プロローグ


 ――俺以外の誰かが、どうして俺として生きているのだろうか?

 わからないことだらけだ。この世界は、わからないことだらけだ。他人のことはもちろん、自分のことですらも……。

 わからない。

 ――いったい君はどこへ行ってしまったのだろうか?

 わからない。

 ――今俺の前にいる、君の姿をした、君以外の誰かは、いったい何者なのだろうか?

 わからない。隣に立つ誰かに尋ねてもわからない。けど、答えを知りたくて、シオン・ターコイズは……いや、シオンはずっと考える。

 でも、答えなんてわからなくて……。

 それでも唯一、わかったことがある。

 それは、この世界は何かがおかしいということ。

 何かが異常だ。この世界は何かがおかしい。

 けど、誰も違和感を覚えていない。自分以外の誰も、今はまだ……。

 だから、気づかないのだ。

 シオン以外の誰もが、気づいてくれないのだ。

 だけど……。

 それでも前に進むのだ。

 かつての君ならきっとそうする。そう思ったから。

 だから、これは、本物が偽物となり、偽物が本物となり……。

 それでも大切な何かを探して守る。

 そんな物語だ。

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