――市井にて――
「勇者についてどう思うかですって? それは魔王を倒してくれたんだから、ありがたい人ですよ。今わたしたちが生きていられるのは勇者様のおかげなのですから」
「剣が使えて、攻撃魔法も回復魔法も使えたっていうじゃないですか。偉大な人ですよね。亡くなってしまったことが残念で仕方ありません」
「惜しい人を亡くしたと思います。学院でも優秀だったと聞いていますし、これから先も勇者様のような方が必要とされるはずでしたのに」
「やっぱり、魔王を倒したときの傷とか呪いとかが原因で亡くなってしまったんですかね? あんなに恐ろしい敵と戦ったんですから、結局は相打ちみたいになってしまったんじゃないかと」
「まあ凄い人だよな。魔王を倒しちまうんだから。でもよ、噂に聞くと、勇者はどこかの田舎の村出身なんだろう? 帰ってきたら、そいつが王になっちまうっていうのは少し怖いよな。国とか政治のこととか全然わからないんだろう?」
「なんで途中で死んでしまったんでしょうね? 魔王を倒したんだから、魔物になんか負けるはずがないのに。それがちょっと不思議ですよね?」
「俺はさ、剣聖が怪しいと思っているんだよ。何しろ伯爵様だしな。次期国王の座を狙って、やっちまったんじゃないのか? 勇者がいなければ、王女様と結婚するのは剣聖になるらしいじゃないか。おっと、この話は秘密にしてくれよ。何をされるかわかったもんじゃないからな」
「賢者様と聖女様が幼なじみって話を聞いたことがあるんですよ。賢者様は聖女様のことが好きだったんじゃないですかね? でも聖女様の心は勇者様に向かってしまって、それで賢者様が勇者様をつい殺めてしまったのでは?」
「やっぱり、聖女様を巡って争ったんじゃないでしょうか? 何しろあんなに美しい方ですからね。聖女様はきっと勇者様のことが好きだったと思うんですけど、それを妬んだ剣聖様と賢者様が結託して勇者様を亡き者にしたのでは? それを思うと、未だに独身を貫いている聖女様のことがあまりに不憫で仕方ありません」
「平民出の方だというじゃありませんか。やっぱり貴族の方々が、それを良く思わなかったんじゃないですかね? 帰ってきたら王様になって、平民の言う事を聞かなければならなくなるのでしょう? それを嫌って誰かに命じて、勇者様を殺してしまったんじゃないかと思うんですよ」