【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は5月16日に刊行された『地方勤務の聖騎士 ~王都勤務から農村に飛ばされたので畑を耕したり動物の世話をしながらのんびり仕事します~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
念願の聖騎士となったジャスティンは、同僚ハンスの策略により地方へと左遷させられてしまう。だが、彼を待っていたのは楽しい冒険とのどかな日常の日々。本作を読み、都会の喧騒とはまた違うゆるい田舎暮らしは、とても魅力的であると感じた。
何故ならば、彼の左遷されたカーティス村での生活が非常に充実しているのだ。昼は弟子の指導がてら魔物退治や野菜の栽培に汗を流し、夜は村人たちを囲んで大宴会。時には人に友好的なドラゴンと親交を深めあうなど、見てるこっちも楽しくなるイベントが目白押しだ。さらにジャスティンを慕う、後輩騎士のエリナまで彼を追いかけてきたのだから、言うことは何もない。人生の充実に過不足ない環境が整いすぎているため、本当に王都に戻る必要があるのか? と、ジャスティンと共に考えてしまう。日々忙しない社会を生きる身としては、彼への感情移入が実に楽しい。
その一方でライバルを蹴落とし、したり顔のハンスは陰謀が露見しつつあり、日に日に王都での立場を悪くしていた。その姿はスローライフを満喫しきっているジャスティンと、残酷なまでに人生模様が対比されていると感じる。ハンスの窮状がより田舎暮らしの幸福感を際立てている構成に、奇妙な快感すら覚えてしまった。

ジャスティンにとっては、夢の王都勤務に戻るかこのまま豊かな生活を続けるのか、究極の選択になるのだろう。だが私はこのままの田舎暮らしでもいいのではないかと思った。だって気のいい村人に囲まれながら、決して退屈はしない楽しいスローライフを送れるのだ。私もそんな充実したカーティス村暮らしをしてみたい!
文:明日香 譲
ざっくり言うとこんな作品
・不屈の努力で聖騎士になったのに、同僚の妬みで陥れられ地方に飛ばされる屈辱の開幕!
・絶対王都に復帰する! と決意して向かった田舎が思いのほか快適⁉ 領主や村人も温かく迎え入れてくれて、充実したスローライフを満喫してしまう!
・一方、王都では主人公の実直さを評価してくれていた上司や同僚が陰謀の解明に着手! 主人公を陥れた同僚が逆に追い込まれていくザマァな展開‼
主要キャラ紹介

ジャスティン・フォイル
孤児として育ちながら不屈の努力で聖騎士になる夢をかなえた男。濡れ衣を着せられ地方に左遷されるが、いつか王都に返り咲くことを目指している。

エリナ・ベローズ
ランドバル王国騎士団でジャスティンが率いていた隊の一員。副騎士団長の娘という立場に甘んじることなく努力を重ね、人当たりもいいことから騎士団内での人気も高い。
サリアス・ベローズ
ランドバル王国騎士団の副騎士団長を務める騎士で、エリナの父親。実直な性格であり、ジャスティンの左遷には裏があると睨んで独自に調査している。
ハンク・デラント
ジャスティンの同期であり、同じ道場で腕を磨いたライバル。名家の出身で、孤児でありながら自分と同じ聖騎士の称号を得たジャスティンを疎んでいる。
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地方勤務の聖騎士~王都勤務から農村に飛ばされたので畑を耕したり動物の世話をしながらのんびり仕事します~
著者: 鈴木竜一 イラスト: saraki
王都育ちの聖騎士ですが左遷先が快適なので満喫しようと思います!
幼い頃から聖騎士になることに憧れ、不断の努力で夢をかなえたジャスティン。だが彼を妬むライバル・ハンクによって横領の濡れ衣を着せられ、地方へと左遷させられてしまう。
のどかな農村で聖騎士としての仕事などあるのか?と不安になるものの、群れからはぐれた魔狼の討伐に始まり、領主の護衛、さらにドラゴンまでもが襲来したり、意外と忙しい日々に追われることに。さらにジャスティンを追って自ら地方勤務を志願した後輩女騎士・エリナとひとつ屋根の下で暮らすことになり――?
自分を温かく迎えてくれた領主や住民のために剣を振るい、鍛錬の合間に農作業の手伝い……「地方勤務も悪くないかも?」とジャスティンの気持ちが傾きかける一方、騎士団ではジャスティンの事件が何者かの陰謀ではないかと捜査が進められていたのだった。