異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する 5 ~レベルアップは人生を変えた~

第二章 王都の異変(1)

 佳織のおかげでユティの中等部編入が決まったこともあり、俺は佳織へのお礼を果たすため、異世界の【大魔境】に佳織の装備を求めてやって来た。

 正直、佳織用の装備とはいえ、俺の着ている【血戦鬼シリーズ】のような鎧は想定していない。レベルアップして、ステータスが高くなった俺だからこそ着れているが、佳織には厳しいだろう。

 だからこそ、佳織用の装備となると強力な効果を持つアクセサリーなんかになるんだろうが……そんな都合のいいアイテム、手に入るのかね……。

 とはいえ、今週の土日までに用意できればいいので、多少時間があるから、ひとまずはこの【大魔境】の魔物から手に入るドロップアイテムを狙ってみることにする。

 【大魔境】の魔物は強いからこそ、手に入る装備の効果も強力で、まだ俺の手に入れてないアイテムの中に佳織用にピッタリなものがあるかもしれない。

 ただ、これは不確定要素が多すぎるので、最悪、王都に行けば、佳織にピッタリな装備も見つかると思っている。まあほぼ確実にこの結果に落ち着きそうだけど。

 まあでも……。

「今回は佳織用の装備を手に入れるために、この【大魔境】の魔物と一通り戦ってみようと思います」

「ワン!」

「フゴ」

「了解」

 俺の言葉に、ナイトとアカツキ、そしてユティが頷く。……え?

「あの、ユティもついてくるのか?」

「? ダメ?」

「いや、ダメというか……その『邪』の力が消えたわけじゃないのなら、あまり戦闘はしないほうがいいと思うんだが……何かの拍子に暴走したら怖いし……それに、この間の戦闘でだいぶボロボロになったんだし、休んでたほうがいいんじゃ……」

「大丈夫。暴走するきっかけは、戦闘じゃない。それに、この間の傷ならとっくに癒えてる。豚のおかげ」

「フゴ? ブヒ」

 理由分からないが、褒められたことだけ察したアカツキが、可愛らしく胸を張った。

 確かに、ユティの『邪』の力を静めた時のアカツキが使用したスキル【聖域】は、傷なんかを癒すんだったな……。

「とにかく、心配いらない。それに、今静まってる時だからこそ、何かあった時に抑え込めるように修行しておきたい」

「な、なるほど?」

 俺には『邪』の力というものがどういう扱いなのか分からないので、ここはユティの言葉を信じるか。それに、仮に暴走したとしてもアカツキの力があれば、抑え込めるだろう。

 そう考えた俺は、改めてこのメンバーで佳織の装備を探しに、【大魔境】に足を踏み入れるのだった。


   ***


 いつも探索している方向だとさすがに新しい魔物もいないだろうということで、【大魔境】の中でもミスリル・ボアなどが出てくるような奥地に出向いている。

 しばらく周囲を警戒しつつ、魔物の気配を探りながら歩いていると、不意にユティが立ち止まった。それとほぼ同時に、ナイトも警戒を強くする様子を見せる。

「ん? どうした?」

「……魔物」

「ウォン……」

 俺にはまだ分からないが、どうやら二人は魔物の気配を察知したようだ。というより、やはりユティの実力は底知れないな……『邪』の力がない状態でも、ナイトと同レベルの気配察知能力を持ってるんだし……。

 ひとまずユティたちが察知した気配のほうに、各々気配を消しながら近づく。アカツキには【姿隠しの外套】も忘れない。

 警戒しながら近づくと、そこには一匹のウサギがいた。

 ただし、俺やナイトの師匠であるウサギ師匠とは違い、毛の色は黄色で、さらにはタキシードを着てシルクハットを被っており、胸元には赤い蝶ネクタイという非常に変わった姿だった。

「なんだ? あの魔物……」

 あまりにも不思議な見た目に思わずそう呟くと、ユティが目を見開いてその魔物を見ていることに気づいた。

「あれは……【ファンタジー・ラビット】」

「ふぁ、ファンタジー・ラビット? 強いのか?」

「否定。この【大魔境】の中なら、最弱といってもいい。他の場所でも、とても弱い部類。ただ……見つけることが困難で、別名【幸運兎】と呼ばれてる」

「【幸運兎】ねぇ……」

 俺はユティの説明を聞きつつ、ファンタジー・ラビットに【鑑別】のスキルを使用した。


【ファンタジー・ラビット】

レベル:77、魔力:777、攻撃力:777、防御力:777、俊敏力:777、知力:777、運:777

スキル:【最大化】、【最小化】、【危機感】、【緊急回避】


 本当に運のよさそうなステータスだった。いや、実際の運の数値は低いんだけどさ。

 それよりも見慣れないスキル構成で、興味がある。

「【最大化】とか【最小化】って……体のサイズを変えられるのか?」

「肯定。敵に見つかった際、大きくなって脅かして逃げるか、小さくなって隠れながらのどちらかを選択する。でもそれより厄介なのが、【危機感】と【緊急回避】のスキル」

「え?」

「【危機感】のスキルは、極めて薄い殺意、敵意、害意であっても察知することができる。だから、倒すには死角から殺意などを悟らせずに殺すか、逃げられない速度の一撃で殺すかのどちらか。でも、もう一つの【緊急回避】のスキルが、殺意などを察知した瞬間、ファンタジー・ラビットを安全圏まで転移させる。結局殺す手段は一つで、殺意などを消すしかない」

「そんなのどうするんだよ……」

 殺意や敵意を消すってできるの? 殺そうとか、殴ろうとか、そういう相手に害を与えようとした時点で察知するようなものだろう? 俺にはとても無理そうなんだが……。

 ユティの説明を受け、今の俺ではとても倒せそうにないと悟り、思わずため息をついた。

「はあ……どんなドロップアイテムを落とすのかは気になるけど、ここは大人しく立ち去ろうか」

「? 何故?」

「な、何故って……無理じゃない? 敵意とか悟らせずに倒すのって……」

「注目」

 ユティは短くそう口にすると、先日、俺が返した自身の弓を構えた。

 そして静かにファンタジー・ラビットを見つめると……。

「――――」

 鋭い矢を放った。

 その矢は一瞬にしてファンタジー・ラビットの首を貫き、そのままファンタジー・ラビットは光の粒子となって消えていった。

 それを見届けると、ユティは小さく息を吐きだす。

「回答。殺意も敵意も害意も排除して、殺せばいい」

「なんだその理論」

 いや、言ってることの意味は分かるが、できるかと言われるとそうじゃないだろ。むしろ無理だって。

 そんなことを考えていると、俺はふとあることに気づく。

「あれ……? もしかして今の技術が俺たちと戦うときに使われてたら、勝てなかったんじゃ……?」

「否定。あの時は『邪』の力を抑えられなかったから、『邪』の力の気配を上手く隠せなかった。でも今は『邪』の力が静まっているから、殺意を消すことができる。『邪』の力は、殺意や敵意などによく繋がっている」

「なるほど……」

 嬉しくないが、ある意味『邪』の力に助けられたんだな、俺たち。いや、そもそも『邪』の力を手に入れてなかったら、襲われる心配もないのか。

「それより、ファンタジー・ラビットのドロップアイテムを確認する。何故か、いつも私が一人で倒した時より多いけど……」

 まだハッキリとしたことは分からないし、ユティのステータスは確認してないからなんても言えないけど、少なくとも俺の運のステータス値は高くしてあるから、それが作用したのかもしれない。とはいえ、倒したのは俺自身じゃないから、ハッキリとは言えないけど。

 全員でファンタジー・ラビットのドロップアイテムを回収し、確認していく。

【幸運兎のおうもう】……ファンタジー・ラビットの毛皮。非常に肌触りがよく、この毛皮で作られた外套は貴族の間で大変人気であり、超高額で取引される。ただし、ファンタジー・ラビットの存在自体が希少であるため、世の中に出回るのは非常に稀。

【大小変化の丸薬】……ファンタジー・ラビットのレアドロップアイテム。この薬を飲むと、自分の大きさを自由自在に変化させることができるようになる。効果は永続。

【危機回避の指輪】……ファンタジー・ラビットのレアドロップアイテム。この指輪を装備している者は、一日に一回だけ、装備者の危険を察知した瞬間、装備者を安全圏まで転移させることができる。安全圏は、事前に設定しておく必要がある。

【ラッキーローブ】……ファンタジー・ラビットのレアドロップアイテム。装備者の運に補正がかかる。

 これに加え、D級の魔石という【大魔境】では初めて見るようなランクのモノを手に入れたワケだが……。

「これ、かなりとんでもない装備なんじゃないか……?」

「肯定。そして予想外。直接強くなるわけではないけど、それでも安全が確保されるというのは本当にすごい」

 ユティの言う通り、いきなり超絶パワーが手に入るとかではないが、それでも設定した安全圏まで危機的状況になったら自動で転移してくれるというのは、破格すぎる性能だろう。それでいて、佳織の装備にこれ以上ないものだ。

 この指輪の安全圏設定を異世界の賢者さんの家にしてしまえば、本当に安全だし。

 それに、地味に【ラッキーローブ】という装備アイテムもありがたい。見た目は地味な茶色いローブなのだが、運に補正がかかるのはいい。佳織でも気軽に着ることができそうだ。

 ただ……。

「この薬は何に使うんだ……?」

「不明」

「そりゃそうか……でも、今の俺達には必要ないかな……?」

 大きくなったり、小さくなったりするのは気になるが、自分で飲んでみようという気にはなれない。万が一、地球で大きくなっちゃったりしたら、目も当てられない。そんなことはないとは思うが、なるべくそういった可能性は排除したい。

「でも何かには使えるかもしれないから、持ってはおこう」

 例えば、敵が強くて倒せないってなれば、もしかしたら大きくなればその分攻撃も強くなるだろうし。

 ひとまず目的のモノを手に入れた俺たちは、そのあとも少しだけ探索を続け、魔物を相手にナイトとの連携を確認したり、ユティの戦闘姿からいろいろ学んだりと、充実した時間を過ごすのだった。

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