【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから8月23日に刊行される『ヤクモとキリヱ』です。みなさんの感想も聞かせてください!
ブラックバスとか、ブルーギルとか。日本の川や池などには、もうすっかり外来種の生物が定着してしまっていますが、一般人には見えない「裏」の世界でも、実はかなり定着してしまっているようなのです……。外来「呪」が。
海外からやって来た凶悪な化物、外来呪。これに対抗するための組織「神代寮」にスカウトされた新人である厄雲は、もうとにかく、いろいろな意味で規格外でした。操る技も、個性も際だったメンバー揃いのなか、厄雲は単純に殴るだけ。そのうえ、彼には化物に対する恐怖なんてものも、一切ありません。
それもそのはず、彼は幼い頃からキリヱという、最恐の怨霊に取り憑かれているのですから。そのせいで、彼はこれまで、まともな生活とは無縁だったのですが、その割にキリヱとの関係は、悪くない様子で、厄雲の奇妙な器の大きさを感じます。
ともかく、そんな彼が難しい理屈も抜きで、邪悪な外来呪を殴り倒すのは、とても痛快で爽快。それはもう、努力の末に技を会得し、事件にも真剣に取り組んでいる花降たちがちょっと、かわいそうと思えてくるほどに(笑)。読み進めていくうち、行動の読めない厄雲と、真面目で実直な花降とのギャップも楽しくなってきます。
次々と現れる世界各国からの外来呪や、意外とかわいいところもあるキリヱにまつわる謎にも興味は尽きず、怖いながらも、つい先が気になってしまいます。オカルト関係が好きで、爽快感を求めている方には、まさにうってつけな作品です。
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)日本にやって来て、在来の妖怪や人間を襲う凶悪な「外来呪」を、圧倒的な力で次々と殴り倒していく、厄雲の破天荒さと爽快感
2)外来呪が関与する、不気味な事件に立ち向かう、神代寮の個性的なメンバーたちと、彼らが解き明かしていく事件の衝撃的な結末
3)厄雲に取り憑く謎多き怨霊・キリヱや、世界各国に起源をもつ、様々な外来呪の生態情報に、恐ろしいながらも思わず興味が深まる
主要キャラ紹介
▼山田厄雲(やまだ やくも)
強大な力を持つ怨霊・キリヱに取り憑かれている少年。顔は仮面で覆われ、食事にも困るような生活を送っていたが、化物を軽々と倒す力をみこまれ、神代寮にスカウトされた
▼神坐火花降(かんざび かふる)
代々魔を祓ってきた、古い血筋に生まれた少女。神代寮の新人異師として臨んだ事件の途中、厄雲と出会う。彼の言動には戸惑うことも多いが、その強さは彼女も認めている
▼化嶋霊子(ばけしま れいこ)
圧倒的な霊力を誇り、神代寮の最終兵器と呼ばれている少女。先輩として花降とともに任務にあたっている際も、常にクールな姿勢を崩さないが、彼女にはある秘密が……?
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ヤクモとキリヱ
著者: てにをは イラスト: りいちゅ クリーチャーデザイン: まぼ
住所:事故物件(月200円)オカルト退治で飯食ってます。
斎川唯は悩んでいた。
理想のアイドルになるには何かが足りない。
ライバルたちよりも努力をしてきた自信もある。
でも、なぜか満たされない。
そこで何か新しいことに挑戦しようと思い立つ。
これまで体験していないものといえば過去に行くことをやめてしまった学校生活くらいで――。
「わたし、学校に行きます!」
周囲の心配の声をおさえて学校に通い出したものの、トップアイドルの登校は当然話題になる。
すると偽者が現れたり、学園祭のステージに出ることになったりと、早速ハプニングが続くが……。
「学園祭を盛り上げて! 斎川唯の存在を、全世界に知らしめてあげましょう!」