異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する ~レベルアップは人生を変えた~

第三章 異世界人(4)

 声をかけた瞬間、彼女は俺を見て驚いた表情をかべると、そのまま糸が切れたように倒れた。

「おいおいおいおい!?」

 まさか死んだのか!? と本気で焦った俺だが、よく見ると息をしているので、気を失っただけらしい。

 そのことに一安心していると、すさまじいあつ感を感じ、その方向に視線を向けた。

 するとゴブリン・ジェネラルが俺のことを激しくにらみつけている。

 俺は【絶槍】を握りなおすと、ゴブリン・ジェネラルと向かい合った。

「……」

「……」

 おたがいに武器を構え、隙を窺う。

 だが、俺から見てゴブリン・ジェネラルに隙がないように、俺にも隙がないらしく、お互いにめあぐねていた。

「グゥゥ……グォォアアア!」

 するとついにしびれを切らしたゴブリン・ジェネラルが、大地をくだく勢いで踏み込み、そのきよだいけんを横にぐ。

 その攻撃を見て、俺の本能が防いじゃダメだと告げ、倒れている女の子を急いでかかえると大きくきよをとった。

 俺はすぐに女の子を再び寝かせると、今度はこっちからとつげきする。

「はああっ!」

「ガアッ!」

 しかし、ゴブリン・ジェネラルは俺の一撃を容易たやすく受け止めた。

 そしてその受け止めた状態から、俺の存在ごとき飛ばす勢いで剣をる。

「があっ!?」

 そのあまりのりよくに俺はあっけなく吹き飛ばされた。

 木々にぶつかりそうになるのを何とか空中で体勢を立て直し、吹き飛んだ先の木に着地する。

「やべぇな、おい……」

 ゴブリン・ジェネラルの強さに、思わず冷やあせが流れる。

 攻撃力が高いだけあり、鹿正直に打ち合っても俺が絶対に負けるだろう。

 勝つには、どうにかして不意をくしかない。

 幸い、攻撃力以外は俺がまさっているのだ。このステータスと手持ちの武器をかすしかないだろう。

 俺はすぐに木を足場にして、思いっきりゴブリン・ジェネラルの方へ突撃した。

 するとゴブリン・ジェネラルはそんな俺を巨大な剣でり落とそうと、まるで野球のバッターのように俺が近づくタイミングに合わせて振ってきた。

 このままめば、俺はあっけなく死ぬだろう。

 もう少しでゴブリン・ジェネラルの剣とぶつかるというところで、俺は【絶槍】を勢いよく地面に突き立てた。

「ガアアア!?」

 急停止した俺に、ゴブリン・ジェネラルの剣は空振る。

 俺はぼうたかびの要領で突き立てた【絶槍】をバネに、勢いよくね上がった。

 ゴブリン・ジェネラルの上を通過するように移動しながら、俺は【アイテムボックス】から【無弓】を取り出し、上空でゴブリン・ジェネラルけて見えない矢を放った。

 だが、その攻撃を察知したゴブリン・ジェネラルが、空振りの勢いで巨大な剣を巻き上げ、矢を防ぐ。

 しかし、その隙に俺は新たな木を足場にした状態で、手元に帰ってきた【絶槍】をゴブリン・ジェネラルに投擲した。

「グ、ググガ!?」

 その攻撃さえも苦しい体勢で防いだゴブリン・ジェネラル。

 ────でも攻撃はもう一つ残っていた。

【絶槍】を投擲すると同時に、俺は木を足場にして同じように突撃していたのだ。

 そんな俺の右手には【全剣】が握られている。

「ガア!?」

 ようやく俺の姿に気づいたゴブリン・ジェネラルが、必死に防ごうと動いているが……。

おそい……!」

「ガアアアアアアアアアアア!」

 俺はそのままの勢いでゴブリン・ジェネラルの体を真っ二つにした。

 ゴブリン・ジェネラルはそのままゆっくり倒れすと、光のりゆうとなって消えていく。

 そこまでかくにんして一息つくと、俺はいまだに気を失っている女の子に視線を向けた。

「彼女、どうしよう……?」

 本気でこんわくする俺の目の前に、メッセージが出現する。

『レベルが上がりました』

 あ、そうですか。


    ***


 取りあえずゴブリン・ジェネラルのドロップアイテムをばやく回収すると、女の子に近づく。

 女の子は本当にこの場所には似つかわしくないほど、上質な衣服に身を包んでいた。ドレスとか生で初めて見たよ……。

 本気でどうしようかと考えていると、不意に誰かが近づいてくる気配を感じた。

「────ま! ────レクシア様ぁ!」

 その気配が近づくにつれて、人間らしき声も聞こえてくる。

 ってか、レクシア様って……この子のことか?

 そう考えて、俺は一瞬辺りを見回すと、血やにくへんといったかなりグロッキーな光景が広がっていることを思い出した。……うん、俺も気分は悪いが、くほどじゃないな。

 とはいえ、こんな光景の中でこの子を探しているであろう人物と出会ったら誤解される未来しか見えないぞ……。

 ……かくれるか。

 俺は急いで近くのしげみに隠れ、スキル【同化】を発動させた。

 するとすぐに何やらけんのんふんの兵士らしき人たちがやって来た。

 みんな同じようなよろいを身にまとっている中、鎧の上から黒色のマントを羽織った中年男性が周囲の光景を見て絶句していた。

「こ、これは……!」

 やっぱりこの光景の中で会わなくて正解だったな。もうじんじようじゃないくらいにけいかいしてるし。

 周囲を警戒する兵士たちは、近くの木の根元で気を失っている女の子に気づいた。

「れ、レクシア様!」

 兵士たちが急いで彼女のもとに近づき、安否を確認する。

 すると兵士の一人が何かをつぶやいた後、右手からあわい白色の光を放出し、彼女の体に当てた。

 あれって……ほうか!? うおおお、すげぇ!

 一人で勝手に魔法に興奮していると、兵士たちは心の底から安心した様子でため息をいた。

「今、回復魔法を使用しましたので、傷はえたでしょう。今は気を失ってらっしゃるだけのようです」

「っはああああ……軽傷で安心した……」

 彼女の安否を確認して、一安心する兵士たちだったが、すぐに彼女をやさしくき上げ、辺りを警戒しながら立ち上がった。

「……ここで何があったか気になるが、ここに長居するのは不味まずい。ひとまずかんするぞ」

『ハッ!』

 中年騎士の言葉に皆は返事をすると、その場からじんそくに立ち去って行った。

 それを見届けた俺は、一息つく。

「ふぅ……一時はどうしようかと思ったが、無事に解決してよかった……」

 なんだかかなりあわただしかったが、これが俺の初めての異世界の人との出会いだった。……会話できてないけどな。

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