第二巻 プロローグ

こちらの試し読みには、

前作『グランドール王国再生録 破滅の悪役王女ですが救国エンドをお望みです』

1巻の内容が一部含まれます。ご了承ください。











「みんな、聞いてくれ! 『グランドールこい革命』続編の制作が決まったぞ!」

 若い男のかんに満ちたさけびがオフィスにひびく。

 よく知った声でありながら、今となってはなつかしい、かつての自分自身の声。そのセリフがのうによみがえったしゆんかん、ラルスは「ああ、これは前世の夢だな」と自覚した。

 あの時の気持ちは、今でもよく覚えている。何しろ、初めてかくからシナリオまで手がけたおとゲームがヒットしたのだ。言葉にならないくらいうれしかった。

 しかし、そんな歓喜の思い出はすぐ別のおくえられた。

 あれは続編の展開について仲間たちと語り合い、最高の気分で会社を出た晩のこと。ねむり運転だったのか、とつぜん歩道につっこんできたトラックにはねられた。

 そのあとのことはラルス自身もよく覚えていない。血で真っ赤に染まった全身が近くのショーウィンドウに映って見え……「この画像、何かのスチルに使えるな」と痛みの中で考えたのが本当のさいだったか。

 次に気づいた時、ラルスは「グランドール恋革命」のこうりやくキャラに生まれ変わっていた。

 そう、自分が愛情を込めてつくったゲームの世界に転生したのだ。そして……。


しゆうじん番号二四六〇一、起きてるか? 来客だ」

 看守の野太い声で、ラルスはハッと目を覚ました。

 視界に飛び込んできたのは、ショーウィンドウに映る血まみれの姿ではない。かたいベッドの周りは、ごついてつごうのはめられたとびらと冷たい石のかべで囲まれている。

 ここはかんごくだ。見た目も設定も、前世の自分が決めた通りに再現されている。ただしゲームがシナリオ通りに進んでいれば、今ここに入っているのは別の人間だったはずだ。

(ヴィオレッタ……彼女はなんの権利があって、俺の世界をめちゃくちゃにしたんだ?)

 シナリオ通りにいかなかった過去を思い出し、ラルスは奥歯をギリッとみしめた。その耳に、コツコツと規則正しい足音が近づいてくるのが聞こえた。ああ、まただ。

 ラルスはベッドから起き上がり、背筋を正した。やがて鉄格子をへだてた先に、一人の男が現れた。しつこくかみを後ろで一つに結び、ぎんぶちの細い眼鏡をかけている。その整った顔には作り物のようなみがりついていた。それもまた、前世の自分が考えた通りに。

「連日このような場所までご足労いただききようしゆくです、スヴェン先生」

「いいえ、これが私の仕事ですので、お気になさらず。それより、あなたがこの監獄に入ってからもうすぐ一ヶ月がちます。そろそろ真相を話す気になってくださいましたか?」

 このやりとりも何度り返したことだろう。スヴェンが笑顔の下にじやつかんいらちをかくしながら聞いてくる。ラルスはこみ上げてきたため息をみ込み、かたをすくめた。

「何度ご足労いただいても、俺から言えることは一つだけです。ことの真相はヴィオレッタ様におたずねください。彼女がすべてをご存知です」

 スヴェンの笑顔がわずかにくもって見える。しかし、ラルスとしてはほかに言えることがない。自分が国王の暗殺に手を染めたのも、今こうして投獄されているのも、すべてヴィオレッタがゲーム一周目のラストをめちゃくちゃにしたせいなのだから。

 ラルスとしては、ヴィオレッタがめつかいしたあげく、ヒロインのアナリーを差し置いて攻略キャラのだれかとくっつく未来なんて許せるはずがない。それは作品に対するぼうとくだ。なんとしてもしなければならない。そのためにも……。

(俺はにかける)

 だいじよう、あきらめるにはまだ早い。

 この世界には、ゲーム制作者の自分しか知らない真実がまだ隠されているのだから。それこそゲームの二周目以降で明かされる、とびきりの真実が……。

 ラルスは監獄でのじんもん中だということも忘れ、口のはしを笑みの形につり上げた。その姿を目にしたスヴェンの笑顔がめずらしく引きつって見えたのは、きっと気のせいではなかった。

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