【委員長の災難】
「さて……わざわざ、図書室に移動させてごめんなさいね?」
「え、ええ……わたしは大丈夫よ」
「そう、なら良かったわ。だって……これで落ち着いて話し合えるものね♪」
(廊下ではあまり落ち着いて話せなかったけど、まさか委員長が図書室を選ぶとは……なるほど……ウフフ、自分のホームで戦うつもりね?)
(な、何で地味な委員長キャラのわたしが女子カーストトップの朝倉さんに目を付けられてるのよぉ!
「あ、朝倉さん! 待って、誤解してるわ! あれはただ……安藤くんがお昼休みになると図書室に来るだけで……わたしは図書委員として話してただけなの!」
(冗談じゃないわよ! 安藤くんなんてわたしのタイプじゃないし、そんなくだらない理由で朝倉さんに嫌われでもしたら……
『委員長って
──って、学校中の女子から敬遠されるじゃない!
朝倉さんにわたしを
「わたしと
「つまり、お昼休みの度に
(いい宣戦布告ね……いいわ、受けて立つわよ? ガルゥウウ!)
(日本語が通じてなぁ────ああああああああいっ!)
「朝倉さん、落ち着いて! そもそも、クラスの子とお話しするくらい『普通』よね?」
「ふ、普通……? ぐふぅああッ!」
(……たかがクラスの男の子と軽く話すくらい『普通』ですって……!? じゃあ、これまで私が安藤くんに話しかけようとしてきた努力の全ては……委員長にとって『普通』と言われることだったの……?)
「それにね、わたしが安藤くんとする会話なんて……『本の話』くらいよ?」
「ほ、本の話……がはぁ!」
「……むしろ、安藤くんと図書室で会っても、話す内容なんて『本』というか……『ライトノベル』の話題ばっかりなのよ?」
「ら、ライトノベルの……話題ぃい!? ぎゃふん……」
(なんてこと!? この小娘は……安藤くんと楽しく会話するどころか……私が彼としたかった『本の話』を! あろうことか『ライトノベル』の話題ばっかり……していたなんてぇ……)
「委員長、分かったわ……。今から、
「何でぇええええええええええええ!」
(ヒィイイイイイイイイ! お、恐れていたことが現実にぃい!?)
「
「ガルゥウウ……今更、何を言われても私の気持ちは──」
「朝倉さんは
「にゃ、にゃぅっ!? な、ななな、何のことかしらぁ~?」
(はぅううう! ななな、何で委員長に私の気持ちがバレてるのよ!? 私の気持ちは誰にも言ってないし……ハッ! もしかして、委員長はエスパーなのかしら……?)
(うわぁ……朝倉さんてば、分かりやすいくらい動揺しているわね。もしかして……彼女って、
「か、勘違いしないでよね!? 別に、私は安藤くんが好きとかじゃなくて……ただ、彼と休み時間とかに仲良くお
「へ、へぇ……」
(しかも、なんてわかりやすいツンデレなの!? ……でも、この反応なら
「朝倉さん、大丈夫よ。わたしは彼のことなんてミジンコほどにも興味がないわ。むしろクラス委員長として、二人の仲を応援したいと思っているの!」
「ふぇ……委員長、それ本当?」
「もちろんよ! 前から朝倉さんみたいに明るい人が安藤くんの
「協力……?」
「えぇ!」
「委員長が……私と安藤くんの仲を?」
「そうよ! そもそも、安藤くんはわたしのタイプじゃないからね? わたしは『レット・バトラー』みたいな男性がタイプよ」
「え……れっとばとらぁー?」
「朝倉さんは知らないのね……。えっと、わたしの好きな小説に出てくる登場人物よ」
「そうなのね。私ったらハリウッド俳優かと思ってたわ!」
(つまり、委員長は本当に安藤くんのことは狙っていないと……むしろ、それどころか私に協力してくれようとしている。だとしたら、委員長は──)
「委員長!
「えぇ……変わり身、早くないかしら? まぁ、別にいいわ。
だって、わたし
(助かったぁ~……。よし! これで
「それで、委員長! ど、どうやったら……
「……ん?」
「そ、そのね……? 私が安藤くんを『好き』って自覚したのがつい最近なんだけど……いざ『好き』って自覚したら、上手く安藤くんの顔を見て話せなくなっちゃって……」
「…………は?」
(ま、まさか……そこからなの? えぇぇええ!? あの朝倉さんが……そのレベル?)
「えーと、じゃあ、安藤くんの顔をジャガイモだと思えばいいんじゃないかしら?」
「安藤くんの超プリティーフェイスが、ジャガイモなんかに見えるわけないでしょ!」
(何これ……とても、面倒くさい……。もしかして……予想以上に
「えっと……朝倉さん? そろそろ授業も始まるし、続きは今度にしないかしら?」
「あ、そうよね! 時間をとってゴメンなさい。また、今度よ! お願いだからね!」
「あ、うん。ハイ……」
(ふぅ……。なんとか、朝倉さんに敵認定されるのは避けられたわ……)
「お、委員長じゃん」
「あ、安藤くん」
(
「なんか、朝倉さんと楽しげに話してたけど、委員長って朝倉さんと仲良かったっけ?」
「アハハハ……。ま、まぁねぇ……」
(この男……誰のせいだと思ってるのよ!)