序章 ある少年の絶望
――そうして、俺はたった一人、この無音の暗闇に取り残された。
血塗れの胴体と、ガラクタになった手足。
少しでも身体を捻れば
もはや死にゆく他に道がない肉体。
この真っ暗な遺跡の中、誰に看取られることもなく、俺は短い生涯を終えるのだろう。
後悔はない。やりきったという達成感すらある。
だけど、
「……なんだ。頑丈に出来てんな、俺」
まだ、ほんの少しだけ動けるようだ。
ならば、死の運命とやらに抵抗してみようか。
どうせ意味のない抵抗。失敗に終わっても何の悔いも残らない。
言ってしまえば、ただの暇潰し。
意識があり、身体が動く。そして何より、もう一度見たい顔がある。
それなら、最期まで足掻いてみるのが人間らしいのでは、騎士らしいのではないかと、そう思っただけだ。
「……ま、どこまで行けるのか分からないけど」
呟き、動き出す。
死にゆく身体を引きずり、小指の爪ほどしかない生存の可能性を目指して。
――振り返ってみると。
これは俺の人生で最大の誤りだった。
俺はこの時、絶対に死んでおくべきだったのだ。
そうしていれば――地獄はここで終わったのに。