【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫から9月30日に刊行される『カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている』です。みなさんの感想も聞かせてください!
この作品にあるのは「愛」でしょう。頭から尻尾までみっちり詰まったTCG(トレーディングカードゲーム)愛。なんならあふれ出すぎている。
「ホビーアニメあるある」に「そういう設定あるある! 展開あるある!」となります。堂々と伏字にもせずに「遊戯王」って書いてあるしリスペクトがすごい。
カードゲームの勝敗で滅ぶ世界だとか、カードゲームのモンスターが実体化するとか、一回世界を救っていそうな前作主人公ポジションになぜかやけに存在感あるとか、やけに特徴的な髪形のキャラクターとかとか。
逆に「ないない」もすごい。一応、異世界転生ものなんだけど、チート的なレベルアップとか、前世の知識でものづくりとか、シズル感溢れる料理描写とか、もふもふとか癒しとか「異世界転生あるある」が全くない。カードゲームが中心の日常のみに特化しているのは、ちょっと潔すぎません?
でもそういったホビーアニメ「あるある」な設定(もしくは異世界転生「ないない」設定)はただの前提なんですよね。ひとしきり「あるある」って楽しんだら、デッキ四十枚にすべきか問題とか、ちょっとした値段のカードを買うか買わないかでうんうん悩んだりとか、美少女カード発売日に右往左往したりとか、なによりバトル前のわくわく感やTCG「あるある」のほうがじわってきて、なんだか仲間内でダベりながら遊んでいるような気分にさせられます。
これは絶対、TCG愛なくして書けるわけがない! すばらしい愛の籠もった作品です!!
文:勝木弘喜
ざっくり言うとこんな作品
1)カードゲーム好きが思わずニヤリとする「あるある」が満載!
2)日常ネタとカードバトルのバランスが良い
3)カードの精霊が実在化!カードに収まりきらない圧倒的バトル
主要キャラ紹介
店長(棚札ミツル)
カードゲームがすべての世界に転生した青年。趣味のTCGショップ「デュエリスト」を経営している。なぜか周囲にはかつて大きな事件を解決した”前作主人公”だと思われている。
エレア(エクレルール)
カードショップ「デュエリスト」の店員として働く少女だが、人間ではなくモンスター。店長との戦いに敗れ、偵察兵の身分を剥奪されたため店に雇われることに。
ヤト(夜刀神)
闇札機関に所属するエージェントで、秘密裏にイグニッションファイトに関する事件を解決に導いている。
ダイア(逢田トウマ)
現イグニッションファイト日本チャンピオンで店長のライバル。変装しているが周囲に正体はバレバレ。
『カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている』
著者:暁刀魚 イラスト:tef
カードゲーム至上主義世界の前作主人公登場!(違います)
カードゲームで世界が滅ぶのはカードゲームの世界だと定番だ。
そんな世界に転生した俺、棚札ミツルは念願かなってカードショップの店長になることができた。
カードバトルをする人たちが楽しそうなこの世界で、それを近くで眺めていたかったのだ。しかし、そんな俺は端から見ると大きな事件を解決し、先達として子どもたちを見守る前作主人公のように見えるらしい。実際は、そんな大きな事件一度も解決したことがないのに。
これはカードゲームが何よりも優先される世界でカードショップの店長になった結果、周りから過去に大きな事件を解決したのだろうと思われている、特にそんなことはない転生者の物語。