【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はカドカワBOOKSから12月10日に刊行される『剣聖サラリーマン無双 ~幼馴染みがときどき人類を救う手伝いを頼んでくる~』(著者:一江左かさね/イラスト:へいろー)です。みなさんの感想も聞かせてください!
無双ものかな?と思って読み始めた途端、連れて行かれますよ。どこへ? 大幻獣災と呼ばれる大災害から12年後、幻獣――妖怪や怪異――の脅威に脅かされている架空日本へ!
この設定が本当にすごいんです。東日本幕府と西日本政府が東西に分かれて統べる日本を舞台に、現代社会をベースにした封建制度というまったく異なる時代性とシステムをしっかり重ね合わせた世界観。しかもそこに不可思議な幻獣等々、伝奇まで噛み合わせるというハイブリッドさは、設定の妙と言うよりなし!
そして同じくらいすごいのがキャラクター。
主人公の慎之介は幕府の内の一藩である尾張藩の平藩士で、言ってみれば役所の平職員。だからこそ面倒を押しつけられがちなのです。たとえばカスハラクレーマーに孤立無援で立ち向かわされたり、上の都合で畑違いの部署へ無理矢理異動させられかけたり。
それを真っ向から弾き返して逆転するのがヒーローというものですが、抗うどころか「終わった……」と絶望してしまうあたりの生々しさ――言ってみれば「主人公の“平”っぽさ」、この解像度が滅茶苦茶高いんです! 社会人なら覚えがありすぎて泣くやつですよ。って、これまで見たことありますか? 立場の弱さで魅せる主人公。
そんな主人公・慎之介ですが、隠していた「本来彼が備えているはずのない幻獣を倒せる士魂という力」により、幻獣との戦いに関わっていくこととなります。でも、それがまたやむにやまれない感じで、ブレないんですよねぇ。
これは他のキャラクターも同様で、本来の性格だけによらず、各々の立場や他キャラとの関係性というものをきちんと踏まえた、つまり行動理念があるのです。芯が通ったキャラたちの関係図、それだけで心が躍るじゃありませんか。
分厚く繊細な設定をさらりと読ませてくれる現代ファンタジー、はっきり言って最高です!
文:髙橋剛
ざっくり言うとこんな作品
1)現代+封建時代! それぞれの特徴が絶妙に噛み合わさって成し遂げられた、オリジナリティ溢れる世界観がすごい!
2)人物設定と描写がとにかくリアル! 中でも主人公・慎之介の平役人っぷり、思わず胸を詰まらせられるもの悲しさ……
3)表では凡庸、裏では無双。2つの顔を使い分ける慎之介だからこそ魅せられるカタルシス、これが超気持ちいい!
主要キャラ紹介
設楽慎之介(したら しんのすけ)
父の跡を継いで尾張藩に仕える28歳平藩士。実はある秘密が……
設楽陽茉莉(したら ひまり)
慎之介の妹。インフルエンサー女子高生業だが兄同様秘密がある。
五斗蒔咲月(ごとまき さつき)
設楽兄妹の幼なじみ。尾張藩に仕える侍で、特務四課を率いる課長。
成瀬静奈(なるせ しずな)
尾張藩筆頭家老の娘で、陽茉莉の友達? コミュ障だが頭脳明晰。
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剣聖サラリーマン無双~幼馴染みがときどき人類を救う手伝いを頼んでくる~
著者: 一江左かさね イラスト: へいろー
隠していたはずの「幻獣」を蹴散らす最強の力で――美人幼馴染と再会!?
異能の力を持つ「侍」が治安を守る日本。平凡なサラリーマンの慎之介は、ある日、目前で発生した「幻獣災害」により、隠していた無双の剣術の力を解放することに。
その場で幻獣対策を仕事にしていた年下の美人幼馴染み・咲月と久々に再会したことから、多額の報酬と引き換えに正体を隠しての助力と指南を頼まれ、定期的に頼りにされることに!?
さらに職場の権力者と縁ができたり、業務を邪魔するクレーマーに一泡吹かせたりと普段の仕事も好転していき……?