【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は8月30日に刊行される『全滅エンドを死に物狂いで回避した。パーティが病んだ。』です。みなさんの感想も聞かせてください!
3人の美少女たちから一生面倒を見ると言われたら嬉しい? うんと答えた人はちょっと待とう。いくら愛でも重すぎて濃すぎると結構にヤバいことになるから。
全員が惨殺されて当然だったボスモンスターを、冒険者のウォルカが足の一本と目玉のひとつを失いながら倒したことで、パーティは全員生き延びることができた。あとは再起をめざすウォルカと周りで支える少女たちのさわやかリハビリファンタジーでも始まるかというとまるで逆。のじゃロリ師匠のリゼルは無茶なクエストを受けた責任を感じて泣きわめくし、美少女剣士のユリティアは身の回りの世話をぜんぶするからといってウォルカにまとわりつく。ボクっ娘重戦士のアトリもウォルカに及ぶ危険をすべて撃退する気満々だ。
例えるなら愛の牢獄に一生繋がれたといったところ。ウォルカがリハビリを頑張って最強を取り戻す大逆転劇を演じたくても、3人の重くて濃い愛情が未来志向を退ける。聖女や聖騎士まで現れ濃い愛情でがんじがらめにしようとするから沼はさらに深くなる。
こうなったらあきらめてヒモ生活に浸れば良いんじゃないのと思えるけれど、腐れ外道ダークファンタジー漫画の中という世界の設定が、いつまたメンバーを非道な展開に引きずり込まないとも限らない。巧妙な設定の上で先が読めない中、愛の沼からウォルカはどうやって抜け出すのか、さらに病んだ愛情が向けられるとしたら誰からのどのようなものになるのかと想像してみたくなる。闇色に病んだヤミヤミファンタジー!
文:タニグチリウイチ
ざっくり言うとこんな作品
1)ヤンデレのような激重感情をぶつけるヒロインの可愛さと
彼女らの重すぎる気持ちに胃が痛くなる主人公のすれ違いっぷりが面白い
2)主人公は片目片足を犠牲にヒロイン3人を救うが、代償の大きさにヒロインズが「曇っていく」様子・感情の変化に注目
3)主人公を評価する強者たちも「曇っていく」
主要キャラ紹介
ウォルカ
日本から転生した冒険者。Aランクパーティ〈銀灰の旅路(シルバリーグレイ)〉の剣士。アニメやゲームの抜刀キャラに憧れており、転生後に抜刀術を会得した。
リゼルアルテ
〈銀灰の旅路〉の魔法使い。一見幼女だが、ウォルカより年上で魔法の師匠でもある。『偉大で尊大な大魔法使い』を自称するが、本当は繊細な性格。
ユリティア
〈銀灰の旅路〉の天才剣士。ウォルカの抜刀術に惚れ込んで弟子入りを志願し、パーティに合流した。パーティ最年少でありながら、一番のしっかり者。
アトリ
〈銀灰の旅路〉の重戦士。一騎当千と讃えられる戦闘民族の出身で近接戦はパーティ最強。寡黙でクールだが、仲間を守ることに矜持を抱いている。
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全滅エンドを死に物狂いで回避した。パーティが病んだ。
著: 雨糸雀 画: kodamazon
自分を犠牲に仲間たちを救ったら――みんなの感情(おもい)が重すぎる!?
「――いやああああッ!? ウォルカ、し、死んじゃだめえええええッ!!」
日本から転生した冒険者ウォルカ。ダンジョン探索中に突如強大な魔物に襲われた彼は、仲間を庇って瀕死の傷を負ってしまう。その瞬間ようやく気づいた――ここが前世で読んだダークファンタジー漫画の世界で、自分が仲間もろとも全滅するモブキャラだったのだと。
バッドエンドを強く嫌うウォルカは、仲間のために死に物狂いで戦い奇跡的に魔物を撃破。片目片足を失いこそしたものの、パーティ全滅の運命を覆せたことに安堵していた。ところが、仲間の少女たちの様子がなんだかおかしくなってしまって――
「今度こそ絶対に守るからっ!! だからお願い、見捨てないでぇ……!!」
「わたし、ずーっと傍にいますから。――いいですよね、せんぱい?」
「キミのために死のうって……そう決めたの」
ハッピーエンド至上主義な転生者と、彼に激重感情を抱く少女たちの【曇らせ】異世界譚!
【書籍版限定の書き下ろしエピソード2本収録】
・書き下ろしエピソード『ウォルカが死の淵から目を覚ましたときの話』
・書き下ろしエピソード『ウォルカが聖女全員から包囲網を敷かれる話』