序章 学校の先生になりたくなるお話
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つくづく、学校という場所は恐ろしい所だ。
閉鎖された敷地、空間に数百人もの人間を密集させ、自由な行動を許さずに隔離する。
こんな言い方をするとまるで牢獄、刑務所を連想させるが、そんな生易しい場所じゃない。
他人の金を奪う窃盗恐喝。
他人の身体を傷つける傷害。
他人の人格を否定する名誉毀損。
他人に自殺を強要する自殺教唆。
それから集団でのリンチや脅迫、尊厳を無視した行為の数々など、枚挙に遑の無い犯罪行為を、全て纏めてこう呼ぶ。
イジメ。
常識的に考えて、逮捕した後に刑務所に収監させて、刑事罰に処すべき行為を、何もかも「イジメ」という単語でオブラートに包み、無かった事にする。
親戚の貯金を切り崩しながら、数百万から数千万の金をカツアゲで奪われようが、骨折するまで殴る蹴るの暴行を受けようが、自殺するまで罵詈雑言を受けようが、被害者となった学生が助けられたり守られたりする事は決してない。
加害者となった学生達は、決して罪に問われる事はなく、クラスメイトが破産しようが死亡しようが、連日笑顔で登校し、教室で楽しく過ごしているのだ。
こんな閉鎖空間が、学校以外の何処にあるだろうか。
自殺教唆などというまどろっこしい行為ではなく、直接的に相手を死に至らしめる殺人行為を行おうが、学生の顔と名前が世間に晒されるような事はなく、警察やマスコミを筆頭にする「大人」と呼ばれる存在は、加害者とその家族のプライバシーとやらを、己の全てを懸けて死守するのだ。
教師には、教育委員会からの評価がある。
評価が低い教師は、学校からの異動や、場合によっては退職を強いられる事がある。
そして、教師は自分が担当しているクラス内でイジメが発覚した場合、それを報告するという義務が生じている。
しかし、クラス内でのイジメを報告した教師の評価は最低にまで下がる。
学生同士によるイジメ行為を把握し、それに対処する為に、上司に当たる教頭、校長等に報告した段階で、評価が下がるのだ。
逆に、クラス内でイジメ行為があった事が発覚した際に、イジメ行為を全く把握していなかったと報告すれば、評価はさほど下がらない。
自分が担当するクラス内で起きたイジメを報告する教師の評価は下がり、イジメを把握する事すら出来ていなかった教師の評価は下がらない。
つまり、何が起きようが知らなかったと報告するだけで、教師は助かる。
被害者は泣き続ける。
加害者は笑い続ける。
第三者は黙り続ける。
そこに法治国家や先進国の面影は存在しない。
学校とはつまり、無法地帯なのだ。
大袈裟な話ではない。
学生の自殺率が最も上がるのが夏休み明けなのだから。
文字通り、安全地帯から危険地帯に舞い戻る時期が、夏休み明けなのだ。
そんな無法地帯に、イジメによって自殺、あるいは他殺されるまで所属する必要は無い。
逃げてはいけない。
逃げた先には何もない。
そんな言葉が連想されるが、逃げてもいいのだ。
転校すればいいし、不登校になればいい。
死ぬくらいなら、逃げればいいのだ。
しかし、学校という無法地帯、危険地帯から逃げられない存在がいる。
平気で他人の金と命を奪っておきながら、罪に問われる事の無い連中が大挙している異常な空間に、定年退職するまで逃げられない者がいる。
逃げ出す事、それ即ち、職を失い、路頭に迷い、最悪の場合死ぬ事になる存在がいる。
それ即ち、教師である。