プロローグ



 私がこの世界に来るのは、これで二度目だ。

 一度目は自室のソファでテレビを見ていたはずが、気がつけば森の中に飛ばされていて。

 そして二度目の今、私は見知らぬ路地裏で一人の美しいに見つめられていた。

「お久しぶりです、サラ」

「……もしかしてルーク、なの?」

 はい、と深くうなずいた彼の表情は、今にも泣き出しそうなものへと変わっていく。

「どうして、ここに」

「この十五年、毎日のように貴女あなたと過ごしたこの街へ来ていましたから」

 当たり前のようにそう言うと、彼は金色のひとみやわらかく細め、いとおしそうにほほんだ。

 けれどその一方で、理解が追いついていない私はまどいをかくせずにいる。

 私が三年前に出会ったルークは、たった十一歳の小さな男の子だったからだ。目の前のえているであろう男性は、たけだって私よりも頭ひとつ分は高い。

 それでも、深い海の底のような青いかみはちみつ色の瞳だけは、あのころと変わっていない。


 この世のものとは思えないくらいに、目の前の彼はれいだった。

「……どうして」

 戸惑う私の口は、さきほどと同じような問いをつむいでしまう。

 すると美しいみをかべた彼は、王子様のようにその手を私に差し出し、答えたのだ。



「貴女に、会いたかったからです」と。

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