【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫・新文芸から10月30日に刊行される『百万回は死んだザコ』(著者・イラスト yononaka)です。みなさんの感想も聞かせてください!
正直に告白します。最初、読み始めたときは、また死に戻りものか……と思いました。死んでから強くてニューゲーム。もしくは、死ぬことを怖がらないからこその強さを駆使して、強大な敵に勝っていく展開。そのどちらかが繰り広げられるのだろう、と予感しながら読み進めていくと……あれ、違うぞ? 全く予期せぬ方向に話が進んでいくぞ? 最初の方はまたか? と思っていた「よっす」の一言まで意味がある文章だったの!?
本作の肝となるのは、賊の身体にリスポーンできる能力を持つザコが、冒険者になりたいという夢と正義感を持ってどの人生でも行動することにあります。なので、どの人生でもポジションこそザコではあるものの、人質を逃したり、国の問題を解決したりと大きなことをしていくのです。もちろんそれは捨て身の行為ではあるものの、いつしか彼が名乗っていたグラムという名は伝説にもなっていって……。
リスポーン前の行為が他者の人生に大きな影響を与えていったり、はたまた前世(もっと前ではあるけれど)に関わった人と共闘することになったり。冒頭に書いたように最初は「またか……」と辟易していた私も、ただのザコという言葉では表せない人生を歩んでいく主人公の姿にいつしか惚れ込んでいました。そして終盤の超展開(あのキャラクター、そうなるの!?)にはとても驚き、ここで終わるのか! という気持ちになる頃には既に作品にハマっていて。ファンタジーラノベを読み漁っている人にこそ読んでほしい、新規軸の作品です!
文:太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
1)名もなきザコの正義感によって、少しずつ世界が変わっていく大河ファンタジー
2)賊でありながら人助けのために命を張り続ける愚直さが熱い主人公像
3)ザコの活躍を中心に、キャラクターの関係が結ばれていくストーリー構成
主要キャラ紹介
ザコ(グラム)
死んでもすぐに別の賊の身体でリスポーンできる能力を持つ男。
アーシャ
リゼルカの政務を担う父のもとに生まれた、刻印聖堂の学舎で育った騎士。
リーゼ
リゼルカ伯爵太子。父である現伯爵が倒れたと聞き、国へ帰る際に野党団に捕えられる。
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百万回は死んだザコ
著者・イラスト: yononaka
「リスポーンするタイプのザコ、それがオレだぜ」
よっす。オレは賊だぜ。盗賊でも山賊でもない、それ未満のザコだ。だが、幸か不幸かオレには特別な能力が宿っている。なんとオレは何度死んでも別の賊の身体になってリスポーンできるのさ! そんな死んでは復活するだけのチンケなオレだが、実は憧れの冒険者になって人様のお役に立ちたいって夢がある。だからオレは時々冒険者の真似をして命がけの人助けをしてみるのさ。誰かの未来が守れるなら俺の命の五つや六つ安いもんだろう。これは百万回死んでも夢を追い続ける名も無きザコの英雄譚だ。
WEB版より全面改稿を施した"死に急ぎ"大河ファンタジー、待望の第1巻!