【レビュー】切なくて、清々しくて、悲しくて、嬉しくて…第30回電撃小説大賞《銀賞》受賞作は魂が震える音の物語!

電撃文庫『星が果てても君は鳴れ』

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は8月9日に刊行される『星が果てても君は鳴れ』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 感情を振り回されるような、揺さぶられるような作品でした。

 主人公の月城が「ノイズ」という、この作品のキーワードとなっている概念により、死んでしまおうとする……そんなところから物語は始まります。

 しばしば目にするワードとなった”生きづらさ”がテーマになっているのかな、と解釈して読み進めますが、共感できたりできなかったり……序盤はダメな主人公だなぁと思うシーンもありました。

 未幸と月城の同棲が始まって、「ノイズ」への解像度が上がってくると、彼の”生きづらさ”が伝わってきて窮屈な気持ちになりました。

 月城が自死しようとする理由が理解できるようになるのですが、イジメで引きこもりになった未幸の妹・瑠姫那が登場して、歌声生成ソフトを使って懸命に頑張っている姿に感動していると、月城自身はまた自死したくなるようになる。登場人物の感情が同じところを行ったり来たりするところも、”生きづらさ”を抱えているキャラクターの描写としては妙にリアルなのかな、と思わせられたり。

 そうやって何度も月城の衝動に振り回されるんですが、生きることに対して懸命に向かい合う月城たちの姿を追っていくうちに、ふと気づくと最初に感じていた「ダメな主人公だなぁ」のような印象はすっかり消え去っていました。

 後半に入ると物語がきれいにまとまっていきます。雑音がきれいな和音になって、窮屈だったものが開放されて、切なくて清々しくて悲しくて嬉しくて本当にいろいろな感情が刺激されます。

 物語にのめり込んで、登場人物の行動や感情が迫ってきていたから、読み手としての感情を振り回されていたんですね。

 「生きること」に対して強いメッセージ性を感じる、そんな作品でした!

文:勝木弘喜

ざっくり言うとこんな作品

・二転三転と、色を変える物語。主人公がとる選択、ヒロインの残した「悪戯」を知るとき、思わず涙がこぼれます。

・生きることへのひたすらに前向きなメッセージ。その熱量に圧倒されること間違いなし!

主要キャラ紹介

星宮 未幸(ほしみや みゆき)
18歳。数か月前に電撃引退した、国民的女優。素顔は勝気で、悪戯好き。
未来視の力を持つ。

星宮未幸(ほしみや・みゆき)


月城 一輝(つきしろ いっき)
17歳。音ゲーのプロゲーマーを目指していたが、交通事故により夢と、母を喪う。
シニカルで厭世的な性格。

月城一輝(つきしろ・いっき)


星宮 瑠姫那(ほしみや るきな)
14歳。未幸の妹。
虐めから引きこもり、歌声生成ソフト『ドロシー』で作曲する、『ドロシスト』として活動している。

星宮瑠姫那(ほしみや・るきな)

関連書籍
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    星が果てても君は鳴れ

    著者: 長山 久竜   イラスト: 咲の字。

    もし永遠の音があるとしたら、それは君の形をしている。

    第30回電撃小説大賞《銀賞》受賞作。
    魂が震える『音』の物語。

    「見つけてあげるわよ。正しい音色の、奏で方」
     他者の影が纏うノイズに侵され、命を絶とうとした俺の前に、突然そいつは現れた。元国民的女優の、星宮未幸。素顔は勝気で、時々猫かぶりで……そして、未来が視える少女。
     俺の自殺を止めるため始められた、奇妙な同棲生活。過去の傷を優しく上書きするような日々には、小気味良い音色が鳴り始めーー
     だけど、俺は何も知らなかったんだ。あいつが走り続けた意味も、その足を止めてしまった理由も、未来に隠したたった一つの悪戯でさえも。
     これは、過去と未来を乗り越える別れの青春譚で、そして、悠久の時を超えても響き続ける愛の物語。

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