第一章 神々の子 1
僕には四人の父親と母親がいる。
彼らは捨て子だった僕を拾い、育ててくれた恩人だ。
十数年前、まだ赤子だった僕は神々が住むという山に捨てられた。
理由は分からない。
その年は
飢饉によって子供に食料を回せなくなったのか、戦争によって
僕を見つけたのは万能の神レウスである。
彼は農民の姿に化け、
ほろ
あまりにも僕の泣き声が自然だったので、あやうくそのまま見送ってしまいそうだった、とはのちのレウスの言葉だった。
ただ、僕はそのまま川下に流され、
レウスが救ってくれたからだ。
レウスは
そのまま神々が住まう山、テーブル・マウンテンに行くと、僕を仲間に見せた。
「なんでい、人間の赤子か。俺はてっきり酒の
無精ひげを
「まったく、男はこれだから。見てみなさい、この
ミリアは僕を
それを
彼はしわがれた声をもらす。
「……子供は好かん。
僕の顔を
三者三様の態度であるが、万能の神であるレウスは知っていた。彼らが赤子である僕を気に入ったことを。
事実、レウスがこの赤子を育てることを宣言すると、彼らは難色を示したものの、反対はしなかった。
それどころか、なにかと理由を付けては赤子である僕のもとにやってくるようになった。
剣神ローニンは日課である
「
治癒の女神ミリアは大地との語らいを終えると、僕のもとにやってきて僕を抱く。
「なんと可愛らしい赤ちゃんでしょう。ああ、母性本能がうずくわ」
彼女はそう言うと胸をポロンと出し、乳を
「この子は世界一優しい子、いつか最高の治癒師にしましょう」
ミリアが僕をゆりかごに戻すと、魔術の神ヴァンダルがやってくる。
その顔を見てきゃっきゃと笑う僕。
老人の
「……存外、ユーモアの分かる赤子だ」
老人はそうつぶやくと、決心する。
「よかろう。この
ヴァンダルは僕を見つめるとつぶやく。
「この子はやがて最強の
こうして三人の神々に気に入られた僕。
僕を拾ってくれた万能の神を
彼らが僕の父親となり、母親となり、
我が儘で自分勝手な人たちだが、彼らは厳しくも優しい師父、師母となる。
そして彼らが僕に名前もくれるのだが、なにかにつけて
争うことなく、一回の話し合いで僕の名前を決めてくれたのだ。
こうして僕は命拾いをし、名前を得た。
神々が僕に与えてくれたのは、
「ウィル」
という名前だった。
しかし、自分がウィルという名であると知覚できるようになるまではもう少し時間が
なにせ僕はまだ生まれたばかりの赤子なのだ。
特技と言えば泣くことと
他にできることはなにもなかった。