異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する 5 ~レベルアップは人生を変えた~

第一章 ユティとの生活(3)

 家を出た時、ユティはそこに広がる光景に固まっていた。

「驚愕。これは……建物?」

「ああ、ここにあるのは全部家だよ」

「家……貴族の?」

「へ? 貴族じゃないよ。普通の一般的な家だね」

「一般的!?」

 ユティは俺の言葉にさらに目を見開いていた。そんなに驚くような……いや、異世界で見た民家を思い出したけど、確かに日本で見かける家ほど大きくないし、どちらかといえばログハウスの延長みたいな家が多かった。中には石造りというか、レンガ造りの家もあったけどさ。

 さっそく地球の家や道に驚くユティが周囲を見渡していると……。

「!? 魔物!?」

「ユティ!?」

 ユティはたまたま通りかかった車に素早く反応すると、その場から大きく飛び退いた。

 そしてユティの武器である弓を使おうとするが、俺が回収したままなことに気づき、焦る様子を見せる。

「要求。私の武器、返す。じゃないと、アレ、倒せない」

「いや、倒しちゃダメだから!」

「異世界には、車がないんでしたね……」

 佳織もそのことに気づいたようで、ユティの様子に苦笑いしながらもなんとか車のことを二人で協力して説明した。

「……一部、理解。馬車に近いモノだということは分かった。でも、何で動いてる? 魔力は、感じない」

「魔力じゃなくて、ガソリンだからな」

「ガソリン? ……やはり、不明」

 こればかりは説明のしようがない。ガソリンの説明ってどうすりゃいいのよ。

 ひとまず車が馬車の仲間だと理解してもらったところで改めてユティの服などを買いに向かうが、やはり地球が珍しいユティは、俺たちの斜め上の行動をとり始める。

「ユウヤ。この柱、何?」

「それは電柱だね」

「電柱……登る」

「登らない!」

 なんで登るなんて選択肢になるの。

「ユウヤ。この家の塀、意味あるの? これじゃ、敵の攻撃を防げない」

「いや、敵なんていないから……だから登らないで!?」

 ユティは自然の中で師匠である『弓聖』と暮らしていたようなので、何かあるとすぐに登りたがった。サルですか。

 異世界で出会った時はただひたすらに戦うことに集中していたユティだが、今はあらゆるものに興味津々で、注意力散漫になっていた。

 そんな状態で歩いているのもあるが、何よりユティの容姿はよく目立ち、周囲の人たちが俺たちを見て何かを囁き合っていた・

「おい、あれ……」

「うわあ……お人形さんみたい……」

「コスプレか?」

「いや、それにしたってあの髪は自然すぎるだろ。目の色も違和感ないし……」

「てか、もう一人の女の子もすげぇ可愛くね?」

「……って、あの二人と一緒にいる男、前にモデルの美羽とのツーショットで話題になってたヤツだろ?」

「くそっ! あんな可愛い女の子二人と……羨ましい……!」

 いろいろな好奇の視線に晒されていると、周囲を見ていたユティが俺に顔を向ける。

「ユウヤ。人間、ジロジロ見てくる。不快。撃っていい?」

「ダメですけど!?」

 異世界でもそんな理由で人を撃っちゃダメでしょうに。え、ダメだよね?

 俺の言葉にどこか納得のいってないユティだったが、やはり周囲からの視線が気になるらしく、ソワソワしてしまっている。

 すると、周囲を忙しなく見渡していたユティは、つい車道へと飛び出してしまう。

 というより、異世界では車道と歩道といった区別がなく、ただ道があるだけなので、ユティが車道に飛び出してもおかしくはなかった。

「あ、危ない!」

 誰かのそんな声が聞こえた瞬間、俺は急いでユティを抱きかかえると、その場から飛び退く。

『お、おお!』

「な、何だ、今の動き!?」

「全然見えなかったぞ……」

「かっこいい……」

 そんな俺の行動に、周囲の人たちは驚きの声をあげていると、佳織が焦った様子で駆け寄ってきた。

「ゆ、優夜さん、ユティさん、大丈夫ですか!?」

「ああ。俺は大丈夫だけど……」

 そう言いながら抱えているユティを見下ろすと、ユティも俺を不思議そうな目で見上げていた。

「不要。助けがなくとも、問題ない。何より、ぶつかれば壊れるのは車」

「そういう問題じゃないんですよ!? 車に轢かれて大丈夫とは思わないし、相手の車を壊すのもダメだから!」

「……難解。私、そんな軟な鍛え方じゃない」

「ひとまずその脳筋思考をどうにかしてくれ……」

 もうすでにこの時点で疲れながらも佳織についていくと、ようやく目的地付近にまで来た。

 そこは、学園からも近い位置にあるショッピング街で、工事中の建物もあり、まだまだ発展するであろう様子がうかがえる。

「ここにあるお店のお洋服なんかが、ユティさんには似合うと思うんですよね!」

「そ、そうなのか」

 俺には女の子の服の良し悪しは分からないので、そう答えるしかない。

 ここでは完全に俺は力になれないなぁとか考えていると、ふとユティがぼーっと空中を見つめていることに気づいた。

「ん? どうした?」

「落ちる」

「え?」

 ユティは工事中の建物を指さすと、淡々とした口調で続けた。

「落下。あそこの柱、落ちる」

「柱って……ウソだろ!?」

 ユティが指していたのは、現在工事中の建物でクレーンを使って吊り上げられていく鉄筋だった。

 ただ、なんでそんなことが分かるのかと、改めて訊こうとすると、ユティはさらに続ける。

「親子。死ぬ」

「は?」

「ユティさん、どうしたんです?」

 俺たちが付いて来ていないことに気づいた佳織がそう訊いてくるが、今の俺はユティの聞き逃せない単語に固まっていた。

 すぐさまもう一度鉄筋が吊り上げられている場所の付近を見渡すと……。

「マジかよ……」

 そこには、今まさにその鉄筋の下付近を通ろうとしている赤ちゃんを抱えた女性が歩いていた。

 そして――――。

 ガキンッ!

 すさまじい金属音が響き渡ると、その親子目掛け、鉄筋が落下を始めた!

「きゃあああああ!」

「お、おい!」

「やばい、離れろ!」

 鉄筋が落ちてくる光景を見た人たちが急いで少しでも距離をとろうとする中、ちょうど鉄筋が直撃するであろう場所にいるその親子は身が竦んでいるようで、動けなかった。

「クソッ……!」

 俺はその場から全力で駆け出すと、固まる女性を抱きかかえた。

 だが、その場から俺が飛び退くより早く、鉄筋が直撃してしまうことが直感的にわかってしまう。

 マジかよ、どうすりゃいいんだよ!?

 魔法を使うにしたって、こんな人通りの多い場所で……いや、それどころじゃねぇ!

 俺はとっさに魔法を発動させようとするが、それより先に、俺の体が自然と動いていた。

 それは、散々ウサギ師匠との特訓や、毎日行っている修行の成果というべきか、ごくごく自然と俺は足を振り上げ、その鉄筋を蹴り上げていた。

 ウサギ師匠直伝の蹴りは、俺のステータスとも相まって、鉄筋を容易く吹き飛ばせることができるが、馬鹿正直に吹き飛ばすと周囲への被害が出てしまう。

 そこで、俺はサッカーのトラップの要領で、鉄筋の衝撃を受け流しつつ、一瞬にしてその場に置くようにした。

『へ?』

 誰もが直撃すると思っていた中、予想していたような音も衝撃もなく、周囲の人たちは困惑している。

 そんな周囲を無視しつつ、俺はいまだに固まっている女性に声をかける。

「大丈夫ですか?」

「……へ? は、はい!」

 俺に声をかけられ、正気に返った女性だが、また俺の顔を見ると、顔を赤くして固まってしまった。

「お、おい。何が起きたんだ?」

「さ、さあ……」

「俺、一瞬あの男が鉄筋を蹴ったように見えたんだけど……」

「いやいやいや、鉄筋蹴るって……それ、無事じゃねぇだろ? 見ろよ、ピンピンしてるじゃねぇか」

「わ、私もそう見えたけど……」

 予想以上に目立ってしまったが、こればかりは仕方ない。

 しきりに頭を下げる親子と別れ、佳織たちと合流すると、佳織は複雑そうな表情を浮かべていた。

「その……優夜さんがすごいのは知っていますが、あんな躊躇いもなく危険な場所に行かれると、心配してしまいます」

「あ……その、ごめん」

「? 何故。謝罪、不要。ユウヤなら、大丈夫」

「そういう問題じゃないんですよ」

 佳織に諭されるように告げられるユティだが、ただ首を捻るだけだった。

 ただユティの服を買いに来ただけだというのに、もうすでにあり得ないくらい疲れている俺は、ついに目的地にたどり着いた。

 ――――だが、ここでも俺に試練が待ち受けていた!

「あ、あの……佳織さん? 俺もここにいなきゃダメですかね?」

「? もちろんですよ」

 女性用の服屋さんなので、女性客が多いのは当たり前だ。

 だが……男性が俺しかいないのだ!

「ね、ねえ、あの人……」

「あれ、前に雑誌で美羽さんと写ってた人じゃない!?」

「ヤバ、あの写真加工してるのかと思ったけど、リアルでかっこいいじゃん……」

「あれかな、彼女さんの買い物に付き合ってるとか?」

「マジ羨ましい!」

 気のせいだと信じているが、心なしか周囲の視線が多い気がする……!

 とても居心地の悪い中、佳織と一緒に服を見ているユティをただひたすらに待つことしかできなかった。

「お、お客様、お待ちください!」

「ユティさん、ダメですよ!」

「ん?」

 急に店内が騒がしくなり、思わずその方向に視線を向けると……。

「ユウヤ。これ、どう?」

「へ? ブッ!?」

 そこには、白い下着姿で仁王立ちするユティが!

「ゆ、ユティさん!? 服着て!」

「? 疑問。私の下着、確認する。なら、服、不要」

「男の俺に確認させないでくれる!?」

「何故?」

「何故!?」

 どういう理屈でそうなった!?

 必死に顔を逸らす俺だが、ユティはここに来て『弓聖』の弟子である身体能力を駆使し、俺にしっかりとその姿を見せようとする。

「不服。何故、見ない」

「見なくてもいいでしょ!?」

「? ユウヤが、買う。なら、確認が必要」

「これに関してはいいの……!」

 俺が買うからって律儀に見せなくても……!

 必死にユティと格闘していると、そこに佳織と店員さんが来てくれたおかげで、何とかユティから逃げきることができた。

 そして無事、ユティの下着や服を購入するも、ユティはまだ納得がいってないようだっった。

「理解不能。買うの、ユウヤ。なら、確認は必要なはず」

「そういう問題じゃないから……」

「……これは、予想以上に色々と教えることがありそうですね……」

 他にも日常品などを買いそろえた俺たちは、そのまま佳織の言う通り直接『王星学園』の学園長にして佳織の父親である司さんに話に行き、無事にユティの編入が決定するのだった。 

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