第二章 ヒロインと皇子②
初登校から数日が経った。
授業については、付け焼き
特に力を入れてきた
とはいえ、魔力制御の授業で息を吞んで聞き入った時がある。
「この魔法学園に
ここはまあ、いい。エカテリーナが反応したのは、この後。
「毎年、魔力制御は実技が重要であって座学はあまり必要ない、といった誤解をしている方がしばしば現れますが、決してそうではありません。理論や歴史を知った上で実技に
皆さんの知識や理解に問題がなければ、今月
これを聞いた時エカテリーナは「今月下旬」とノートに羽根ペンで書いて丸を付けた。
魔力制御の、実技の授業。
皇国滅亡フラグ。
ここで発生するイベントをヒロイン、フローラがクリアできなかった場合、いずれラスボスが現れて皇国は
まあそんなわけで、学園生活のうち学業のほうは順調な
人間関係については……予想通り、エカテリーナは今もぼっちである。
ま、しょーがない。
いや実は、声を
これが災難の始まりだった。
女子の三人組に加わって、食堂で食事をとった。
で、すぐに思った。
(
最初のうち、三人組はとにかくエカテリーナをちやほやした。歯が
その内容は、はっきり言って
あとゴシップ。それも、根も葉もなさそうな
この辺でもう、うわあ……という感じだったが、そうよそうよ! で思い出した。
(あー! この子たち、ソイヤトリオだ!)
なんとこの三人、ゲームでの悪役令嬢エカテリーナの取り巻きだったのである。
名前も出てこない、顔もあまり
これはいかん。この子たちと一緒にいたら、破滅フラグ一直線だ。
それにこの話、これ以上聞くに
という内心を
「ごめんあそばせ。お兄様にお会いしなければなりませんので、これで失礼いたしますわ。ごきげんよう」
ミナありがとう。アドバイスの通り、お兄様を
そして実際、とっとと逃げた。
しかーし! ソイヤトリオはしぶとかった。
エカテリーナが一人でいると、すぐ近付いてくる。何度逃げてもめげずに来る。こんだけ逃げてんだから
どうやら、ユールノヴァ家の財産やエカテリーナの特権のおこぼれにあずかりたくて必死なようだ。思い返せば最初に食事した時から、タカる気マンマンな発言
……ゲームのエカテリーナって、こいつらに食い物にされてたんじゃないだろうか。
授業の合間の
で、三人で固まって、エカテリーナの隣の席で同じように予習復習に励むフローラに聞こえよがしな
そして一番困るのは昼休み、昼食だ。ソイヤトリオが寄ってくるので、食堂では食事ができない。
それではと
「ユールノヴァ様~」
ソイヤトリオが走ってくるのが見えて、あやうくサンドイッチを口から
「こんなところで一人で食事だなんて、いけませんわ。笑われてしまいます」
と言いつつ、三人組自身がニヤニヤ笑っている。
えー加減にせえやあ!
とか
そう腹をくくって最上級生の教室へ行ってみて、エカテリーナは驚いた。
「
アレクセイのクラスメイトに言われたのだ。
なおそのクラスメイト、マッチョなスポーツマンタイプの兄貴系イケメンである。燃えるような赤毛に金色の
あれ? こんなタイプ
「執務室……とおっしゃいまして?」
「ああ、領地の仕事用に学園の会議室をひとつ借り受けてるそうでな。入学した
お兄様、学園でも仕事しているんですか!
てか入学した頃から!? 爵位
さらにきっと寮に帰ると
そして、クラスメイトに公爵と呼ばれているんですか。なんか爵位というよりあだ名っぽい感じの
親切なマッチョイケメンに場所を教えてもらって執務室に行ってみると、そこはまさに執務室だった。
アレクセイが書類を積んだ大きな机に向かい、部下というか領地の
ほんっとにがっつり仕事してた!
「エカテリーナ。どうした?」
「あの……お兄様と、お昼をご一緒したかったんですの」
と言ったら、アレクセイは
しかし、時間を取らせてしまった分、アレクセイは放課後いつもより長く働くに
くそう、ソイヤトリオめ!
うーん。
でもそういえば、ゲームでもエカテリーナとソイヤトリオ、そしてヒロインのフローラは同じ寮だった……し、仕方ないか。
そして三人は、ミナがさっくり追い返してくれた。きっとゴネると思ったからびっくりだ。
「ありがとう、ミナ。あの方たちに何て言いましたの?」
「お
「………………そう」
うちの美人メイドにサイコ入ってる件。
ま、ありがたいからいいけど。いいのか自分。
「お嬢様、あの三人、
ミナに
すらっと『邪魔』と言ってしまったら、何かがヤバいかもしれない。いやまさかだけど。
「邪魔というほどの方たちではありませんことよ。うっとうしいだけ。邪魔と思ってはこちらが負けのような気がするくらいですわ」
「わかりました。うっとうしいんですね」
「いろいろ考え合わせて、わたくし、自分で対策を取ろうと思っていますの。ですから、ミナは気にしないで」
小休憩と寮はなんとかなりそうだから、問題は昼食。
そしてアレクセイの食事も改善したい。
そう! ソイヤトリオなんか気にするより、お兄様のことを考えているほうが万倍楽しい。お兄様のお昼に食の楽しみを届けたい!
昼休みなしで仕事って、まるっきり前世の社畜ですから!
よし。トリオ対策ではなくお兄様のために、チャレンジしてみよう。
もしかしたら、