れていたリアムが、不安そうにこちらを見上げている。

「リアム? どうしたの?」

「あの、今の言い方……ヴィオレッタはこの人に利用されているの?」

「は?」

 みんなして目が点になる。いつぱくおいて、ダミアンのせいだいばくしようが辺りにひびいた。

「俺がお嬢ちゃんを利用って……! なかなかおもしろい発想をするなー」

「そうだぞ、リアム。ヴィオレッタがおとなしく利用されるような性格に見えるか?」

「……ううん。万が一そんなことをしたら、あとがこわそう」

「ちょっと! リアムまでひどくない!? みんな、私のことをなんだと思ってるのよ!?」

 ふんがいする私をよそに、全員がいつせいに目をらす。もう!

 私はさらにムッとしたけど、今の会話でリアムは緊張がほぐれたらしい。私たちの後ろから出てきて、ぺこりとおをした。

「はじめまして、ダミアンさん。レナルドの弟で、ヴィオレッタの従弟いとこのリアムです。その、僕に対しても、二人と同じように敬語なしで話してもらえたら嬉しい、です」

 だれに対しても礼儀正しい王子様を前にして、ダミアンがめんらったように目をみはる。すぐにその目が嬉しそうに細められ、彼はリアムの前に手を差し出した。

「俺はヴィオラの仕事仲間のダミアンだ。よろしくな、リアム」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

 リアム、成長したなぁ。初対面の人と目を合わせながらあくしゆまでするなんて。

「うんうん、よかった」と思った、その時、「ダミアンさ~ん」と呼ぶ声が奥から聞こえてきた。

「いつまでげんかんさきで話し込んでるんですか? みなさん、風邪かぜを引いちまいやすぜ」

「おっと、それもそうだな。エリク、おまえはすぐに茶の用意をしろ!」

 ダミアンが命令し慣れたボスの声で、奥に向かって叫ぶ。彼はすぐ私たちの方に向き直り、今度はちやっ気たっぷりに笑って続けた。

「男ばかりでちぃっとむさ苦しい場所だがかんげいするぜ、我が城へ」


 それから五分後、私たちは通された客間で久しりにダミアンの報告を聞いていた。

 私たちが三人で始めたびんめ工場はついに先日、肉類を使った瓶詰めの試作に成功したらしい。その結果、海軍や船乗りたちからもより注目を集めるようになった。今はまだ魚の瓶詰めを作るだけでいつぱいだけど、いずれ肉類専門の工場を増設した方がいいかもしれない。

 せつけんの方もぼうえきの考え方が市民の間に少しずつしんとうしたおかげで、コンスタントに売れているらしい。今後は石鹸も工場の数を増やしていくつもりだとか。

「すごいじゃない、ダミアン。しばらく会わないうちに、立派な経営者になって」

 わたされた黒字のちよう簿に目を通した私は、思わずかんたんいきをこぼした。ダミアンはめずらしく照れたのか、じようだんも言わずに鼻の下をこすっている。

 いいけいこうだ。こうやって少しずつ工場の規模を拡大していけば、王都の働き口も増えるし、市民の生活も豊かになっていくだろう。だけど……。

「これならもう、私は必要ないわね」

 いちまつさびしさと共に、本音がポロッとこぼれた。そのしゆんかん、ダミアンがギョッと目を瞠った。

「お嬢ちゃん、冗談はよしてくれ! そんの商品をあつかう工場なら、俺たちだけでもなんとか回せる。けどな、何か新しい商品を扱う時には、今後もお嬢ちゃんのアドバイスが欲しいんだ」

「そうね。あなたにとって、私はもうけの種を提供する魔法使いらしいし?」

「……お嬢ちゃん、意外と根に持つタイプだな。レナードの苦労が思いやられるぜ」

「共感してもらえて何よりだ、ダミアン」

「ちょっと! 二人とも!」

 こうした私の横で、リアムがクスクス笑う。つられてみんなが笑い出した。思わず私も。

 やっぱり好きだな、この空気。いつまでも、みんなでこうしていられたらいいのに……。

 部屋がおだやかな空気で満たされた。そこへとびらをノックする音が響いた。

「ダミアンさん、もう一人の客人をお連れしました。お通ししてもいいっすか?」

 きっとアナリーだ。つい全身に緊張が走る。アナリーとはラルスの事件のあとも一度王宮で会ったけど、あの時は周りに人がたくさんいたせいで、ろくに話せなかったから。

「じゃ、俺はこれで。何かあったら呼んでくれ」

 ダミアンがソワソワし出した私を見やって席を立つ。彼が扉を開けた次の瞬間、かがやくプラチナブロンドのかみと目のふちいっぱいになみだをためたアクアブルーのひとみが視界に飛び込んできた。

「お姉様!」

「アナリー、久し振り! 会いたかったわ!」

 感きわまったアナリーがけ寄ってくる。私は立ち上がり、うでを大きく広げた。

 これぞまさに感動の再会! 私は彼女をきしめ……ようとしたのに、あれ?

 広げた手が空を切り、ギョッとする。アナリーがとつぜん、目の前でひざまずいたのだ。

「アナリー? 急にどうし……」

「お姉様、ごめんなさい! ラルスは私のでしたのに、何も気づけなくて……。お姉様をラルスの反逆に巻き込んでしまったなんて、私……!」

 アナリーが目をせ、くやしそうにくちびるみしめる。私はハッとした。

 王宮で再会した時、どうして気づかなかったんだろう? あの事件は、ラルスの前世に対する思い入れの強さが招いた結果だ。アナリーは利用されただけで、何も悪くない。それなのに真相を知らない彼女はラルスのあるじとしての責任を感じ、ずっと思いめていたんだろう。

 アナリーに前世のことを打ち明けるわけにはいかない。でも、その気持ちを少しでも軽くしてあげたくて……私は迷った末、その場にしゃがんで彼女の手を取った。

「お姉様?」

「ラルスの事件は誰にも予測できなかったことだから、どうか気にまないで。それより私は、あの事件のせいで、あなたの人生が大きく変わってしまったんじゃないかと心配しているの」

 あの時、アナリーは私のためにひんのお父様を救おうとして、光の力に目覚めた。それ自体はすごいことだけど、彼女のためを思うなら、下町でりよう院を続けていた方が幸せだったかもしれない。ゲームのシナリオをだつした今、彼女が光のおとになる必要もなくなったのだから。

 選べなかった未来を思って暗くなる。そんな私の手をアナリーがギュッとにぎり返してきた。

「お姉様こそ、どうかそんな悲しそうなお顔をなさらないでください。陛下の暗殺すいは決して許されないことですし、皆の心に深い傷を残しました。ですが、私にとっては一つだけいい結果ももたらしてくれたんですよ」

 え? ラルスのせいで、アナリーはんだりったりだったはずよね? それなのに、いいことって……。首をかしげる私を見上げ、アナリーが顔にすがすがしいみをかべる。

「あの事件があったからこそ、私は光の乙女としてお姉様にお仕えできることになりました。ラルスの罪をつぐなうためにも、私は一生お姉様に忠誠をちかいます!」

「ええっ? そのおもいは、あなたが好きになった相手に向けるべきじゃないの?」

「はい! ですから、私はお姉様に忠誠を」

 いやいや、そこはレナルドやリアムの方がふさわしいでしょう! ほら、二人ともあきれた様子でこっちを見てるよ。しかし、それでもアナリーのうっとりした表情は変わらない。

「私、お姉様と出会えたことを神様と初代乙女に感謝しています。女王の重責をになうお姉様と毎日お話がしたいなんてぜいたくは言いません。私がお姉様のためにできることをして、お姉様が時々でも私のことを思い出してくださったら、それだけで十分幸せなんです」

 なに、そのしに対するようなしようの愛! アナリー、落ち着いて!

「その気持ち、ちょっとわかるかも」

 は? 私はおどろいて声のした方を向いた。なんとさっきまでみような顔つきをしていたリアムが、に落ちたような表情でアナリーを見ている。なんで?

「その、僕もヴィオレッタがくれた言葉のおかげで、人生がいい方に変わったから。ヴィオレッタと会えた日は、僕もるまでずっと幸せな気持ちでいられるし」

「リアム様もですか!」

 アナリーがキラッと目を輝かせて立ち上がる。急に詰め寄られ、リアムは一瞬ビクッとふるえたものの、げずに踏みとどまった。いや、そこは無理せずに逃げていいと思うんだけど。

「リアム様は、ヴィオレッタ様のどんなところがお好きですか?」

「え?……やっぱり一番は、いつも欲しい言葉をくれるところ、かな?」

「わかります! お姉様のお言葉はいつもらしいですよね!」

「本当? わかってくれるの?」

 リアムも意気込んで前のめりになる。なんだろう、このめ殺しごくは。二人にしたわれてうれしいけど、でも……!

 ずかしさにえきれず、目でレナルドに助けを求める。彼は弟と美少女の思いがけぬ意気投合を前にしてぼうぜんとしていたが、私の言いたいことが伝わったらしい。リアムたちに向かって、コホンとわざとらしいせきばらいをした。

「二人とも盛り上がっているところ悪いが、そろそろ本題に入ってもいいだろうか?」

「も、申し訳ございません! 私ったら、同志にめぐり会えた喜びから興奮してしまって……」

 アナリーがほおを赤らめ、向かいの席にあわてて座る。その仕草はかわいいけど、さっきまで話していた内容を思い返すとなんだか生暖かい気持ちになるのは仕方ないよね。

「今日はみなさまから私に質問があるとうかがいました。どういったお話でしょうか?」

「アナリー、君は教会の養護院で育ったのち、光の乙女候補に選ばれたと聞いている。そのことを踏まえ、教会の内情について知っていることを教えてほしい」

 二人とも頭の切りえが早い。急にじんもんの様相をていした部屋の中、レナルドが教会で見てきたことを先に語り出す。その話が進むにつれ、アナリーの顔色が悪くなっていった。

 どうしたんだろう? もしかしてアナリーも養護院にいたころに、ひどいたいばつを受けたとか?

「教会において、養護院と救貧院のきゆうじようは見て見ぬりをされているようにすら感じられた。その原因は、予算不足だけではないように思える。君はその理由を知っているか?」

 心配する私をよそに、レナルドがアナリーに問う。彼女はやっぱり何かいやなことを思い出したのだろう。いつしゆんつらそうに目を伏せ、しぼり出すような声で答えた。

「レナルド様もお気づきのように、予算不足というのは単なる口実です。教会は、特に救貧院のためにお金をかけたくないだけなんです」

「それはなぜだ?」

「救貧院に入るのは、なまけていたせいで仕事を失いらくした人たちだと、教会では考えられていますから。彼らがこれ以上怠けて教会のこうに甘えることがないよう、救貧院はあえて最悪のかんきようのまま放置されているのです」

「何それ! 救貧院は、困っているたみを助けるために作られたせつじゃないの?」

 人が働けなくなる事情は病気とかリストラとか様々だ。それなのに、いちがいに怠けていたせいだと決めつけるなんて……。ぜんとしている私を見て、アナリーが悲しそうに微笑ほほえむ。

「お姉様のおっしゃりたいことはよくわかります。民を助けるために作られた施設が、かえって民に苦しみをあたえていては意味がありません。私もそう思ったからこそ、養護院や救貧院の改善をうつたえたのですが、力およばず……」

 教会をしゆつぽんした時のことを思い出したのか、アナリーが悔しそうにこぶしを握りしめる。

「ちなみにアナリーが改善を訴えた相手というのは、責任者のマティアスだったの?」

「いいえ、当時はまだお父様がご存命でしたので、お父様の方にご相談しました」

 ん? マティアスのお父さん?……ああ、そういえばくなられたと話していたっけ。

 横で話を聞いていたレナルドのまゆがピクッとね上がった。マティアスとの会話で気まずい思いをしたせいで、お父さんのこともずっと気にかかっていたのかもしれない。

「アナリー、その点についてくわしく教えてもらえないか? なぜ君が、平民であったマティアスの父に救貧院の改善を進言したんだ?」

「平民?……いいえ、私の言うお父様とは、元すうきようこうしやく家ご出身のクレマン様の方です」

「え? 待って。お父さんが平民の方とか公爵の方とか、どういうこと?」

 マティアスは救貧院に入っていたこともあるそうだから、平民の出身でもおかしくない。でも、そのお父さんが元枢機卿ってどういうこと? まさか元枢機卿もいつしよに救貧院にいたの?

 混乱する私を見て、アナリーが少し気まずそうな顔をする。

「マティアス様は救貧院で実のお父様を亡くされたのち、聖職者の道に進まれました。そこでマティアス様の才覚にれ込んだ枢機卿のクレマン様が、周囲の反対を押し切ってご自身の養子にむかえられたそうです。ですが、それからすぐにクレマン様が他界されたため、後をいだマティアス様が枢機卿に就任なさったのです」

「ああ、そういうことね」

 やっとなぞの関係が理解できてスッキリした。しかし次の瞬間、私は練兵場で耳にしたうわさを思い出して、ゴクリとツバをみ込んだ。

「養父殺し……」

「お姉様? どうしてその二つ名を……」

 口からこぼれた単語のれつさにアナリーがどうようし、レナルドとリアムも息を吞む。

「あ、いや、たちがマティアスをかげでそう呼んでいるのをぐうぜん聞いてしまったの」

「そうですか、まだそんな噂が……」

「アナリー、何か知ってるの?」

 つい気になって聞くと、アナリーは悲しそうに目を伏せた。

「私が知っているのは、マティアス様を見守るクレマン様の目がいつもすごくやさしかったことくらいです。マティアス様は望まれて公爵家の養子になられましたが、その直後にクレマン様が亡くなられたことを受けて、様々なおくそくが飛びうようになったのです」

「まさか本当にマティアスが何かしていた可能性は……」

「やめろ! あいつはそんなやつじゃない」

 ドンッとテーブルをたたく音がとなりで上がった。え、何?

 見ると、レナルドが青ざめた顔で下を向いていた。その握りしめた拳が小刻みに震えている。

「に、兄さん……?」

 いつも優しい兄の急変に、リアムがプルプル震えている。われに返ったレナルドが慌てて拳を開き、テーブルから手をはなす。

「すまない。今日は少しつかれているみたいだ。悪いが、先に帰らせてもらってもいいか?」

「レナルド、どうしたの? あなた、今日ずっと変よ。やっぱり過去にマティアスと何かあったんじゃ……んっ!」

 私の疑問はちゆうふうじられた。レナルドが私のくちびるに人差し指を押し当ててきたのだ。こちらに向けられたひとみはひどく切なげで、今にも泣き出しそうな光を宿している。

 あの責任感のかたまりのようなレナルドが話を聞くのもつらくなるほど追いめられるなんて……。本当に何があったの?

 かすかなぬくもりを残し、レナルドの指が離れていく。彼はそのまま部屋を出て行った。

 ハッ! ボーッとしてる場合じゃないわ!

「ごめんなさい、アナリー。話の続きはまた今度お願いできるかしら?」

「は、はい。私でお役に立てることであれば、いつでも」

「ありがとう! リアム、私たちはレナルドを追いかけるわよ!」

「う、うん」

 リアムはまどいつつも、おとなしく私のあとについてきた。あんな状態のレナルドを一人にするのは心配だと、彼も思ってくれたらしい。

 私たちはげんかんでレナルドに追いつくと、おどろいているダミアンにあいさつをしてから三人で馬車に乗り込んだ。しかし、会話はない。王宮までの道すがら、レナルドはずっと思い詰めたような表情で、暗くなった窓の外を見つめていた。

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