三章 『二振りの巨剣』その1

 ギルドを後にした俺達は、これからの事について話し合っていた。

「さて、まずは換金所で碧鋭殻竜ヴエルドラの素材を買い取ってもらいましょう。それから武具屋に行ってムサシさんが使う武器と防具を見繕いましょうか」

「そうだな。全部売っぱらうとどのくらいになるんだろうなあ」

「あ、それなんですけど……換金するのは一部の素材だけにしませんか?」

「そりゃまたどうして?」

「ドラゴンの素材は良質な武具の材料になるんです。しかも今回持っているのは碧鋭殻竜ヴエルドラの素材なので……」

「なるほど、把握した」

 それなら、外殻の類は売らない方がいいだろう。どう考えても防具とかの材料として使えそうだしな。となれば、売るのはそれ以外の部位という事になるが……。

「取り敢えず、竜核だけ売ってみるか? 素材の価値についてはあまりよく知らねえけど、多分高いんだろ?」

「そうですね。竜核はドラゴンの素材の中で一番高値で取引される部分ですから」

 やはりか。しかしあんなデカくて重いモノ何に使うんだろうな?

 そんな俺の心の内を読み取ったのか、リーリエは口を開く。

「竜核は【万能結晶】とも呼ばれる素材で、その利用価値はとても高いんです。このマジックポーチも竜核を特殊な方法と魔法で加工して作られた物なんですよ?」

「マジで!? あの石ころがコレになんの!?」

 なんだそりゃ、それが本当ならとんでもない反則素材だな。【万能】って表現もあながち間違いじゃないのかもしれない、不可能を可能にするって意味で。

「竜核を石ころなんて呼ぶのはムサシさんだけですね……とにかく、それだけ強力な素材なので流通はギルドによって厳しく制限されています。ギルドを通さず不用意に個人で売買を行えば厳しく処罰されます」

「そりゃそうだな。んじゃ取り敢えずは竜核だけ売っぱらうか」


 ◇◆


 ――結論から言おう。竜核ヤバい、めっちゃ高値で売れた。具体的には三百万ゲルト。

 リーリエから話を聞いた限りだと、イメージ的には円換算すると日本の中堅サラリーマンの年収くらいだと思う。

 そんな大金が、たった一体のドラゴンの一部位から生まれた訳だ。俺は笑うくらい驚いたし、この世界の金事情を知っていて尚且つ初めてドラゴンの貴重部位を換金した事になるリーリエは更に驚いていた。

 でもって、竜核を売った俺達はその足で武具屋を目指していた。せっかく軍資金が手に入ったんだ、早めに装備を整えるに越した事はない。

 武具屋に向かう途中でマジックポーチと財布、それとアイテムポーチと呼ばれるものも買った。三つで三十万ゲルトだった。

 竜核の換金額三百万ゲルトは俺の提案で山分けにして、手に入れた百五十万の内五十万は貯金に回した。貯金は大事ダヨ~。

 ここから購入した道具分を差し引いて今の手持ちは七十万ゲルトだ。大分使ったなオイ。

「いやー予想はしてたけどマジックポーチ高いねぇ」

「スレイヤーの必需品ですからね。使用範囲の広さから考えても妥当な値段ですよ」

「ごもっとも。しかしマジックポーチとは別にアイテムポーチってのも必要なんだな」

 そう言って俺は腰にあるもう一つのポーチを撫でる。こちらはマジックポーチと違ってドラゴンの素材等といった大型の物を入れるわけではなく、出先で使うアイテム……水や携帯食料、回復液ポーシヨンの類を入れるための物らしい。

 このポーチもある程度伸縮は利くらしいが、マジックポーチのような反則的な収納性能は無いので、元の大きさがマジックポーチの三倍ほどある。

「マジックポーチはあくまで大きくて重量のある素材を運ぶために用いる物ですから……アイテムと素材をごっちゃにしてマジックポーチに入れると大変な事になりますよ?」

「肝に銘じておきます……そう言えば、今リーリエが担いでる――魔導杖ワンド、だっけ? それって今から行く武具店で買った物だったりすんの?」

「いえ、これは魔導士ウイザードの武具を専門としている別のお店で作って貰った物です。魔導杖ワンドは近接武器とは構造も用途も大きく違うので、お店自体も分かれているんです」

「はえー。て事は既製品じゃなくて特注品か?」

「そうですね。私の場合、使える魔法との兼ね合いで一般的な万能型の魔導杖ワンドではどうも合わなかったので、光と闇に特化した物を作って貰ったんです。お値段は張りましたけど、武器の相性はスレイヤーにとって大事な事ですから」

「ああ、確かに大事だな。自分の命に直結するもの」

「はい。さて、そろそろ着く筈なんですが……場所と名前は知ってるんですけど、実際に入った事は無いお店なんですよね」

「そらそうだろうな、魔導士ウイザードとは畑が違う連中のための店なんだろうし……お、ここじゃねぇか?」

 俺達の前に現れたのは、「いかにも」という感じの建物だった。壁のガラスの向こうには剣、槍、フルプレートの鎧等が展示してあり、入り口の上には《武具屋・竜の尾ドラゴンテイル》と書かれた巨大な看板が見えた。その脇には「ギルド公認店」の文字もある。

 店内へと入ると、所狭しと武具が展示してあった。奥にあるカウンターには立派な髭を蓄えた一人の老人が椅子に腰をかけていたが、俺達に気付くとゆっくりこちらへと視線を向ける。

 顔こそ老いを感じさせるが、その身体は服の上からでも分かるほどガッシリとしていた。身体的特徴を見る限り、恐らくドワーフだろう。

「いらっしゃい」

「どうも。武具を見繕いたいんですけど、店内少し見て回ってもいいですかね?」

「ああ、気が済むまで見てくれ」

 そう言った老人は俺の姿を見ても全く動じていない。年の功という奴だろうか。どこに行ってもこういう反応だったら嬉しいんだけどなぁ。

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