人生は思いがけないことの連続だ。そのことを私は二度目の人生で嫌というほど実感した。
なんの因果か、前世で経営コンサルタントをしていた私が乙女ゲームのラスボス・ヴィオレッタ王女に転生してから、もうすぐ一年になる。
その間、ゲームの制作者を名乗る攻略キャラに命を狙われ、ギリギリのところで破滅を回避できたと思ったら、今度は女王になれって……人生は山あり谷ありと言っても、アップダウンが激しすぎるでしょ! もう息切れ寸前よ!
夜中の王立図書館で辺りに人がいないのをいいことに、私は「はぁぁぁー」と肺の奥から絞り出すようなため息をこぼした。目の前にあるのは、ほぼ白紙の辞退届(仮)。
明日の朝議で、お父様は国王試験の勝者となった私を正式に次の王に任命する気らしい。そんなことになってしまったら、いよいよ逃げ場がない。そうなる前に、なんとか辞退しようと思ったんだけど……。私はテーブルの横に積んだ本を見て、痛むこめかみを押さえた。
薄々気づいてはいたけど、国王の辞退届は需要がないらしい。儀礼の書棚に置かれていた本を一通り持ってきたものの、そこには時候の挨拶とか赴任の挨拶しか載っていなかった。
前例がない場合、どうやって明日の朝議で切り出せばいいだろう。元ワガママ王女の私には高すぎるハードルを前にして、頭を抱える。その時、ふと手元に影が差した。
「ヴィオレッタ、こんな夜更けに何を調べてるんだ?」
顔を上げると、澄んだエメラルドの瞳と目が合った。彼は私の従兄に当たる先王の遺児にして、攻略キャラの一人──レナルドだ。
寝る前のひとときを利用して、図書館に寄ったのだろうか。普段よりラフな格好で、淡い金髪も少し乱れている。その様は端整な顔立ちと相まって、陽の下で見るより色っぽい。
「レナルドこそ、こんな時間にどうしたの? 明日の朝議に備えて、早く寝た方がいいわよ」
「ああ。頭ではわかっていても、明日のことを考えると、なんとなく眠れなくてな。実際、俺の嫌な予感は当たっていたようだし」
レナルドがもの言いたげな視線をテーブルに向ける。……あっ!
私は慌てて辞退届(仮)を裏返した。それでも「女王の辞退」と書かれた部分をバッチリ見られていたらしい。レナルドが物憂げなため息をこぼす。
「その書類はなんだ? いい加減、女王になる未来を受け入れたらどうだ?」
「む、無理よ、私に女王なんて!」
「なぜだ? 国王試験の勝者はあんただろう?」
「それはそうだけど、私みたいな凡人に、女王のような大役が務まるはずないもの!」
「………………」
レナルドが腕を組み、なんとも微妙な表情でまじまじと私を見下ろす。
なんで? 私、何も変なことは言っていないと思うんだけど。
夜中の図書館にぎこちない空気が流れた、その時だった。
「ねぇ、ヴィオレッタは、その……女王になるのが嫌なの?」
おずおずとした問いかけに、ハッとして振り返る。いつの間に来たのだろう。レナルドより少し濃い金髪と深緑の瞳が印象的な少年──従弟のリアムが後ろに立っていた。
こんな時間に図書館で会うなんてめずらしい。私とレナルドの意外そうな視線を受けてリアムは少し緊張したのか、着ていた白衣の袖を握りしめながら「えっと……」と続ける。
「盗み聞きみたいなことをしちゃって、ごめんなさい。明日のことを考えていたら、眠れなくなっちゃって……。気分転換に図書館に来たら、二人の声が聞こえたものだから、つい……」
なるほど。最近のリアムは「脱引き籠もり」を目指して頑張っていても、朝議のようにたくさんの人が集まるイベントにはまだ抵抗があるらしい。
「リアム、大丈夫? どうしてもつらいなら、明日は無理しなくてもいいんじゃない?」
「そうだぞ。無理に朝議に参列しなくても、少しずつ人と話すことに慣れていけば……」
「二人とも心配してくれてありがとう。でも、僕だって王族の端くれだもん。明日は頑張るよ」
ああ、我が子の成長を見守る親って、こんな気持ちなのかな。リアムの笑顔がまぶしい。
レナルドも私と同じことを思ったのか、目を細めて弟を見ている。リアムはそんな私たちの反応が気恥ずかしかったのか、コホンと咳払いをして、真面目な顔つきに戻った。
「僕のことより、今大切なのはヴィオレッタの方だよ。ねぇ、女王になりたくないって、本当なの? どうして?」
「俺もその理由を知りたいな。今度は冗談抜きで」
「え……」
レナルドにはさっき真面目に答えたはずなのに、信じてもらえなかったのだろうか?
従兄弟二人から真剣な目を向けられ、言葉に詰まる。
私が女王になりたくない本当の理由を一から説明するには、前世の秘密にも言及しなきゃならない。さすがにこの二人だって、そんな話を聞いたら、私がおかしくなったと思うだろう。でも、二人に嘘はつきたくなくて……私は迷った末、本音の一部を口にした。
「私は王にならないわ。私より王にふさわしい人たちが、すでに二人もいるんだもの」
レナルドとリアムが不可解そうに顔を見合わせる。一拍後、兄弟そろって首を横に振った。
「僕に王は無理だよ。明日の朝議に参列するだけでもこんなに緊張してるのに、王として人を率いることなんてできないよ」
「俺も、自分より王の資質を持った人間が目の前にいるのに、出しゃばる気はない」
「いやいやいや! リアムの努力家なところとか、レナルドの柔軟な思考とか、どう考えたって、私より王にふさわしいから! それに私みたいに悪名高い女が王になったら、民も一部の貴族たちもすごく反発すると思うわ」
「そうだな、最初は荒れるだろう。だが、そんな悪評は即位してから実力を示せば、すぐに消えるはずだ。あんたがヴィオラとして、ダミアンやアナリーの信頼を勝ち取ったように」
「待って! あれは身分を隠していたから好き勝手に動けただけで、王とは違うわ!」
「そうか……。なら、あんたは女王にならない代わりに、何がしたいんだ?」
「え?」
思いがけぬ質問に虚を衝かれ、私はポカンとレナルドを見上げた。
「かつてあれほど欲しがっていた王座を拒む以上、あんたは何か別にやりたいことができたんじゃないのか? もし希望があるなら、俺たちにも教えてくれ」
「そんな、私は……」
すぐに言葉が出てこなくて、レナルドから目を逸らす。
思えば、前世の記憶が戻ってからは破滅回避に必死だったし、今は王座を辞退する方法ばかり探していて、その後の生き方をちゃんと考えていなかった。でも、できるなら私は……。
「困っている人たちの力になりたいわ」
それは自然と口をついて出た、私の本音だった。
前世の自分を思い出す。私は社会的に良い行いをしている人たちが報われる手伝いをしたくて、経営コンサルタントになった。その思いは転生しても変わらない。だから……、
「私は人々の抱えている問題を一緒に考えて分析し、解決策を提示するような仕事がしたい。私は、頑張っている人たちに寄り添う生き方がしたいのよ」
青臭いという自覚も、自分の力量が足りていないことも十分にわかっている。それでもレナルドとリアムになら、この思いを理解してもらえる……と思ったのに、あれ?
レナルドはなぜか呆れた様子でこめかみを押さえ、リアムは困ったように眉尻を下げている。
「あの、ヴィオレッタは今、僕たちに将来の夢を語ってくれたんだよね?」
「ええ、そうよ」
「あんたが語った内容は、まさに王の仕事じゃないか」
「はい!?」
ギョッとしてレナルドを凝視する。彼は気にせず、淡々と説明を続けた。
「国内外の問題に対処しつつ、時には民を守る盾となって、彼らが活躍できる環境を整える。あんたのやりたいことは、まさにそういった王の仕事だろう?」
「待って! 規模が全然違うわ! 私の想定してる仕事は、もっとこぢんまりしたものよ!」
「規模の大小にかかわらず、やることが似ているなら、王でもいいだろう?」
「いやいや、責任の大きさが違うから! 一国を背負って失敗なんてできないし!」
「つまり、あんたは少人数が相手であれば、失敗しても問題ないと思っているのか?」
「そ、そんなつもりはないけど……!」
おかしい。私は自分なりに責任感を持って、経営コンサルタントの仕事をしてきたはずだ。それなのにレナルドの正論を前にすると、何も言い返せないなんて……。
答えに悩んでいると、ふと横から肩にポンと手が置かれた。リアムだ。
「ヴィオレッタ、今日はもう寝よう。夜中にあれこれ考えたって、ろくな結論は出ないよ」
「リアムの言う通りだ。部屋まで送って行く。ヴィオレッタ、手を」
「あっ、僕も!」
レナルドとリアムが、座っている私の前に手を差し出してきた。えーと……。
気持ちは嬉しいけど、二人の手を同時に取って歩いたら、エスコートされる貴婦人ではなく連行されるエイリアンになっちゃうよ。ほら、前世でよく見た「エイリアン捕獲!」の図。
いやまぁ、王座から逃げようとしている今の私は、確かに後者の気分に近いけど。
私が手を取るのを二人は静かに待っている。そこにいらついた様子は微塵もなく、こちらに向けられる眼差しはどこまでも柔らかい。
どうせ図書館にいたってろくな資料もないんだし、辞退届(仮)の続きは自分の部屋で考えればいいか。何より今は、ゲームの中で敵対していた二人がこんなにも優しく、私を仲間だと思ってくれている、その気持ちに応えたい。
「レナルドもリアムも、ありがとう」
二人にはなんのお礼だかわからなくても構わない。私はテーブルの上の辞退届(仮)を脇に挟むと、差し出された二本の手に自分の左右の手を重ねた。次の瞬間、同時に握り返された掌の心強さに、思わず微笑む。
こうして三人で穏やかに過ごせる時間は何ものにも代えがたい。私は破滅を回避できた幸せを噛みしめながら、レナルドとリアムのエスコートで自分の部屋に戻った。
***
翌朝、私は侍女たちの手で盛大に飾り立てられ、謁見の間へ向かった。
玉座のお父様を間に挟む形で、左にレナルドとリアム、そして右に私が並ぶ。私は家庭教師のスヴェンを真似た笑みを顔に貼りつけていても、内心は緊張で息が止まりそうだった。
一段下の広間には宮廷を代表する重臣たちが二十名ほど並び、値踏みするような目で私たちを見上げている。この状況下で、リアムは大丈夫だろうか。心配して横を窺うと、彼は今にも卒倒しそうな顔色で、チワワみたいにプルプル震えていた。まずい。
気遣い屋のレナルドが「頑張れ」と目で語りかけている。私も真似して、うなずくことでリアムを応援した。でも、残念! ぎこちない私の様子を目にして、かえって「自分がしっかりしなきゃ」と思わせてしまったのか、リアムはより硬い表情で私にうなずき返してきた。
ごめん、リアム。慣れない人間が余計なことをしない方がよかったかも……。
内心でそっと謝り、おとなしく目の前の重臣たちと向き合う。その直後のことだった。私たちの準備が整ったのを見届け、玉座のお父様がゆっくり口を開いた。
「国家を担う重臣たちよ、今朝は余から皆に話がある。この王国の未来を決める重大な話だ」
広間に緊張が走る。ついに来た。私は背筋を正し、昨夜考えた辞退届を脳内で復唱し始めた。あとはタイミングを見て、声に出して訴えればいい。
「すでに周知の話かもしれないが、先日行った国王試験の中で、余の娘のヴィオレッタが光の乙女の覚醒に成功した。そして、新たに光の乙女となったアナリーもまたヴィオレッタを王に望んでいる。よって、余は一年以内にヴィオレッタに王位を譲ろうと思う」
お父様が一度言葉を切り、皆の反応を窺う。よし、今だ!
「陛下、お言葉ですが」
「お待ちください、陛下。誠に不躾ながら、そのお考えには賛同いたしかねます」
……え? 今のは幻聴だろうか? 私が今まさに言おうとした内容が聞こえてきたんだけど。
出鼻をくじかれ、ビックリして声のした方に目をやる。発言の主は、優美な口ヒゲを蓄えた壮年の貴族。枢密院の代表を務める、レナルド派のデュラン公爵だった。
「デュラン公爵、余の考えに異を唱えるのはなぜだ? 初代乙女がそうであったように、光の力は神に選ばれし者にのみ与えられる力だ。アナリーが覚醒した以上、もはや伝説ではない。ヴィオレッタは初代国王と同じように、真の力を持つ乙女によって次の王に選ばれたのだ。その決定に反対するとは、公爵は余だけでなく、神のご意思にも逆らうつもりか?」
お父様が語気も鋭く反論する。しかし公爵は大貴族の余裕を崩さず、優雅な口調で続けた。
「真の乙女の誕生は紛れもない慶事であり、私もできればその決定に従いたいと思います。しかしながら、ヴィオレッタ様には依然としてラルスと共謀して陛下を弑し奉ろうとした嫌疑がかけられていらっしゃいます。そのような方を王に戴いて、誠によろしいのでしょうか?」
……は? 私は頭が真っ白になった。確かに以前、私の名前でお父様に毒入りの飲み物が届けられたことがあった。でも、あれはラルスが犯人だったと証明されたはずで……。
重臣たちも動揺する中、愕然としている私に代わって反論してくれる人がいた。レナルドだ。
「公爵の受け取った報告はいささか古いように思える。スヴェンが指揮を執って行った調査の結果、ヴィオレッタの無実は証明されたはずだ。まさかその話をご存知ないと?」
「もちろん、そのお話は伺っております。ですが、最近の尋問でラルスは何を聞かれても『ことの真相はヴィオレッタ様にお尋ねください』と答えているとか。そうですよね、スヴェン?」
何それ? 嘘でしょ? 私はスヴェンが否定してくれることを願った。しかし……、
「デュラン公爵のおっしゃったことは事実です。果たしてそれが私たちを惑わすためにラルスが繰り返している戯れ言なのか、それ以外の意図があるのか、私にはわかりかねますが」
スヴェンの答えに、私は頭を抱えた。
ラルスってば、なんて迷惑な! 投獄されてからも紛らわしい発言を繰り返して人の足を引っ張るなんて、どんだけ私を破滅させたいのよ?
「仮にラルスの発言が妄想だとしても、疑いの晴れないうちはご即位に賛同しかねます」
「ならば、あなたはどうすればヴィオレッタの即位に納得するというのだ?」
レナルドがデュラン公爵に問う。公爵の口元が一瞬ニヤッと笑みの形につり上がって見えた。
「私どもは、ヴィオレッタ様が即位なさる条件として、教会の掌握を望みます」
なんですって? 思わず絶句した私への忖度など一切なしで、公爵がきっぱり告げる。
「ラルスが教会の騎士であった以上、教会にはまだ彼の協力者が残っているかもしれません。そういった共犯の有無や教会の資金の流れなどについて監査を入れた上で、ご自身の無実を証明なさってください。それができる方にでしたら、私どもも喜んでお仕えしましょう」
「つまり、公爵は今まで王族が足を踏み入れることを許されなかった教会の領域にまで王族が介入できるようになることを、即位の条件に挙げると?」
「多少人聞きの悪い言い方ですが、概ね間違ってはおりません」
公爵とレナルドのやりとりを耳にし、広間にさらなる動揺が広がる。そりゃそうだ。
公爵はこともなげに言ってのけたけど、教会と王族の関係は複雑だ。表面上は、光の乙女が選んだ王に教会が仕えるという形を取っていても、ひとたび問題が生じた場合、教会は「神に選ばれし乙女」の威光を笠に着て、王族に反発してくる。
そんな教会に単独で乗り込むなんて……。しかも、このやり方には致命的な欠点がある。
「教会に監査を入れ、掌握することの意義は理解した。しかし、それではヴィオレッタが無実であることの証明にはならないだろう?」
私とまったく同じ疑問をレナルドが口にした。
「もし仮にヴィオレッタがラルスや教会と共謀していた場合、教会に赴いて隠蔽工作に走る可能性もある。結局、彼女に教会の監査と掌握を命じても、意味がないのではないか?」
「では、どなたかが見届け人としてヴィオレッタ様にご同行なさってはいかがでしょう?」
公爵がレナルドを見上げ、意味ありげに微笑む。その様子に私はピンときた。
もしかしたら教会の監査も掌握も実はブラフで、レナルド派を公言する公爵の真の狙いは、この見届け人の方にあるのかもしれない。もしそうだとしたら、交渉の余地がある。
「デュラン公爵、私はあなたのご提案に賛成します。レナルドとリアムの二人を見届け人とし、共に教会で監査の任に当たることで、私は身の潔白を証明いたしましょう」
「ヴィオレッタ!?」
レナルドが信じられないといった顔つきで私の方を振り返る。あのスヴェンですら、眼鏡の奥に動揺が走って見えた。だけど、私にとって見届け人の提案は願ったり叶ったりだ。
レナルドを王位に就けたい公爵としては、彼を見届け人として教会に送り込み、私と同じ仕事をさせることで、二人の間に歴然たる能力差があることを示したいのだろう。
その過程で、私がボロを出して自滅すれば万々歳。たとえ無実を証明できたとしても、レナルドの方が私より優れていると誰の目にも明らかであれば、国王試験の結果──ひいては私の即位に異議を唱えやすくなる。どっちに転んでも、公爵の損にはならない。
ただ一つ彼にとって計算外だったのは、私が本気で王位を望んでいないという点だ。私は自らの無実を証明した上で、レナルドかリアムのどちらかを王に推せれば満足なのだから。
ざわつく広間の中、デュラン公爵の探るような眼差しがどんな反論より鋭く私を射貫く。その時間にピリオドを打ったのは、お父様のあからさまな咳払いだった。
「デュラン公爵、そなたはヴィオレッタが教会の監査を通じて自らの潔白を証明し、教会の掌握に成功した暁には、彼女の即位を認めるのだな?」
「……はい、喜んで」
「ならば、余はヴィオレッタに教会の監査と掌握を、レナルドとリアムに彼女の見届けを命じよう。皆もそれで構わぬな?」
宮廷の中枢たる王と公爵の決定に表立って逆らう者はいない。レナルドがムッとした表情で口元を引き結び、リアムが涙目で「無理無理無理!」と唱えていても、そっちは全員で見なかったことにする。私は玉座の前に進み出て、お父様の前で静かに頭を垂れた。
「陛下、どうか私に王命を」
「王女ヴィオレッタに命じる。レナルドとリアムと共に教会に赴き、己の責務を果たせ」
うん、これも乗りかかった船だ。王族が教会を掌握できれば、次の王となるレナルドかリアムの負担も少しは減るものね。私たちみんなの平和な未来のためにも、頑張ろう!
前向きな気持ちになって微笑む。そんな私のことを、レナルドたち兄弟はなんとも言えない表情で遠巻きに眺めていた。