朝の八時。美羽がそわそわとしながら朝食のトーストを食べている。
「なあ、そんなに落ち着かなくてても、朝の十一時には始まるんだろ?」
「うん。だから、早いお昼御飯お願い。ぶっ続けでやるから」
「駄目だ。ちゃんと十二時に飯を食うぞ。そして、ゲームはそんなに長時間やるな」
俺の苦言にも妹は、ぶーぶー、と文句を言う。夏休み中の家事をお前は手伝っていないだろ、と言おうと思ったが、それでムキになって手伝われても邪魔になるならと黙る。
「全く。分かったよ。じゃあ、簡単にチャーハンな」
「わーい、お兄ちゃんありがとう」
全く、子供なんだからと呟く。その後、家事を終えて、昼食を作りながら夕飯を考える。
今日の夕飯は、暑いから素麵でいいか。それと湯を沸かす間に作れるメニューで栄養バランスを整えれば。バンバンジーや揚げ物、ナスの漬物なんかを添えればいいだろう。美羽の好きな搔き揚げも用意すれば、二階から下りてくるだろ。カリカリの揚げ物をつゆに浸して食べるのが至福。揚げ上がったタイミングでゲームを中断するだろう。
美羽も早く食べられるし、と妹に甘いなと思う。
そして、十一時。俺は、VRギアを着けて、ベッドに寝転がる。起動と共に催眠誘導が始まる。感覚的には、体は寝ているのに、頭は冴えている感じだ。それから視界が広がり、真っ白な空間へと出る。
『名前をどうぞ』
機械的な女性の声に促されるままに、目の前に現れた半透明なキーボードに名前を打ち込む。VRに慣れない中で、ゆっくりと自分の名前【SYUN】を打ち込む。すると、半透明な画面が切り替わり、チュートリアルの選択が出る。俺は、操作以外は攻略サイトから事前に情報を得ている。必要ならば、静姉ぇや美羽に聞けばいい、とスキップを選択する。
──そして、開ける光景。
周囲には、溢れ返る人。沢山の人がログインして来たようだ。そして、俺は初めてのVRの世界に降り立った訳だけど、体感がおかしい。まあ、VR特有の違和感だと思いたいけれど……何故か髪の毛が伸びていて、なんだかお尻にも丸みが……どういうことなんだ?
そう考えている時、ぽーん、ぽーんと連続性を持つ音が聞こえ、慌てて周囲を見回す。
視界の端に浮かび上がるアイコンを慌てて目で追い、音声入力でそれを選択する。
「チャット、オープン」
『あっ、お兄ちゃん。繫がっている?』
「なんだ。美羽か。驚いたぞ」
今は、現状把握できていない状況で、思考が中断される形となる。だが、見知った相手の声を聞いたために大分落ち着いた。
『こっちも人が多くて分かんないから、お姉ちゃんと北の大聖堂前で待ち合わせしよう。待ってるね』
「分かった、すぐ行く」
俺は、すぐにその場を移動した。人ごみは嫌いだし、何より周囲が俺を見ている。
辿り着いた大聖堂前は、多くの人が待ち合わせをしており、その中から美羽を探す。
『ねえ、お兄ちゃん。もう着いた?』
「ああ、着いたが……どこだ?」
『聖堂前の像の下。白い髪だよ。お姉ちゃんは、水色』
やっと見つけた。確かに白だ。その隣には、水色の髪に魔法職の人らしいローブの人がいる。若干垂れ目の眼の下に泣きボクロのある美女は、配色の違いはあれど、見知った人物だ。その人たちに声をかける。
「美羽で合っているか?」
「えっ、ハイ。ミュウです、が、どちら様ですか?」
「俺だよ、お前の兄の峻だよ」
「えっと? 峻ちゃん? お姉ちゃん、しばらく会わなかったから分からなかったよ。いつの間に女の子になっちゃったの?」
「いや、お姉ちゃん、違うから!? これそういう問題じゃないから! なんで、お兄ちゃんがお姉ちゃんになっているの!」
姉、と言われて、自分の胸に手を当てて軽く撫でる。胸部の起伏は殆ど無いが、それでも柔らかな感触が掌に返ってくる。その手を下へとスライドさせると、ほっそりとした腰周りの柔らかい反応が返ってくる。服の上からでも胸部の柔らかな弾力に戸惑いを覚える。
「いや、考えたくないんだが、カメラで撮影した姿を修正無しでキャラエディットした時、身体補正が掛かったのかもしれない。主に、女性的な方向で」
考えたくなかった。確かに女顔かもしれないが! これは酷い。システムのバグだ。なんでこうなるんだ! と心の中で叫ぶ。
「それに、お兄ちゃんの声も高くなってない? なんか、可愛い声になったかも」
確かに、俺の声は、若干高くなっている。いわゆる、アニメ声に近くなってしまった。
意識して声を作れば、リアルでも同じ声を出すことが出来るので違和感は薄い。
この声の所為で、学園祭の仮装コンテストに出場させられたんだ。仮装なら女装も入るだろ、と有名女性声優の演じるキャラの衣装を着て、無理矢理ステージに立たされて……誰一人男と気づかず、優勝して終わった。
あの黒歴史が俺だと特定されたら、もう首を括るしかない。ちなみに、コレが巧の宿題消化を手伝わされた脅しのネタだ。
「うーん。すっかり美人になっちゃって、お姉ちゃんは嬉しいな。峻ちゃん、いや、今はユンちゃんかな?」
……はい?
「だって、名前の所がユンになっているよ」
「えっと、あっ、本当だ。ユンお姉ちゃん?」
SYUNと打ったはずなのだが、不慣れなVRの操作で打ち損じたようだ。最初のSが抜けてYUN──ユンと名前が決定している。
「おい、もう、このキャラ消すぞ!」
「まあまあ、このゲームって基本ネカマが出来ないんだから、良い体験だと思おうよ。ユンお姉ちゃん」
「それ消したら──お姉ちゃん権限で黒歴史を晒すよ」
うわっ、静姉ぇ。いや──今はセイ姉ぇが本気だ。セイ姉ぇが本気の時は、後が怖い。結構しつこいのだ。普段温厚な分、我が儘を通そうとする時は、徹底的なのだ。
「わ、分かった。まあ、俺は、演技とかはしないで適当にやるよ。それで、二人はもうセンスを獲得したの?」
「うん。初期のセンスを獲得すると、同時に初期武器も貰えるからね」
「じゃあ、俺もセンスを取るか」
俺は、少し二人に待ってもらってセンスを取得する。
「ねえ、ユンお姉ちゃんは、どんなセンス構成?」
「うん? 俺の構成は、【弓】【鷹の目】【魔法才能】【魔力】【錬金】【付加】【調教】【合成】【調合】【生産の心得】だぞ」
なんか、ミュウが口をぽかんと開けている。そしてセイ姉ぇは、困ったような顔をする。
「ねえ、ユンお姉ちゃんは、何を目指そうと思っているの?」
「うーん、サポートかな? ちゃんとテンプレを見てアーツやスキルに必要な【魔力】と魔法を使うベースの【魔法才能】。それに対応する魔法の種類で【付加】を──」
「……お、に、い、ちゃんの馬鹿っ! そんなゴミセンスばかり集めて!」
うん、ゴミだと知っていて敢えて隙間産業的な意味合いで、と反論しようとしたが──。
「良い!? 【弓】ってコスパ最悪じゃない! 【鷹の目】は、遠くの物がよく見えたりするだけで、全然ユニークセンスじゃないよ! それに、【錬金】ってただの物質変換センスで変換率悪いよ! 【付加】は、中途半端だし。【調教】は、MOBの調教の成功率は高くないから死にセンスだよ。生きてるセンスって魔法系と生産系のセンスだけじゃない! 一緒に冒険できると思ったのに!」
「えっと、直訳すると【弓】は消耗品である矢とセットじゃないと使えないし、【鷹の目】も見通すだけで余り便利なセンスじゃない。【魔法才能】は【付加】や【錬金】でも多少育つけど、効率が悪い、ってところかしら?」
丁寧にセイ姉ぇが説明してくれた。
つまり、俺は足手纏いにならないようにサポートセンスを選んだつもりが、完全に足手纏いでサポートにすらなっていないようだ。更に、止めの一言が俺を襲う。
「【合成】や【調合】でできるアイテムって大体お店で売っているんだよね。だからゲーム初期では、あまり重要じゃないかも」
はい、俺の存在意義がなくなりました。だからと言って、衆人環視の中で落ち込んでいる訳にもいかない。
全プレイヤーの初期の所持金は、1000G。装備を整えるべく、町を巡る。
取得したセンス【弓】のために鉄の矢を三十本一セットが30G。それを四セットで120G。そして【合成】と【調合】の初期の生産キットで、300Gずつの600G。初心者用ポーションが三十本で150G。──合計、870G。残金は、130G。
普通のテンプレ編成の場合、センス取得時の初期武器を二束三文で売って、店売り武器にして消耗品を買い揃えたとしても500Gは残る計算だ。
そして、弓のコストパフォーマンスの悪さの理由は、矢にある。矢とは、使い捨てなのだ。放った矢は回収できないのが基本。そして初期の敵を矢だけで狩る場合、三本使って一体倒す。その時のドロップアイテムは最大で3G、最低で1G。それは全て当たった場合であり、外せば、当然儲けはない。
俺は、生産センスを持っているので、ドロップアイテムを別のアイテムにしたとしても、大した儲けにはならないだろう。
「……つまり、初期のコストパフォーマンスの悪さが原因なんだな」
「そう。しかも魔法は、センス自体のレベルを上げていけば、若干の追尾機能も付いたりするけど、弓はそういったものは全然ないの。矢の軌道はほぼ直線。だから弓だけは大分プレイヤーの能力依存になっちゃうわけ」
「……ま、まあ、モーションアシストもあるから初心者でも最低限にはできるはずだよ。だから気を落とさないで、ユンちゃん」
「あ、ああ……」
さっきまで一緒に冒険できるとはしゃいでいたミュウに説教されている。俺がゴミセンスを取ったのがそんなに気に入らないのだろうか。いやまあ、テンプレ構成を聞いた上でこれを取ったのだ。怒られたって仕方がない気がする。
「いいから狩り行こう。戦闘のチュートリアルを早く済ませちゃおう。私、午後に友達と狩りに出かけるから」
「……お、おう」
セイ姉ぇ、助けて。と視線を送るが苦笑いされるだけだった。
俺たちは、初期の町──通称、第一の町──の外壁から外の平原フィールドへと出た。このマップでは、平原に居るMOBは、全て初心者プレイヤー向けであり、更に東西南北にそれぞれ道がある。
β版では、東方面の攻略が盛んで、南北は高レベル帯だったために、攻略が手つかず。西方面は、採取系のアイテムが豊富だが敵MOBのバランスが悪いそうだ。
「先ずは敵を倒してみよう。お兄ちゃんは、弓で攻撃して、お姉ちゃんは、魔法でお願い」
「了解」
「分かったわ」
それからしばらく狩りにいそしんだ訳だが、妹が剣を振り回し、草食獣という名前の、見た目草食系のMOBをバッタバッタとなぎ倒し、セイ姉ぇが水の弾丸を打ち出す。俺は、矢を射るのだが……
「全然、当たらねぇ!」
セイ姉ぇは、同じ射程2メートルほどで魔法を簡単に当てるのに、同じ遠距離攻撃持ちの俺は、2メートルでも外す。そして外した矢は、使い捨て。悪い。非常にコスパが悪い。
そして何より、矢が切れたら、いちいちインベントリから補充をしなければならない。
「面倒くせぇぇ!」
狙いを付けずにどんどん矢を打ち出していくが、当たる気配はない。当たり易い位置まで自然と足が進む。
「お姉ちゃん、そんなに前に出たら──」
「ここなら、当たっ──!」
矢を射る俺に向かってくる草食獣に驚き、避けようと半歩下がり、そのまま尻餅をつく。
「──危ない! 《アクア・バレッド》」
俺へと体当たりをしてくる草食獣に向かって水の弾丸が打ち出され、敵は消滅する。
「ユンちゃん、不用意に近づいたら駄目でしょ。大丈夫?」
セイ姉ぇは、腰を屈めて尻餅をついた俺を覗き込んでくる。その時、首筋のローブの間から白い首筋となだらかな鎖骨がちらりと見えて、少し視線を外す。やっぱり大学生になると違うのかな? と少しセイ姉ぇの色気を感じ取る。
「むぅ、だからゴミセンスなんか取るからだよ。矢全部使い切ったでしょ。じゃあ最後に必殺技──【アーツ】。ちょうど【剣】のセンスが5になったから……」
何か、俺を追い立てるように声を上げて、立ち上がらせる。
ミュウは、徐に草食獣に近づく。近づいて剣を正眼に構えた、と思ったら、流れるような三連撃を繰り出す。振り抜かれた剣の軌道は、薄い銀色の光を帯びているように見える。
「これが【アーツ】ね。ユンお姉ちゃんも【弓】のセンスを上げれば、そのうち覚えると思うけど、私は、早めのセンス切り替えをお勧めするな」
「ちなみに、センスは10レベル毎にSPを一つ貰えるの。上位センスは、レベル30くらいで発現するから」
「分かった。ありがとう」
兄妹三人での狩り。得たアイテムでは、弓矢代には遠く及ばず。これはもう生産職でお金を貯めつつ、センス総入れ替えでもしないといけないように感じた。
●
ミュウとセイ姉ぇと別れた俺は、ステータスを確認しつつ町に戻った。
俺のセンスは、こんな感じだ。
所持SP0
【弓Lv3】【鷹の目Lv2】【魔法才能Lv1】【魔力Lv1】【錬金Lv1】【付加Lv1】【調教Lv1】【合成Lv1】【調合Lv1】【生産の心得Lv1】
狩りの結果、全く育っていないのだ。ミュウは【剣】が5、【鎧】は3。時折、回復や魔法も使っていたので、魔法系のセンスも育っているだろう。セイ姉ぇは、【魔法才能】が3、【魔力】も3。そして【水属性】5という具合だ。というのだから、俺の総合レベルの低さが窺える。
俺は、町の郊外の広場に座り、色々と試してみる。
先ずは【錬金】センスからだ。
このセンスの特徴は──物質変換だ。だが実際には、名前とかけ離れ、不遇なゴミセンス扱いである。試しに、草食獣より手に入れた胆石、毛皮、骨がそれぞれ五十個ある。これは姉妹たちのお情けだ。
メニューより選択すると、スキル欄に【物質変換】のスキルが存在した。スキルは、【物質変換】を選択すると、次に対象の選択へと移る。リストから胆石を選択。
消費画面では、胆石×10と表示された。これは、物質変換で消費するアイテムなのだろう。俺は、躊躇わずに、実行する。
そうして変換されたアイテムは、薬石というものだ。それが一個。
いやまぁ、胆石って漢方薬になったね。うん、ゲームだからその辺は突っ込まないでおこう。
その他にも、毛皮十個で物質変換したら、大きな毛皮が一つ。骨の場合は、「十個消費して大きな骨」と、「一つ消費して骨粉二つ」の二種類の選択肢があった。
「なんで、骨で変化先が増えたんだ? センスのレベルが上がったのか?」
レベルが上がったかと思い、ステータスを確認したが、レベルは1のままだ。
「消費するアイテムの数が違うし。骨粉十個の場合は──」
骨を骨粉にし、骨粉に再度【錬金】を施す。結果、骨に戻った。
【錬金】の物質変換を考察した結果は、二種類。上位と下位の物質変換に分かれる。上位の物質である薬石や大きな毛皮を生産するのに、十個のアイテムで上位一つになる。
そして、下位物質である骨粉は、変換率二倍。
センスを成長させれば、変換率が変わるのか、別の変化先が生まれるのか分からない。だが、現状【錬金】センスのレベル上げに使えるアイテムが少ない。
「狩りで敵を倒せないのに、どうやってアイテム集めるんだ。まぁ、後で考えよう」
これは後回しで次は、【付加】をやってみよう。
【付加】と言えば、RPGの定番であるエンチャントやバッファ、バフと呼ばれるステータス上昇系の魔法センスらしい。
試しに、自身を対象にエンチャントを掛けてみる。
やり方は【物質変換】とは違い、対象を意識して、スキルリストにある魔法スキルを唱えるだけで良い。
MPが殆ど持って行かれた上、得た効果は微々たるものだった。それに継続時間が六十秒と短く、実戦で使えるか疑問だ。ただ、MPの消費量が大きいってことは【魔力】も成長するってことだ。MPの回復を待って、他のエンチャントを試してみる。
自身の体には、防御エンチャントや速度上昇エンチャントを施すが、すぐに効果は切れてしまう。ただ気がついたことだが、座って休んでいれば、MPの回復は、立っているより若干早い。
じっと座って、自分にエンチャントを使い続けていれば、気づいた時には【魔法才能】が2で【魔力】が4にまで成長していた。
エンチャントの種類は、赤色のATK、青色のDEF、黄色のSPEEDの三種類。センスレベルを上げれば、ステータス上昇効果の増大、効果時間の延長が見られるだろう。時間を見つけて適当にエンチャントしてれば、レベル10くらいまで成長するだろう。
【調教】に関しては、完全に死にセンスだ。今の俺では、MOBを倒せる自信がない。
そして【合成】と【調合】にもアイテムが必要だが素材が無い。うーん、アイテムが無い。どうするべきか?
その時、ぽーん。とチャットが来た。俺のメールアドレスを知っている人間は、このゲーム内でも事前登録しておけば、チャットが可能なのだ。
チャットの主は、巧だった。
『おう、ログインしてるか?』
「ああ、なんだ? しているぞ」
『なら今から会わないか? フレンド登録するために。ちなみに今の俺の名前は、タクな』
「了解。じゃあ、場所は……」
それから俺は巧を待つ間、エンチャントを続けていたら、レベルが一つ上がった。
『なあ、峻。どこにいるんだ?』
「ユンって名前のキャラだ。黒髪で今エンチャントしている。今は、赤色に発光中」
自分でもシュールだと思う中、見知った少年と目が合う。その相手は、俺を見て一言。
「あ、ああ。ユンってお前……何で女キャラ」
「……知らん。機械の誤認だ」
「いや、最後に見た時より、美人度二割増しで美少女だぞ。胸ないが──「ふんっ!」」
俺は、攻撃のエンチャントの状態で、タクの脇腹にボディーブローを仕掛ける。脇腹に一撃食らった巧だが、質素で硬い鎧は、俺の拳を弾く。むしろ、俺の手が痛い。
「大人しく殴られろ。……俺だって気にしているんだ。廃ゲーマー」
「いいだろ。でも、何でユンって名前なんだよ。完全に女だろ。見た目からしても……」
「入力ミスだ」
分かっているさ。普段よりも目が大きく、誰が見ようと女の顔だ。体付きも女性のそれと同じだ。
「想像してみろ。自分の妹にお姉ちゃんと言われる瞬間を。背筋に寒気が走るぞ」
「そりゃ、ご愁傷様」
「更に、敢えて隙間産業的センス取得したら、妹にチェンジを要求されるし」
「いや、ゴミセンス取る方が悪いだろ」
くっ、これだから廃人ゲーマーは、ゲーム効率を重視する。
「ちなみに、今のセンスはどんな感じだ?」
「ああ、こんな感じだ」
センスのステータスを巧、もとい、タクに見せ──その第一声がこれだ。
「うわっ、ひどい」
「泣くぞ! そんなにひどいのか!?」
「【弓】は、戦闘センスの中でも非効率の代名詞だし。大体【錬金】なんて非効率以外の何物でもないぞ。【調教】を単体って……早く何かのレベルを10にして控えにしろよ」
「うっ……戦闘じゃあ金稼げないし、今は所持金が130G」
「お前、何気に縛りプレイしてないか?」
断じて、そんなことしてません。そもそも、そんなつもりもありません。
「やばい。妹にはチェンジを要求されるし、静姉ぇには苦笑いされる。自信なくすな」
「元々、ゲーム始めたばかりで自信なんかあるわけないだろ」
「むぅ、そこは慰めるとかしろよ。普段の兄としての尊厳とかあるんだよ」
膝を抱えて座り込み、隣に立つタクを睨みつけるように見上げるが、タクはただ頰を爪で搔いているだけだ。
「慰めねぇ……美少女で良かったな。あのおっとり系美人のセイさんに、元気系美少女のミュウちゃん。お前はさしずめ、クール系の美少女か?」
「うるせぇよ。と言うよりも全く慰めになってないから」
それに、そんなことないだろ、と周囲に視線を向けると、周囲のプレイヤーが一斉に顔を背ける。……いや、偶然だよな。偶然だ。そうに違いない。
「なあ、相談なんだが、効率のいい稼ぎ方って無いか?」
「うーん。それってレベル的な意味か? それとも金的な意味?」
「両方だ。先立つものがないんだから」
両腕を組んでうーんと考えるタク。その時もエンチャントを掛けて青色に発光する俺。考えると何とも奇妙な組み合わせだ。
「あるな。戦闘しないんだったら、平原を西側に進んだ林で採取系アイテムが手に入る。【調合】センスもあるし、レベル上げも兼ねて加工して売るのが良いんじゃないか?」
「そうか、サンキュー。そうしてみるわ。他にアドバイスは?」
「敵は、昼間の出現率は低いけど、夜になると増える。だからその点気を付けろ。って言うか。どうする? 手伝うか?」
「いや、相談に乗ってくれただけで十分だ。ありがとう。多分、一人じゃ無理だったわ」
「別にこれくらい普通だ。じゃ、フレンド登録。暇になったらレベル上げ手伝ってやるよ。俺がこのゲームに誘ったんだから」
全く、リアルでは俺に迷惑ばかり掛けるのに、ゲームだと頼もしくなるんだもんな。少し不服だ。
「じゃあ、お前の活躍を期待してるぞ」
「俺は、ミュウやお前のような廃人じゃないから無理だ」
互いに軽い冗談を言って別れる。先ほどよりも軽い足取りで、町の西門を抜けて西へと向かう。目指すは、採取アイテム。
平原の草食獣を無視して突き進む。どうやら、ノンアクティブ──近づいても敵からは攻撃しないタイプのMOB──らしい。
そのため、無視して平原を進むことができた。
時折、速度エンチャントで黄色の光を発しながら進む。更に、平原は広いので【鷹の目】の成長のためにも遠くのMOBや風景を眺める。
みるみるレベルが上がるぞ、ミュウとセイ姉ぇとの狩りが何だったのかと思うほどセンスのレベルが上がる。
道沿いには、採取アイテムは無さそうだが、鷹の目で林の奥に目を凝らすと、少し離れた場所が採取ポイントのようだ。さあ、採取採取と。
木の根元や地面にアイテムがあると感じるのだ。自然とそこに意識がいく、不思議な感覚。これがセンスの補正なのだろうか。
採取したアイテムは、木の枝を始め、キノコ、薬草、石、野草、鳥の羽根と、種類だけは豊富だった。大体それぞれ十個ずつくらい。後は、特定の場所の土から回収できる──腐葉土。そのまんま過ぎて何の用途があるのか、不明。
結構な種類のアイテムが集まった。この情報を教えてくれたタクには、感謝が尽きない。そして俺は、林に設けられた非戦闘エリア──セーフティーエリア──で休憩していた。
すぐに【調合】には入らずに、今更ながらメニューを食い入るように見返している。
スキル欄を見ると、まだ戦闘技能の【アーツ】は取得していない。その他の、【合成】や【調合】のスキル欄には、既に【レシピ】が存在した。
ちなみに、センスのステータスは、以下の通り──
所持SP0
【弓Lv3】【鷹の目Lv5】【魔法才能Lv4】【魔力Lv7】【錬金Lv1】【付加Lv6】【調教Lv1】【合成Lv1】【調合Lv1】【生産の心得Lv1】
順調とは言い難いが、最初に悩んでいた時よりマシだ。それじゃあ、【調合】と【合成】を伸ばしていくとするか。
先ずは、【調合】の基本セットを取り出し、並べてみる。
出てきたのは、お椀サイズの乳鉢と乳棒。加熱用の鉄製の小さな容器とそれを支える三脚、加熱用の謎の熱源、そして、薬を包むような紙やガラス容器が収められた箱だ。
ガラス容器は、取り出すと新しい容器が生まれ、手に持っている容器に何も入れないままだと消滅し、箱の中に浮き出るように補充される。
「こういう所は、ゲームだよな。まさにファンタジーだ」
何とも中学生の化学キットのような道具で、ファンタジー定番の薬草を煎じたり、煮たりしていく。攻略サイトでも手作業で可能とのことで実践してみた。
そうして出来たのが初心者ポーション。タダから一本5Gのアイテムになりました。
薬草一つから初心者ポーションが出来るわけだ。【錬金】より変換率が良い。流石は、生産系。
まぁ、錬金も分類的には、生産なのだろうけど。
その後、スキル欄に変化が生まれた。初心者ポーションの【レシピ】が追加されたのだ。
俺は、その【レシピ】を選択し、初心者ポーションを作成する。
物質変換と同じような画面選択をして実行すると、MPを消費して、初心者ポーションが一個出来上がる。なるほど、必ず魔力センスが必要になるのは、こういった理由だったのか。他にもレシピ一覧として、薬石や大きな毛皮、骨粉など今まで生産した物が分類されている。
【調合】を始めとした生産系センスの法則は、アイテムを一度自作すると、レシピが自動で追加されることだ。そして、次回よりスキルによる作成ができる。
錬金も同じということは、どの生産職にも通じるものかもしれない。試しに、幾つかの初心者ポーションを作成する際、少し手順を変えてやってみた。どれも名前は、初心者ポーションだが、回復量に多少の差が出た。
そして、レシピの内容が更新されており、先ほど作った中で一番回復量の多いポーションに更新されていた。
「つまり、スキルによる画一的な大量生産か、手作業による良品質か」
大体の利点はそんなところだろう。初心者ポーションを十個作った時、調合のセンスレベルが上がった。センスの上げ方は分かったことだし、次は【合成】だ。
合成のセンスは、素材と素材で新たな素材、アイテムとアイテムで新たなアイテムを作り出すセンス。こちらは、最初からMPを消費して合成するらしい。とにかく試してみよう。
取り出した合成キットは、魔法陣の描かれたシートで左右に物を置くための場所が指定されているらしい。
「先ずは、定番のポーション同士の掛け合わせだな」
先ほど作った初心者ポーションを指定された位置に置き、発動。
一瞬、白い光を発した後、二つのポーションが消え、なんか……どす黒いポーションが出来上がっていた。
「な、何だこれ? せ、成功か?」
いや、見た目的に失敗だろう。アイテムとして確認したら、毒物だった。HPに継続ダメージを与える状態異常を引き起こす。
まあ、何かの役には立つだろう、と思い、それをインベントリにしまう。
「生産失敗か。確か、生産職のレベルが低いと失敗するんだったよな。まあ、経験値入るらしいし、いいかな?」
そう自分に言い聞かせながら、もう一度初心者ポーションを二つ選択し、合成する。
今度は、初心者ポーションより濃い緑色のポーション。名前もポーションだ。
今度は成功、レシピにも追加されている。
そのまま、合成レベルが2になるまでポーションを合成した。
ふと、ポーションと初心者ポーションの残量を確認する。
「ミュウとセイ姉ぇと一緒に買った初心者ポーションが丸々残っているな」
初心者ポーションを買ったのはいいが、【回復】持ちの二人がセンス上げのために率先して回復していたので手つかずだ。その初心者ポーションを錬金で上位変換した場合、どうなるのか。一種の実験的な意味で行う。
変換した結果──残念なことに、また毒物になってしまった。錬金の失敗。
「……50Gが毒物になった」
この瞬間【錬金】センスのレベルが2に上がった。魔法系センスも一つずつ上がり、悪くはない。ただ、出費が痛い、痛すぎる。だが、気になったことを途中で放棄しない。
懲りずに再度、錬金した結果──ポーションが出来上がった。何とも無気力感が……。
「あー、無駄にした。全部合成でポーションに変えてれば、合成センスが上がったのに」
しかし、確認したのだが、【合成】で作ったポーションと【錬金】で作ったポーションには、性能差が存在した。
合成ポーションは、【レシピ】のデフォルトに近いが、錬金ポーションは、デフォルトより一割回復量が多い。つまり、錬金製の方が品質的に上と言える。
錬金>合成>手作り調合>スキル作成の様な感じで性能があるようだ。ただし、効率で言えば、その逆だ。また、手作り調合も極めれば、二つを容易に抜き去りそうだ。
「また上手い具合にバランス取っているな。それにしても、とんでもないセンス取ったな」
勿論、悪い意味でだ。普通に考えれば、この生産センスの効率の悪さから忌避される【錬金】、効率の良さのある【合成】と【調合】の三つでセンスの装備枠を圧迫する俺自身がアンバランスなのだ。だが今の目的は、センスのレベル上げだ。
薬草は、おもに【調合】センスに。その他アイテムは【錬金】と【合成】に使うことにした。夕飯の準備の時間まで採集と生産センスのレベル上げを繰り返した結果、分かったことがある。
石ころは、錬金ではどうやっても選択できなかった。結論を言うと、石という名称の未鑑定アイテムということだ。そして、キノコや薬草や野草は、乾燥などの工程を経て作ると、素材の名前の前に『乾燥』と付く。そして、効果が二倍になったのは大きい。
ただ、キノコは食材アイテムなので、乾燥させるだけでそれ以上の変化は望めなかった。
最後に、木の枝と鳥の羽根の組み合わせて合成すると、鉄の矢の下位互換──木の矢になった。
驚いたことに、これは、枝一本から二本出来た。今六十本二セットほど矢があり、矢の心配がなくなり安心した。
現在のセンスは──
所持SP0
【弓Lv3】【鷹の目Lv7】【魔法才能Lv6】【魔力Lv9】【錬金Lv2】【付加Lv6】【調教Lv1】【合成Lv4】【調合Lv4】【生産の心得Lv3】
魔力があと少しで10になりそうだ。比較的どのセンスも最初は上がり易いようで、修正が利きやすくて助かる。まずは、【調教】を控えにして新しいセンスを取得しよう。
時間もそろそろよさそうだ。再開は、現在のセーフティーエリアに変更して、ログアウトする。
●
ゲームの世界では、夕暮れ時という空だったが、真夏は、日が高くまだまだ明るい。
それでも夜の六時半ともなれば、少しは涼しい風が吹き込む。素麵で涼しく感じるが、更に別の要因で場が凍えるように寒い。
時間になり、美羽も自室から出てきた。
「……」
夕飯の席、無言で素麵をすする美羽。視線は鋭く、雰囲気が悪い。
「ど、どうした?」
「別に……」
普段は元気な妹だが、時折不機嫌になる時がある。まあ、思春期真っただ中の中学三年生なのだし、と思う時があるが、今日の不機嫌には、思い当たる節がある。
──俺のセンス構成だ。
「その、すまなかった」
「……何で謝るの?」
「その、ゲームの事で……お手数掛けました」
なんか知らないが、とにかく謝っておけ、それが問題を回避する方法だ。
美羽は、大きく息を吸い、盛大に溜め息をつく。
「なんか、ごめんね。お兄ちゃん」
「おお、今は兄と呼んでくれるんだな」
「いや、そういうところに反応しないで」
むぅ、妹にお姉ちゃんと呼ばれた心の傷は意外と深かったようだ。
「違うの。ゲームでβ版の時からやっていた人が新しい人を連れてきたんだけど、その人と折り合いが悪くて……気分悪くしたらごめんね」
「そうだったのか。まあ、愚痴くらいは聞くぞ」
「うん。とにかく目立ちたがり屋で、私たちが回復している最中なのに、ずんずん進んで、一人死に戻り。戻ってきたら、私たちのサポートが悪いだのって酷いこと言われたから、ちょっとね」
「あー、そっか。それで……。大変だったな」
「逆にその人が居ない方が、探索もサクサク進んだからね。流石に、死んだ後にパーティーに入ろうとは思わないだけ有難いよ」
「それってゲームで死ぬとどうなるんだ?」
「デス・ペナルティーが発生するよ。デスペナの効果は、一時間のステータスの減少だね」
「それは痛いな。けど、俺は生産職だし、死んだ時間はアイテムでも作れば無駄がないな」
あっ、もう方向性決めたんだ、と言われた。
「戦闘できないからな。今は、生産系のセンスを上げている最中」
「でも残念だな。ユンお姉ちゃん、美人だからパーティーに入れて自慢したかったのに」
「勘弁してくれ。まぁ、戦闘に関しては、アイテム収集のためにMOB狩りは一人でするし、弓センスも多少は上げておきたいからな」
「ふーん。ユンはソロで進めるんだ」
当分は地道に採取とMOB狩りに専念しよう。こんな遠回りな行動に、他人を連れ回せない。話題を変える意味で別の質問を投げかける。
「美羽の今のセンスってどんな感じなんだ?」
「うーん、【剣Lv12】【鎧Lv11】【攻撃力上昇Lv6】【防御力上昇Lv6】【気合いLv4】【魔法才能Lv10】【魔力Lv14】【魔力回復Lv7】【光属性Lv5】【回復魔法Lv7】かな?」
「結構成長しているな。もうSPが四つも溜まっているし」
「お姉ちゃんも大体こんな感じだね。あとは、お兄ちゃんも【攻撃力上昇】とかのセンスを付ければ、弓矢の消費が抑えられるんじゃないかな? 早くセンスの総取り替えした方がいいんじゃない?」
「それはおいおいやることだな。今は、西の林で自給自足している」
「まぁ、私は、お兄ちゃんと冒険したいんだから、早く戦えるレベルまで上げてよね」
そう美羽に注文されるが、総取り替えして戦えるレベルまで上げるのと、今のセンスを戦えるレベルまで鍛えるの、どっちが早いだろうか。
うーん。普段はできる兄として振る舞っているはずの俺だが、ゲームになるとたじたじだ。
夕食の後は、美羽が風呂に入り、俺はその間食器の片づけや帰ってきた両親の食事の用意。俺も風呂にのんびりと入って、再び【OSO】にログインした。
再開は、林のセーフティーエリアだったので、そこからのスタートだった。
ゲームの中も夜で真っ暗。この場所は、焚火がされているために仄かな明るさが保たれているが、少し遠くを眺めても真っ暗、時折飛び立つ蝙蝠らしき影がチラつく程度だ。
うーん、夜の空って綺麗だな。天の川っぽい星々が良く見える。と茫然と空を眺めていた。意識すれば、【鷹の目】のセンスで天体望遠鏡のようにズームアップできる。
【鷹の目】が成長しているようだが、今はこのゲームの中の自然を楽しんでいる。
三十分程ぼけっとしてセンスを確認した。【鷹の目】がレベル10になっていた。やったと喜ぶ思いと、【魔力】が最初にレベル10になるという予想を裏切り、まさか【鷹の目】が最初に10レベルに到達するとは。
それに、心なしか周囲を見回す時、暗闇の中をさっきより遠く見通せる気がした。
俺は、さっさと新しいセンスを取得することにした。
初期のセンスと言っても数は豊富だ。もう方向性は生産職寄りになっているので、生産職でもいいかもしれないと考えながら生産系センスを探す。
【鍛冶】【裁縫】【木工】と続いて、最後に見つけたのは──【細工】だ。
【細工】は、メインな扱いというよりは、【鍛冶】センスと共通する項目があるためにオマケ扱いが多い。効果は、アクセサリーの作成センスなのだ。戦闘を彩る武器防具を作る【鍛冶】、皮鎧や魔法職の軽装防具作成の【裁縫】、杖や弓の【木工】とは異なり、アクセサリーは、あくまで補助的な位置づけだ。これはもう、初期の方針──サポートに徹する隙間産業的ではないか、と即決。良い物を選んだ、という気分だ。
それにしても、センスとは奥が深いと思う。
【鷹の目】は、ただの遠視センスと思っていたが、暗視性能もある。1レベルにつき1メートル程度視界が広くなる。弓センスのレベル補正のみの場合、射程はかなり短い。
そういえば、矢があるし、敵もいないことだし、弓の練習をして寝ようと考えた。
木の矢を取り出し、弓を引き絞る。ひっと放つ矢は、見える範囲の闇の中に消える。使い捨ての矢をどんどんと闇の中に放り込んでいく。弓のセンスは弓を射ることで成長し、敵を射ることで成長率が若干上昇するのかもしれない。
一本一本丁寧に弓を射る。弓の練習など今までしたことのない俺は、こうやって反復してプレイヤー自身の命中率を上げるしかない。【鷹の目】は遠視、暗視センスなので狙った木に当たったのかよくわかる。
今のところ、命中率は、十本中二本とまだまだだ。
【弓】のセンスも【鷹の目】のセンスも十分にレベルが上がった。気になって、【弓】のスキルを見てみたら、確かに【アーツ】があった。《遠距離射撃》という安直な名前だ。
試しに《遠距離射撃》のアーツを使ってみた。
弓を溜める時間が長くなる代わりに、今までよりも力強い音が響き、【鷹の目】でも見通せないほど遠くに一瞬で行ってしまった。効果の程は、まだ分からない。
「ミュウに不遇だとか、使えないって言われたけど、ちゃんと確認しないと駄目だな。今のも手応えがあった。さて、もういい時間だし、続きは明日にしてもう寝るか」
明日も同じ生産系をメインに成長させよう、と考えながら、俺はログアウトした。