【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はカドカワBOOKSから11月09日に刊行される『俺、悪役騎士団長に転生する。』(著者:酒本 アズサ/イラスト:kodamazon)です。みなさんの感想も聞かせてください!
想像してみよう。傲岸不遜で悪逆非道なパワハラ上司がいきなり優しくなって、過労で倒れそうな部下に「お兄ちゃんが助けてあげよう」と言ったり、休憩時間に手造りのクッキーを配り始めたりした時のことを。
笑いたくなるけれど、笑った途端に冷酷さを取り戻して処分されるかもしれないから笑えない。ジュスタン団長の急変を目の当たりにした団員たちの内心を思うと、その時の第三騎士団にとてつもない衝撃が走っていたことが分かる。もっとも当人は心の底から「お兄ちゃん」になっていて、団員たちが戦々恐々としていることを感じて戸惑っているというギャップが面白い。自分が冷酷無慈悲だったことをしっかり覚えているだけに、恥ずかしさでのたうち回りたくなっただろう。
そこを抑えて親切になって優しくなって、団員たちやジュスタンの悪い噂を聞いている街の人たちを守り抜こうと決断し、行動に移したジュスタンの意思の強さに憧れる。周りが不思議がろうとも何か裏があるのかと勘ぐろうとも、自分がそうと信じる道を行く。その大切さを感じさせてくれる設定であり展開だ。
言い寄っては毛嫌いされていたディアーヌ嬢の信頼も勝ち取り、ドラゴンまでくっついて来てこの先どれだけの英雄になっていくのか気になるけれど、元がジュスタンを悪役として断罪する小説と同じ世界なだけに、何かの力が働いてジュスタンを悪役の座に止めようとするかもしれない。どう乗り越えていくのか見守りたい。
そうやってがんばった先で、元の世界で本当の弟たちと再会させてあげられたら嬉しいね。
文:タニグチリウイチ
ざっくり言うとこんな作品
1)冷酷無慈悲な騎士団長が七人の弟を世話する大学生の「お兄ちゃん」だった記憶を取り戻して急変し、団員たちに優しくし始めるギャップが可笑しい!
2)騎士団の食べ物が不味いからと自腹で香辛料を買い込み、美味しい料理や御菓子を作って振る舞うジュスタンのお兄ちゃんぶり!
3)嫌われていた令嬢の信頼を取り戻し、世界を救う聖女とも友達になり、ドラゴンまで従魔契約してしまう運命の激変ぶりに感動!
主要キャラ紹介
ジュスタン
悪逆非道で有名な騎士団長だったが大学生だった記憶に目覚める。
ディアーヌ
王太子の婚約者で、言い寄ってくるジュスタンを毛嫌いしていた。
エレノア
魔物を浄化する力を持った聖女でジュスタンのことを友達と慕う。
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俺、悪役騎士団長に転生する。
著者: 酒本 アズサ イラスト: kodamazon
処刑ルート直行の悪役騎士団長に転生したのは、最強の“お兄ちゃん”!?
傍若無人で傲岸不遜と悪名高い騎士団長ジュスタンは、自分が七人の弟を世話する大学生だったことを思い出す。
このまま悪行を重ねていたら処刑ルートまっしぐらだと気づいたジュスタンは自らの行いを正し、騎士団の悪ガキたちを良い子に躾け直すことに。前世でやんちゃな弟を育てあげてきた持ち前の「お兄ちゃん力」は、部下だけでなくお偉い様など様々な方面に作用し、イメージ改善どころか正義のヒーロー扱いされはじめ……!?