告白予行練習 HoneyWorks・香坂茉里
『文化祭前の二人』
文化祭の前日は授業も午前中で終わり、午後からはそれぞれクラス企画や
いつもは仕事があるため、放課後に残って手伝うことができなかった
中庭の
教室では、女子たちが
二人が着る
それはいいのだが――。
メジャーを手に追いかけてきた女子たちの
ようやく彼女たちを振り切って、この中庭まで
今、作っているのは、『ホラー・ハウス』の壁だ。
三十分ほどたつが、一言もしゃべらない。
少し離れたところでは、クラスの男子たちがワイワイ言いながら段ボールを組み立てている。どうやら、それは『
(………………眠い…………)
天気がよく、十一月にしては
いつもなら教室の机に
赤いペンキの缶をとり、その中にベチャッと片手を突っ込んだ。
愛蔵が
少し
「おいっ!」
「なに?」
ふりむくと、愛蔵がキッと
「なんで、人が
「だって
「そーだけど! 他のところにつけろよ」
「そっちこそ、他のところ塗れば?」
愛蔵が「はぁ!?」と、
「俺は最初からここを塗るって決めてたんだよ! そっちがどっかいけ!」
「やだ」
プイッとそっぽをむいてから、愛蔵が塗りかけていたレンガの上に、
刷毛を
「あーそうかよ……そういうことすんなら……こっちだって!」
愛蔵は
「は!? なにしてくれてんの?」
「先にやったのは、そっちだろ~」
仕返しだとばかりに他の手形も塗りつぶそうとする愛蔵に、勇次郎は
赤いペンキの缶を引き寄せ、ベチャッと両手をつけてからベタベタと手形を押す。
「あっ、なにやってんだ! やめろ、バカ!」
あわてたように、愛蔵がジャージの
「それ
「一人しかいねーだろ!」
「あっ、よろめいた」
わざとらしく言いながら、ドンッと愛蔵の
「お前さぁ……ほんっと、いい性格してるよな……」
「そっちほどじゃないけど?」
お
この相方との日常は、まあまあこんなものだ。
これでも仕事の時は一応、息がピッタリと合ったコンビということになっている。
スタッフや、仕事関係の人に『仲いいなぁ』とよく言われることを思い出して、勇次郎は『どこが?』と心の中で
ユニットを結成して一年以上
顔を合わせればケンカばかり。これでも、お互いよくもっているほうだろう。
「もぉぉぉ――――
勢いよく刷毛を地面にたたきつけた愛蔵が、両手でジャージにつかみかかってくる。
「そっちこそ、
思いっきり手で顔を押しのけると、愛蔵が「うあっ!」と声をあげた。
「今、ペンキ、顔につけただろ!!」
見れば、愛蔵の
勇次郎は思わず、「プッ」とふき出して笑った。
「今日の
「そっちにもつけてやる!! 顔出せ!」
ペンキの缶に手を突っ込んだ愛蔵が、その手を押しつけようとする。
勇次郎は「絶対やだし!」と、
離れたところにいた男子たちが、「なにやってんだー」と笑っている。
「「ふざけんな――――っ!!」」
取っ組み合いをしていると、「わぁぁ!」とあわてふためいた女子の声が耳に入る。
「またケンカ~~~っ!!」
振り向いた二人の顔が、「え?」と
イヤな予感がしていると、
木材につまずいた彼女が、「うきゃ――っ!」と声をあげながらペンキの缶を放り投げた。
危ないっと二人とも
その
地面に倒れたひよりが、「いたたた……っ!」と顔をしかめて起き上がってくる。
それぞれ赤と緑のペンキをかぶった二人は、ぼう然として顔を見合わせた。
頭からポタポタと色のついた
缶がゆっくりと
「あ、あ、あの…………えーと…………」
顔を強ばらせたひよりが、おどおどしながら口を開いた。
「うちの…………せい……かな?」
「「涼海さーん」」
二人が呼ぶと、ひよりは青くなってギクシャクした動きでクルッと後ろを向く。
彼女は二人の事務所でマネージャー見習いの秘密のアルバイトをしているが、学校内ではただのクラスメイトということになっている。
「う、うち……タオルをとってきます…………」
逃げようとするひよりの肩をつかむと、勇次郎と愛蔵はニッコリと
「「ちょーっと、話があるんだけど??」」
***
学校を終えて事務所にやってきた二人を見た
「あ、あ、あ、あんたたち――――っ、な、なんで急に……そんな…………トマトとピーマンみたいな髪になってんの――っ!!」
そう
顔のペンキと手のペンキはなんとか落とせたものの、髪はすっかり
「だいたい、あんたたちのイメージカラーと違うじゃないの! 今日はテレビの収録があるってのに、どうすんの、そのピザトーストみたいな髪!!!」
両手を腰にあてたマネージャーが、鬼の
「すみません……」
「ごめんなさい……」
二人ともしゅんっとして、口ごもりながら謝った。
それから、ドアが少しだけ開いている
「う、うち…………青と黄色のペンキ、買ってきま――――す!!」
そう言いながら、彼女はあたふたとエレベーターのほうに走っていく。
「「そうじゃないだろ――っ!!」」
二人は思わず、そう声をそろえた。
面倒な相手が一人から、二人になって早数ヶ月。
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著者:
監修:バーチャルジャニーズプロジェクト
【あらすじ】
田舎から上京したばかりの高校1年生、涼海ひより。
たまたま同じクラスになった愛蔵と勇次郎が、実は大人気アイドルであることを知り……?
LIP×LIPの大人気楽曲「ノンファンタジー」がついに待望の小説化!
◆
角川ビーンズ文庫
『告白予行練習 ヒロイン育成計画』
原案:HoneyWorks
著者:
監修:バーチャルジャニーズプロジェクト
【あらすじ】
LIP×LIPのマネージャー見習いとして日々頑張っているひより。
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